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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第139号

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ISASメールマガジン   第139号       【 発行日− 07.05.15 】
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★こんにちは、山本です。

 読者からメールが届きました。
「何時も楽しみにしています。すみませんがもう少し写真を多くして貰いたいのですが宜しくお願いします。」

 【名無しの読者】さん
ISASメールマガジンには、写真や図は一枚も掲載していません。何処のことを言っているのか具体的に書いていただけると助かります。

もしかして、「何時も楽しみにしている」のはISASメールマガジンでは無いのか?とか イロイロ考えてしまいました。
それと、名前も書いていただけると嬉しいです。

 今週は、4月に発足した月惑星探査推進グループ・プログラムディレクタも併任されている川口淳一郎(かわぐち・じゅんいちろう)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:月探査惑星推進グループの設立
☆02:ISASビデオ「はやぶさの大いなる挑戦」がNHK教育テレビにて放映
☆03:めざせ到達高度世界記録、気球BVT60-3号機で挑戦
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★01:月探査惑星推進グループの設立

 この記事を読まれる方の大部分の方は誤解されるかもしれません。いささかややこしい話ですが、JAXAは、本年4月、宇宙科学本部(ISAS)と横並びの組織として、月惑星探査推進グループを設立しました。名前はグループなので、規模が数名のように聞こえるでしょうし、またこの記事がISASメールマガジンということで、ISAS内部に数人の月探査に関係する組織が設けられたISAS内事情のように思われるかもしれません。実際、関係の大学等の先生方にも誤解されているケースがかなりあります。ぜひご注意をいただきたいと思うところです。

 月探査推進グループは、JAXA内で機構横断的に人材を集めて、今後本格化する月探査あるいは惑星探査を推進するための組織で、利用推進本部や科学研究本部などと横並びの新たな組織です。同様の組織は、昨年度に航空プログラムグループ、この4月に設けられた有人環境利用プログラムグループ(ISAS関連プログラム)があります。航空や有人環境利用はいわば親本部から分裂して組織されたのに対し、この月惑星探査は、宇宙研、総研と基幹本部、丸の内管理部から人材を集めて組織された、いわば組織上のモデル実験ともいえるものです。月惑星探査推進グループの最大の特徴は、なんといってもJAXA発足後初めて、旧3機関の垣根を越して機構横断的に組織されたという点にあるわけです。

 この新組織の担当する業務は、月惑星探査にかかわる、企画立ち上げのための国際調整や、研究技術開発、また関連するプロジェクトです。研究開発には、月惑星探査に特有のミッション機器、バス機器、探査機システムの開発のほか、月惑星探査に特有分野の理学研究をも含みます。研究開発組織を明示しつつ、プロジェクト遂行する部門(プロジェクト)については構成員をコア部分だけに限定することで、JAXAになかなか根付かせるのが難しい、マトリクス制の業務推進をはかるメカニズムの構築を目指しています。

 宇宙科学とこの月惑星探査の区分をどこで切るのかというご質問をよくいただきます。もちろん、月惑星探査に関わる活動を中心としていますから、天文理学観測は該当しないことは明らかです。月惑星探査の目的・テーマには、理学(サイエンス)研究だけではなく、技術開発や教育・人材育成などをテーマとしたミッションの実施という理工学という学術分野あるいは科学技術の推進が含まれます。
しかし、別な一面として、我が国が先進国の一員として果たすべき国際秩序の確保や安定といった観点での、政策的な目的を果たすためのミッションも含むという点で、ISASの実施するミッションとは一線を画している面があることになります。月への有人探査など、我が国が応分に早期の実現を目指すミッションが後者の分野に属する活動の例です。月惑星探査推進グループが実施する探査ミッションの大きな柱は、月への無人、有人探査、また小惑星・彗星など我が国がはやぶさを通じて先端に立った始原天体探査、ないしは惑星環境を直接観測することであると考えています。探査は科学と不可分であるとともに、両輪で推進されて、双方をより発展させていくことが、両組織のみならずJAXA全体で目指すべき活動であると信ずるところです。

 次期あるいは次次期の中期計画に向かって、SELENE後継機、はやぶさ後継機といった喫緊の新たな探査プロジェクトを立ち上げていくことがまずとりくみ、また解決すべき課題です。加えてこの新組織自体の構築と整備もJAXA始まって以来初の試みであって、職制にからむ諸検討課題が山積しています。これから来年4月に開始の次期中期計画の開始にむけて、精力的にこれらの検討を進めていくこととしています。とくに、ポスト宇宙ステーション活動として、宇宙開発ないしは科学技術全体を牽引する役目を果たすことが重要で、科学面はもとより、多くの技術開発体制を動員して未来を指向していきたいと考えているところです。

 宇宙開発とは宇宙にでかけて行う活動を指していますが、探査とは地球以外の天体へ直接に出かけて実施するという点で、地球を含めた天体の望遠鏡観測とは明確に異なる宇宙活動です。私たち自身を含めて人類が未知の領域へと直接に活動範囲を広げることは、科学探査で行うフロンティアの最前線から、より成熟した滞在型の観測を行う月にいたるまで、今後の科学技術を先導し牽引する重要な活動であるわけです。月の内部構造、太陽系創生や進化に関わる謎の解明、そして生命探査と、月、火星、始原天体を手始めに外惑星やそれらの衛星への直接探査へと広い範囲で積極的にミッションを投じていく方針でい ます。

 月惑星探査推進グループは、ISASとともに、本拠を相模原キャンパスに置いています。月惑星探査推進グループの英語愛称はJSPEC(JAXA Space Exploration Center)とすることに決まりました。どうそよろしくお願いいたします。

(川口淳一郎、かわぐち・じゅんいちろう)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※