宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASメールマガジン > 2006年 > 第96号

ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第96号

★★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ISASメールマガジン   第096号       【 発行日− 06.07.11 】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★こんにちは、山本です。

 今週はちょっと毛色の違う旬な話題です。
「はやぶさプロジェクト」が日本SFファングループ連合会議が選定する星雲賞に選ばれたのです。宮城・松島で行なわれた第45回日本SF大会 (通称:みちのくSF祭ずんこん)の報告です。

今回で37回目となる星雲賞ですが、「はやぶさプロジェクト」が対象になったのは2002年から設けられた自由部門です。因みに2002年の第1回受賞は、当時宇宙開発事業団(現JAXA)の「H-IIAロケット試験機1号機」です。(街で話題の今週末公開の「日本沈没」は、1974年の第5回星雲賞を受賞しています。)

 そんな(どんな?)SF大会に松島まで出かけたのは、宇宙輸送工学研究系(電気推進)の國中 均(くになか・ひとし)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:はやぶさプロジェクト、星雲賞受賞の報告
☆02:「3万kmの瞳 −宇宙電波望遠鏡で銀河ブラックホールに迫る−」TEPIAハイテク・ビデオ・コンクール最優秀作品賞を受賞
───────────────────────────────────

★01:はやぶさプロジェクト、星雲賞受賞の報告

 恐る恐るSF大会へ参加するため、宮城県松島まで移動の車中、私の頭に は次の「?」と「!」でいっぱいでした。

1.なぜ、リアル「はやぶさ」がSF(Science Fiction)大会?

2.スケジュール表の25時半から27時って、なに?

3.なんで、この私がSF大会へ派遣?

4.そのまま「あっち」の世界に連れてかれて帰れなかったら、どうしてくれんのー、宇宙研!

 会場はたいへん大きな「ホテル壮観」を、全部貸しきりで実施の模様です。到着早々に、授賞式やパネルディスカッションの打ち合わせ。表彰の順番は「自由部門」から始まるので、「はやぶさ」が1番に登場とのこと。つまり、他の受賞者の作法や会場の反応などの参考情報全くなし、と言う訳です。ここまで来れば、「出たとこ勝負」っと、腹をくくる。

 19時より、授与式。会場には数百人が集結しています。壇上に上がり、表彰状と、1枚石から削った「はやぶさ」の銘入りの硯をいただきました。
「はやぶさ」チーム一同は、大変光栄に感じており、受賞に恥じなきよう地球帰還に向けて最大級の努力中である趣旨のスピーチを、私から申し上げました。続けて、そうそうたる小説家やクリエーターの方々が受賞されて行きます。20時より、小松左京氏ご列席のもとの大宴会。元ロケット班長林氏や垣見氏(ペンシルロケットの設計担当者)、さらにL/Dの松浦晋也氏とお話させて頂く機会に恵まれました。私のようなぺーぺーは、お近づきもできなかったので、ありがたいことです。

 この後、23時半から25時半まで、「星雲賞受賞パネルディスカッション」が行われました。大倉氏の絶妙のモデレートのもと、島田氏・新城氏と伴に参加させていただきました。

 「アナーキィズム」、「リベラルティ」。。。と、聞き慣れない専門用語の海に溺れながらも、著作家の方々はどのようなお仕事ぶりなのかと、興味深く拝聴しました。書き上げたものを、出版社に投げ込むのだとばかり思っていましたら、必ずしもそれだけではなく、オファーがあってから書き始めるってスタイルもあるのですね。

 自分の研究と重ね合わせて考えると、電気推進・先進型推進にオファーが来るなんてことは、全く全然あり得ないので、全てが全部「投げ込み」です。コンセプトから始めて、なんだかんだ理由を付けて絡め手で予算らしきものにありついて、極小規模の実証や模擬を積み重ねて、徐々にリアルに持って行く。そして、期を見て売り込みを掛ける、という手順です。どの衛星にも利用される引っ張り蛸の宇宙技術もあるわけだから、それに比べればお寒い分野なのだなー、と改めて思い知りました。外部からオファーの掛かるくらい洗練された仕事・分野にまで昇華できるように、なおいっそうの努力が必要と、思い至りました。

 「ハードSF」というジャンルがあるそうで(1文字書き間違えると、大変なことになるので、ここは慎重に。)、その分野の方々には、「はやぶさ」は、垂涎の的のようでした。はるばる望む「いとかわ」より「必ずここ(地球)へ帰って来る」と再度お約束させていただきました。

 続けて27時(つまり朝の3時)まで、「はやぶさ報告会」です。とても1人では心細かったので、事前に入手した情報により「はやぶさ」チーム同胞の会津大・平田成さんが、「あっち」の業界人と聞きつけて、是非にとお願いしこの企画にご協力を頂きました。まさにその前日は会津大にて、小惑星研究会が実施されていて、科学的論争中のホットな話題をご披露いただきました。(つまり、関係者の多くは、近隣にいらっしゃった訳ですね!?。)彼曰く、1998SF36(小惑星いとかわの発見番号)なので、SF大会受賞は大正解なのだそうです。私は、イオンエンジンのメカニズム・はやぶさ離着陸の模様・離陸後の状況・キセノンガスジェットなど、映像を交えてテクノロジーの視点からお話させていただきました。

 27時(朝3時)までの苦行を終えて、ホテルへ帰ってしばし睡眠。翌朝帰路につきました。ホテル貸切り・夜通しシンポジウムの企画はなかなか面白く、学術学会でも取り入れるべき手法と思いました。

 「?」の3番は釈然としないものが残りますが、1と2は氷解し、「あっち」の世界に拉致されることもありませんでした。しかし、そのまま米国サクラメントに直行です。この文章は、京成線成田空港行きの中で書いています。帰国は来週のため、最後の「!」は未解決のままです。

(國中 均、くになか・ひとし)

 星雲賞については
新しいウィンドウが開きます http://www.sf-fan.gr.jp/awards/index.html

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※