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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第99号

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ISASメールマガジン   第099号       【 発行日− 06.08.01 】
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★こんにちは、山本です。

 29日の一般公開も無事終り、長かった梅雨も明け、30日には、「SOLAR-B」衛星が内之浦へ送り出されました。これから、9月23日のM-V-7号機による打上げまで、ISASの長い夏が始まりました。

 97号のメールマガジンにチョット一般公開での自己PRを書いたところ、スタンプラリーのテントまでワザワザ尋ねて来てくださった方が二人もいらっしゃいました。忙しくて、お話を伺う時間も無くて失礼しました。

 また、リタイア組(定年でISASを離れた)の読者からも、毎週楽しみにしていますと声を掛けていただきました。皆さんの励ましを糧に、毎週、執筆者に「発破」をかけて!?編集に励みましょう。

 次号は100号ということで、久しぶりに的川広報委員長に原稿をお願いしています。

 肝心の今週は、宇宙情報・エネルギー工学研究系の朝木義晴(あさき・よしはる)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:宇宙研公開日の苦痛と快楽
☆02:宇宙研一般公開2006、盛況裡に開催!
☆03:M-Vロケット7号機の第1組立てオペレーション終了
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★01:宇宙研公開日の苦痛と快楽

 7月29日は宇宙研公開日でした。今年は例年以上に疲れましたが、それは、所属する電波天文研究グループの展示ブース担当者になってしまったためでしょう。

 宇宙研公開日では研究グループあるいはプロジェクトごとに展示ブースを出します。ブース担当者とは、つまるところそのグループの雑用係で、企画を練ったり、他のブースとの間で境界を調整したりと、面倒くさい仕事がふってきます。自分達のプロジェクトの進行具合いなどに応じて毎年ポスター内容を更新しなければなりませんが、そんなチェックはブース担当者の仕事。また、お客さん参加型の企画の実現可能性を検討しなればなりませんが、そんな仕事をたばねるのもブース担当者。かといって、この時期に仕事の量が減るわけでもなく、私に関して言えば1週間前からオーバーワーク状態でした。

 電波天文グループはX線天文、赤外線天文、太陽観測グループと一緒に展示を行いました。電波天文ブースは、電波天文プロジェクト「VSOP」終了報告と、今まさに動き始めた次世代電波天文計画「VSOP-2」の紹介をメインに据えた、いかにも狭間の時期の展示といった様相でした。もちろんこの次世代計画のために当グループは活気が出つつあるのですが、研究成果の報告の観点で大きな特徴を作り出せなかった感があります。一方、X線天文の「すざく」、赤外線天文の「あかり」がこの1年の間に打上げられて成果をあげ始め、そして太陽観測グループはSOLAR-B衛星の打ち上げを控えて注目されており、天文ブース全体では非常に活気に満ちていました。

 さて、宇宙研公開日の特徴は、そこはかとなく漂う展示物の安っぽい作りと、説明の格調高さ、そしてアイデア勝負の集客術にあると思っています。例えば、衛星開発のために少なからぬ予算をかけて製作した試験機を厚紙の筒を利用した陳腐な棚で展示するという、我ながら笑ってしまう安直さを実行してしまう一方、苦労して研究開発してきたものを是非お見せたい、という研究者の熱意に裏付けされた格調高い説明で陳腐さを補い、そしてそれらのギャップを埋めるかのような演出でお客さんの心をつかむ、そういった独特の雰囲気があります。そのような展示は決して意図したものではなく、忙しくて準備の時間がとれないという切羽詰まった状況から、なんとか有り合わせのもので間に合わせるというたくましさのあらわれなのです。しかし、見せかけの「安っぽさ」によってお客さんをがっかりさせないよう魅力的な企画を考えなければならず、ブース・スタッフにとって公開日準備とは苦痛以外の何者でもありません。オーバーワークと相まってこめかみの血管がみりみり音をたててきしみます。ですが、お客さんが感心する顔を見るのは一種の快楽です。はぁ、複雑・・・。

 会場は「はやぶさ」の展示があったホールと吹き抜けでつながっている2階ロビーでしたが、階下の熱気があがってくるのか、お昼前にはかなり蒸し暑くなりました。これは苦痛で、立ちっぱなしの説明員が気分を悪くする始末。電波天文ブースでは塗り絵コーナーを設置していたのですが、10分以上も座って色を塗る子供達が暑さで倒れないよう、手のあいた説明員が団扇で風を送りつづけていました。想定外だったのは隣り合う太陽観測ブース実験コーナーの大盛況。一時は電波天文ブースを狭めてこの大盛況に対応しなければと考えたほどでしたが、幸か不幸か、お昼頃には材料切れになってしまい午後には余裕ができました。早々と材料切れを起こしたところを見ると、この盛況は当の太陽グループにとっても予想外だったに違いありません。ここでは説明しませんが、実験で作られたモノを公開日後に見て、わたしたち電波天文グループですら、「これはおもしろい!」と感嘆しました。

 この会場は授乳室が近かったのですが、赤ちゃんを抱いたお母さんが小さい子供さんを連れて授乳室へと向かうために人ごみの中をかきわけて進むという光景に出くわしまして、混雑をある程度以上にしないために会場全体で展示の規模を抑えた方がよかったかな、と感じました。魅力的なアイデアでお客さんを楽しませようと頑張ることと、お客さんが楽しむ余裕を空間的に作ることとのバランスが課題だなぁと反省する次第です。

 最後に、皆さん、宇宙研公開日を本当に楽しむコツは、迫力ある模型や立派な施設を見学する事ではなく、「安っぽさ」の中に隠された研究者の真の情熱を見破る事です。見破ってごらんなさい、すると研究者は「にやっ」と笑って「よい指摘ですね」と返してくること請け合いです。そんな台詞を聞けるようになれば、宇宙研公開日を2倍にも3倍にも楽しむ事ができますよ。

(朝木義晴、あさき・よしはる)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※