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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第169号

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ISASメールマガジン   第169号       【 発行日− 07.12.11 】
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★こんにちは、山本です。

 先日、本館ロビーにあるディスプレイの位置がいつもと違うことに気付きました。『かぐや』の撮影した月面のハイビジョン映像を上映するためでした。しばらく立ち止まって見入ってしまいました。

 今週は、宇宙科学共通基礎研究系の浅田圭一(あさだ・けいいち)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:VSOP-2シンポジウム
☆02:米科学誌「サイエンス」等が「ひので」特集号を発行!
☆03:「かぐや」教育用解説ページを公開
☆04:「かぐや」が撮影した月面の映像を上映中
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★01:VSOP-2シンポジウム

 宇宙研マニアの方はご存知、もしくはご記憶にあるかもしれませんが、8年前の2000年1月に“VSOP Symposium High Energy Astrophysical Phenomena Revealed by Space-VLBI”という国際研究会が開かれました。

 VSOP計画は1997年2月12日に打ち上げられた人工衛星はるかと地上の電波望遠鏡群により、地球の直径より3倍も大きい望遠鏡を作ろうという野心的な計画です。これほど大きな望遠鏡を用いた場合にどれほど細かいものが区別できるかというと、例えば月からサバンナのライオンが余裕で認識できるほどで、人間の視力に直すと(ピンときませんが)12万にも達します。3日間にわたるこのシンポジウムはその名の通り、VSOPが打ち上がって3年後に多くの成果が得られ始めたのを機に行われた、成果報告を目的とした国際研究会でした。VSOPを用いた観測結果に関する活発な議論が行われ、平林久先生による次期スペースVLBI計画VSOP-2の方向性という講演で締めくくられました。

 実はその当時右も左もわからないピカピカの大学院1年生だった僕は指導教官であった国立天文台の井上允先生、亀野誠二先生(現鹿児島大学)にチャンスを頂き、まさにこのVSOPシンポジウムで国際研究会デビューを飾りました。当然英語で行わなければならないその講演は井上先生、亀野先生のご指導よろしく、何度も何度も練習して(ほぼ)覚えていったものを話すというスタイルで乗り切りましたが、質問についてはうまく反応できず、井上先生、亀野先生に答えて頂いたことを覚えています。ドタバタの発表とはいえ、自分としては上々のデビュー戦を飾ることができたと思う反面、今でも残念なのは、当時は自分の発表のことで一杯一杯で、世界の錚々たる人達と交遊を持てる機会だったにも関わらず、自分の不勉強も相まって、その機会を生かしきれずに人脈の獲得に至らなかったことです。ましてや、研究会の開催がどれだけの人の力に支えられていたかなんて気が付きもしませんでした。

 それでやっとこの原稿の主題ですが、2007年12月3日から7日の間、ここ宇宙科学研究本部で“Approaching Micro-Arcsecond Resolution with VSOP-2: Astrophysics and Technology”と称した国際研究会が開かれました。この研究会は8年前の研究会で平林先生が話された次期スペースVLBI計画VSOP-2にとってマイルストーンとなるものです。

 VSOP-2はVSOPの成功を受けて、宇宙航空開発研究機構と国立天文台、関係各研究機関および大学が参画しているもので、宇宙研では今年度正式にプロジェクトとして発足しました。2012年の打上げを目指し準備を進めています。

 VSOP-2の目的のひとつはブラックホール近傍の極限状態の天体物理現象を、撮像という手段で探求することで、VSOPに比べて10倍の分解能の向上が見込まれています。

 大雑把に言えば、VSOP-2に興味を持ってくれている世界中の人達が2012年までまだ5年もある(しかない?)にも関わらず、打上げを待ちきれずに宇宙研に集結し、VSOP-2ではこんなことができるとか、こんなことをすると面白いとか、ケンケンガクガクの議論を繰り広げると共に、VSOP-2を推進するぞー!!という意思の統一を行った国際的決起集会です。参加者の顔ぶれも、日本はもちろんのこと、欧米、豪州、南ア、お隣の中国、韓国など世界17カ国から138人に及び、2000年のVSOPシンポジウムよりもひとまわり規模の大きな研究会になりました。

 2000年のVSOPシンポジウムでは一参加者に過ぎなかった僕ですが、今回は主催者側に所属する一研究員として、会議運営の一端に関わらせて頂きました。宇宙研、天文台、山口大学、鹿児島大学より総勢16名からなる会議の裏方が、研究会の成功のためにそれぞれの分担を淡々とこなし、着々と準備を進めたのですが、会場の問題には非常に頭を悩まされました。

 というのも宇宙研で一番大きな大会議場の収容人数ですら定員80名(公称)なのですが、シンポジウムに登録されたのはそれよりはるかに多い138名!開催告知当初は、100人も来ないだろうと勝手に踏んでいた節があるのですが、ふたを開けてみると、登録の締め切りのずっと前に既に100人を超えていることに気付き、大慌てすることになったのです。

 大会議場に設置されている机と椅子だけでは到底足りないため、中継スペースを作る案や、シンポジウムの参加登録を締め切り前に打ち切る案、そしてやっぱり宇宙研の大会議場では無理だから他の施設で開催する案等、いろいろな意見をもとに検討を重ねました。その結果、是非とも宇宙研でやりたいという強い希望と、何とかなるだろうという淡い期待のもと、中継スペースを作る案を採用し、ここ宇宙研で行うことに決定しました。

 この問題に関してはさんざん頭を悩まされましたが、反面、嬉しい悲鳴でもありました。というのも、VSOP-2のグループは宇宙研内では比較的小規模なグループなのですが、背景にはこんなにも大きな母体があり、世界から大変期待されているのだということを、ひしひしと痛感したからです。

 中でもロシアからの参加者のKovalevさんは親子2代でVSOP、VSOP-2に貢献して頂いている天文学者で、講演では今3歳になる娘さんが(親の勝手な意思で?)VSOP-3に参加する予定であり、親子3代一家総出での準備を進めていると報告を受けました。またとりわけ会議には若い研究者や学生の参加者が多く、5年後のVSOP-2の打上げ後に一旗揚げてやろうという意思が見え隠れしていました。今回の国際研究会ではVSOP-2の推進に国内外から非常に心強く頼もしい応援を頂いたのだと思っています。是非是非、VSOP-2のグループ頑張っているなぁーと今後の発展や成長も応援していただければ幸いです。

 末筆になりますが、関係各所には多大なご尽力をいただきました。この場をお借りして篤くお礼を申し上げます。

(浅田圭一、あさだ・けいいち)

VSOP-2のサイト
新しいウィンドウが開きます http://wwwj.vsop.isas.jaxa.jp/vsop2/

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※