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ISASメールマガジン 第87号
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ISASメールマガジン 第087号 【 発行日− 06.05.09 】
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★こんにちは、山本です。
今年のゴールデンウィークは 如何でしたか?
たかが5連休で、ちょっと仕事復帰よりも もっと遊んでいたいと怠け病が発症している感があったのですが、仕事の方でトラブル続発。人間より機械の方が久しぶりの利用増加に困惑しているようです。
今週は、宇宙航行システム研究系の津田雄一(つだ・ゆういち)さんの登 場です。
今週号は、チョット(大分)記事少なめです。
── INDEX──────────────────────────────
★01:もう1つのロケット実験 〜 M-Vサブペイロード
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★01:もう1つのロケット実験 〜 M-Vサブペイロード
M-Vロケットは、宇宙研の科学衛星を打ち上げてきた主力ロケットです。最近では、昨年7月にASTRO-EII「すざく」(M-V-6号機)、 今年2月にASTRO-F「あかり」(M-V-8号機)が打ち上がりました。
ここ最近のM-Vには、この主衛星の傍らに、このロケット飛翔時の特殊な環境を利用した実験のための小さな小さなスペースが用意されています。それが「サブペイロード」です。
M-Vに限らず、ロケットは一般的に、機体のバランスを良くする目的で、バランスウェイト(おもり)を取り付けて、最終的な重心の調整をします。バランスウェイトは、言ってみれば単なる金属の塊です。サブペイロードは、そのバランスウェイトに重さ以外の“機能”を持たせてやろう、ということで、M-V-6号機から搭載されるようになりました。せっかく宇宙へ飛び出すのだから、そんなチャンスを骨の髄までしゃぶってやろう、というわけです。
サブペイロードは、M-V-6号機で2つ、M-V-8号機で2つの、合計4実験がこれまでに搭載されました。重さはそれぞれたった5〜10kg程度。しかしその実験内容はいずれもサブペイロードならではの、チャレンジングなものでした。
M-V-6号機では、M-V第3段固体ロケットモータの燃焼終了後の“くすぶり”を計測する残留推力計測実験と、東京工業大学の超小型人工衛星用分離機構の機能試験が実施されました。
M-V-8号機では、将来の太陽系探査の航行方式として宇宙研で研究が行われている「ソーラーセイル」の展開実験と、東京工業大学の超小型衛星「CUTE1.7+APD」の打上げ・分離を行いました。
残留推力計測の結果は、M-Vの性能確認に役に立ちましたし、2度に渡って実験を行った東工大は、学生が中心になって開発した超小型衛星を見事に軌道に乗せ、立派に運用しています。
サブペイロードは、その募集から打上げまでがたった1年半で完結します。サブペイロードに選ばれたら、その開発チームは、打上げに間に合うように1年半で設計から開発・製造を完了させ、さらにM-Vロケットの各種総合試験への参加が求められます。このスピーティーさは開発チーム泣かせ(!)なものです。しかし、本当に新しいことは時間をかけてやってはダメ。やりたいと思ったことをすぐに実現できる機会、それがサブペイロードなのです。(ということでサブペイロードに選ばれた方々には納得してもらっています...)
1年半ですべてを完結させるために、これまでサブペイロードの開発に携わってきた4チームとも、大変な努力をしてきています。もちろんM-Vの目的は、メインペイロードである科学衛星の打上げですが、その主目的を全く妨げることのない範囲でできる、最大限のチャレンジを彼らはしてきました。
実験とは、必ずしも思ったとおりには行かないものですが、このロケット飛翔中という特殊な環境で得られたデータそのものが実験の成果です。実際、M-V-8号機のソーラーセイルサブペイロードは、部分的にしか展開せず、ロケットとサブペイロードの技術的な橋渡し役をやっている私も、その結果にはとても落胆しました。ところが、そんな実験からも大変たくさんのことを開発チームは導き出しています。その結果は確実に将来のソーラーセイルによる宇宙航行に役に立っていると言えるでしょう。
1.5年、5kgでできる宇宙へのチャレンジ。「最先端」の卵はこういうところにあるのだと思います。
(津田雄一、つだ・ゆういち)
M-V-8号機搭載のサブペイロード実験の結果について
⇒ http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2006/0303_sub.shtml
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ISASメールマガジン 第087号 【 発行日− 06.05.09 】
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★こんにちは、山本です。
今年のゴールデンウィークは 如何でしたか?
たかが5連休で、ちょっと仕事復帰よりも もっと遊んでいたいと怠け病が発症している感があったのですが、仕事の方でトラブル続発。人間より機械の方が久しぶりの利用増加に困惑しているようです。
今週は、宇宙航行システム研究系の津田雄一(つだ・ゆういち)さんの登 場です。
今週号は、チョット(大分)記事少なめです。
── INDEX──────────────────────────────
★01:もう1つのロケット実験 〜 M-Vサブペイロード
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★01:もう1つのロケット実験 〜 M-Vサブペイロード
M-Vロケットは、宇宙研の科学衛星を打ち上げてきた主力ロケットです。最近では、昨年7月にASTRO-EII「すざく」(M-V-6号機)、 今年2月にASTRO-F「あかり」(M-V-8号機)が打ち上がりました。
ここ最近のM-Vには、この主衛星の傍らに、このロケット飛翔時の特殊な環境を利用した実験のための小さな小さなスペースが用意されています。それが「サブペイロード」です。
M-Vに限らず、ロケットは一般的に、機体のバランスを良くする目的で、バランスウェイト(おもり)を取り付けて、最終的な重心の調整をします。バランスウェイトは、言ってみれば単なる金属の塊です。サブペイロードは、そのバランスウェイトに重さ以外の“機能”を持たせてやろう、ということで、M-V-6号機から搭載されるようになりました。せっかく宇宙へ飛び出すのだから、そんなチャンスを骨の髄までしゃぶってやろう、というわけです。
サブペイロードは、M-V-6号機で2つ、M-V-8号機で2つの、合計4実験がこれまでに搭載されました。重さはそれぞれたった5〜10kg程度。しかしその実験内容はいずれもサブペイロードならではの、チャレンジングなものでした。
M-V-6号機では、M-V第3段固体ロケットモータの燃焼終了後の“くすぶり”を計測する残留推力計測実験と、東京工業大学の超小型人工衛星用分離機構の機能試験が実施されました。
M-V-8号機では、将来の太陽系探査の航行方式として宇宙研で研究が行われている「ソーラーセイル」の展開実験と、東京工業大学の超小型衛星「CUTE1.7+APD」の打上げ・分離を行いました。
残留推力計測の結果は、M-Vの性能確認に役に立ちましたし、2度に渡って実験を行った東工大は、学生が中心になって開発した超小型衛星を見事に軌道に乗せ、立派に運用しています。
サブペイロードは、その募集から打上げまでがたった1年半で完結します。サブペイロードに選ばれたら、その開発チームは、打上げに間に合うように1年半で設計から開発・製造を完了させ、さらにM-Vロケットの各種総合試験への参加が求められます。このスピーティーさは開発チーム泣かせ(!)なものです。しかし、本当に新しいことは時間をかけてやってはダメ。やりたいと思ったことをすぐに実現できる機会、それがサブペイロードなのです。(ということでサブペイロードに選ばれた方々には納得してもらっています...)
1年半ですべてを完結させるために、これまでサブペイロードの開発に携わってきた4チームとも、大変な努力をしてきています。もちろんM-Vの目的は、メインペイロードである科学衛星の打上げですが、その主目的を全く妨げることのない範囲でできる、最大限のチャレンジを彼らはしてきました。
実験とは、必ずしも思ったとおりには行かないものですが、このロケット飛翔中という特殊な環境で得られたデータそのものが実験の成果です。実際、M-V-8号機のソーラーセイルサブペイロードは、部分的にしか展開せず、ロケットとサブペイロードの技術的な橋渡し役をやっている私も、その結果にはとても落胆しました。ところが、そんな実験からも大変たくさんのことを開発チームは導き出しています。その結果は確実に将来のソーラーセイルによる宇宙航行に役に立っていると言えるでしょう。
1.5年、5kgでできる宇宙へのチャレンジ。「最先端」の卵はこういうところにあるのだと思います。
(津田雄一、つだ・ゆういち)
M-V-8号機搭載のサブペイロード実験の結果について
⇒ http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2006/0303_sub.shtml
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