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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第127号

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ISASメールマガジン   第127号       【 発行日− 07.02.20 】
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★ こんにちは、山本です。

 今週末の24日に、名古屋市の東海高校中学校で生徒主催の「サタデープログラム」が開催されます。その実行委員の内藤智也さんからISASメー ルマガジン宛に以下のお知らせが届きました。

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東海中学校のサタデープログラム実行委員会の内藤と申します。

サタデープログラムとは、生徒自身が企画して、運営する行事です。
今回(第10回)は2007/2/24にあります。

今回、私が、JAXAの的川先生を始め以下の先生をお招きしますので、メールマガジンに記載していただきたいと思います。

「宇宙最前線」
第一部 10:00〜11:30
    國枝秀世先生(名古屋大学大学院理学研究科 宇宙物理学研究室X線グループ 教授)
    田中 智先生(宇宙科学研究本部 固体惑星科学研究系 助教授)
第二部 12:30〜14:00
    黒谷明美先生(宇宙科学研究本部 宇宙環境利用科学研究系 助教授)
    村井 正先生(宇宙基幹システム本部 有人宇宙技術部宇宙医学グループ 主任医長)
第三部 14:30〜16:00
    的川泰宣先生(宇宙科学研究本部 対外協力室 室長)
    橋本正之先生(宇宙科学研究本部 宇宙科学情報解析センター 元助教授)

詳しくは、 新しいウィンドウが開きます http://www.satprogram.net/へ。

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 「サタデープログラム」の様子は、原稿を講師のXさんにお願いしています。乞う御期待!

 今週は、赤外・サブミリ波天文学研究系の松原英雄(まつはら・ひでお)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:「宇宙の塵に埋もれる宝をもとめて」〜あかり衛星初期成果研究会開催〜
☆02:「月に願いを!」キャンペーン締切は2月28日までです。
☆03:【宇宙探査シンポジウム】参加者募集!
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★01:「宇宙の塵に埋もれる宝をもとめて」〜あかり衛星初期成果研究会開催〜

 赤外線天文衛星「あかり」は、昨年2月に打ち上げられてから順調に全天の赤外線観測を続けています。その初期観測成果を、今年の夏ごろに日本天文学会の欧文研究報告誌の「初期成果特集号」としてリリースする予定です。
1月25〜26日の二日間にわたり、このための準備として「あかり」の観測の初期成果をお互いに報告しあうような研究会を内々に行いました。内々とは言いながらも、国際協力プロジェクトである「あかり」の英国や韓国のチームメンバーも多数参加し、合計65名の結構大規模な研究会となりました。まだまだ稚拙なものも多いのですが、大変ユニークな成果発表もあれば、活発な議論も行われ、初期成果を洗練したものにしていく上で大変有意義な研究会でした。以下、その研究会の雰囲気を伝える私的なレポートです。

「えーっ、そんなに明るいのにIRASでは受かってないなんて・・」
「いやっ、これはだからたぶんグリッチだと思うよ。」
「それにしてもIRASのカタログに入っていない天体がそんなに多いの?」
「うーん、太陽系内の天体なら動くから、IRASのカタログにはなくて当然だよね。」

 名古屋大学の芝井さんが、「あかり」の初期成果発表の口火を切る形で、遠赤外全天サーベイのほんの一部、ミニサーベイで受かった天体について、順番に紹介している。全天サーベイは、「あかり」のミッションの看板であり、その成果には世界が注目している。一刻も早く成果を見せたいのはやまやまだが、その分慎重にならざるをえない。まずはチーム内でしっかり正しい結果か確認しないといけないのだが、明るい天体はまだしも、暗い天体は、自動検出にまだまだ自信がなく、学生アルバイトを雇って「バードウォッチング」ならぬ「あかり天体ウォッチング」を展開中である。人海戦術!ーーしかし100万個の天体カタログ作るには、この方法では、人間を1000人ぐらい雇わないと・・・ううむ。

「ねえ、そのギャップ本当なの?」
「はい、これは、どうも本当にそうなっているようですよ」

 続いて壇上に立った東京大学の土井君。中川さんの質問を軽くいなしながら淡々と大マゼラン星雲のサーベイ観測の結果を報告している。大マゼラン雲はまさに「あかり」の特徴(広い掃天能力と高い空間分解能力)を生かしたデータがとれていて、見ているものを圧倒させる。壮麗!

 さて、「あかり」には、10分間程度空の同じ方向を見続けて色々な天体のスペクトルやきれいな画像をとる観測モード(「ポインティングモード」)があり、こちらは比較的初期成果研究会でも、主体となったのはこのモードでの観測結果であった。壇上にたったのは、中川さん。宇宙の塵に埋もれているため、エネルギーの大部分を赤外線で放っている「大光度赤外線銀河」の近赤外線スペクトルを見せる。思わずため息がもれるほどの素晴らしいデータ・・

「・・簡単な描像ですけど、中心の巨大ブラックホールのまわりに球殻のように○△■の形成領域、◎■解離領域、■□△領域、そして冷たいガスがとりまいているというような感じになるのかな、と思います」
(すみません、内容をオープンにできませんので、伏字にさせていただきます)

 続いて、大学院生の鈴木君や左近君などが、近傍銀河の「あかり」の撮像・分光観測の結果を発表する。このあたりは、米国が2003年に打上げたスピッツァー宇宙望遠鏡も、似たような観測ができるが、「あかり」は、中間赤外〜遠赤外線にわたって、スピッツァー宇宙望遠鏡よりもたくさんの 観測バンドを持っており、よりたくさんの情報を得ることができる。それに してもプレゼンテーションは英語で書かれているけど、みな日本語で話すのは、英語しかわからない人々には気の毒だったかもしれない。

 さて、研究会も終わりに近くなってようやく僕の発表。中間赤外線で北黄極方向を5000秒間も見続けた、とても深い観測の初期成果の報告。宇宙の塵に埋もれており、かつ、宇宙論的な遠方のためにスペクトルの赤方偏移が大きく、ハイパーに「赤い」天体:HERO(Hyper Extremely Red Objects、日本語の「英雄」の意味になる)と呼ばれる天体が大量に見つかっているようだ。そこで・・

「銀河の歴史は、英雄によってつくられる!」

 ・・なぜか、イギリス人に受けた(英語でも書いておいた)。日本人に受けないのは「銀河英雄伝説」(田中芳樹、徳間書店)はもはやはるか昔のアニメだからかな???

(松原英雄、まつはら・ひでお)

赤外線天文衛星「あかり」の初期観測成果
新しいウィンドウが開きます http://www.ir.isas.jaxa.jp/ASTRO-F/Outreach/new/new_bn.html

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※