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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第117号

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ISASメールマガジン   第117号       【 発行日− 06.12.05 】
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★こんにちは、山本です。

 113号の「頑張れ、冥王星!」の読者の質問

> >ワイ惑星がDwarfなら小惑星はなんていうのでしょうか。

に対する回答で、筆者の吉川さんから訂正がきています。

> >『小惑星は、今までは、英語ではminor planetとかasteroidと呼ばれていま
> >したが、この夏のIAUの決議で、minor planetという言葉は使わないこ
> >とになったのだと思います。

「上記の私のコメントですが、IAUの最終的な決議では、「minor planet」という用語については、特にその使用に制限はつかなかったということです。最初の提案では、使わないことにするということだったのですが、結局は現状のままということになったようです。」

 今週は、宇宙航行システム研究系の小川博之(おがわ・ひろゆき)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:再使用ロケット実験機「RVT」研究開発中
☆02:小惑星イトカワ、約2年ぶりに地上の望遠鏡での観測成功!
☆03:あなたの名前とメッセージを月に届けます(締切:来年1月31日)
☆04:「ひので」太陽黒点周囲のダイナミックな噴出画像を克明に!
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★01:再使用ロケット実験機「RVT」研究開発中

「ターボポンプ予冷終了!」
「注液弁閉!」
「自動調圧ON!」
「タンク圧OK」
「予冷流量OK」
「コントローラスタート」
「59」「58」・・・「3」
「点火器OK!」
「2」「1」「0」
「エンジン起動!」
「1」「2」・・・
「エンジンシャットダウン」
「正常終了」
・・・
・・・

 再使用ロケット実験機「RVT」の地上燃焼試験を秋田県の能代多目的試験場で行いました。2003年の飛行実験以来、「RVT」は推進剤供給システムを「ガス押し式」から「ターボポンプ式」に変更する計画で研究を進めてきました。一昨年度、昨年度とターボポンプ(15年以上前に別の研究に用いていたもの)の特性試験および改修、ターボポンプ用エンジンの設計・製作・特性試験を行なってきて、本試験で初めてタンク、ターボポンプ、エンジン等の各要素を組み合わせた試験を行ないました。

 「RVT」の次のステップとして、大型化した「再使用観測ロケット」を考えています。大型の機体にはターボポンプ式推進システムが必須であり、それに向けた技術および経験を小型の「RVT」で短期間・小規模に効率よく先行実証することが目的です。

 今の「RVT」は宇宙へ行くことはできませんが、小型とはいえ「RVT」はロケットに必要な要素をすべて持っています。小型のため、すべてに目が行き届きますし、少人数で取り回せるので取り扱いが(大型のロケットに比べれば)容易です。ロケットシステムのある部分の実証や技術者・研究者の教育としても適当な規模です。研究者・技術者の試行錯誤も比較的容易で、現場にあるものでシステムを改修することも良くあります。

「これじゃあ予冷流量が多すぎて燃料がなくなってしまうぞ。配管改修しよう」
「弁の作動遅れがこうなったから、タイミングをこう変えよう」
「運用を工夫しないとヘリウムが足りなくなるね。運用をこうしよう」
「エンジン起動はほぼ予定通りだね」
「こんな運用じゃぁ航空機のようにクイックターンアラウンドの運用は難しいな。どうすればよいだろうか」
・・・・・

 私たちの最終目標は「現在の航空機のように、短時間に何度でも飛行できる宇宙輸送システム」の実現です。このRVTや次の再使用観測ロケットはその前段階と位置づけています。最終目標実現のために、現在の制約の中で、一歩でも前にすすむには何をしたらよいかを常に考えて研究開発を進めています。

 当面、地上燃焼試験で得られた知見・結果をもって、RVTシステムの検討を行ない、再度地上燃焼試験を行なった後、ターボポンプ式RVTの飛行実証試験に臨む計画です。同時に再使用観測ロケット実現に向けた活動をおこなっていきます。

(小川博之、おがわ・ひろゆき)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※