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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第75号

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ISASメールマガジン   第075号       【 発行日− 06.02.14 】
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★ こんにちは、山本です。

 今日はバレンタインデー。例年ですと対外協力室の的川先生宛に沢山のチョコレートが集まるので、しばらくの間そのチョコレートの恩恵?にアズカッテいました。今年はどうでしょうか?

 今週は、宇宙輸送工学研究系の森田泰弘(もりた・やすひろ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:M-Vロケットの打上げまで
☆02:ASTRO-F/M-V-8の動作チェック行われる
☆03:スーパープレッシャー気球の性能試験を実施
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★01:M-Vロケットの打上げまで

【はじめに】

 みなさんはロケットの打上げをご覧になったことがあるでしょうか?
 ロケットの打上げは一瞬のうちに終わってしまいますが、打上げに至るまでのロケットの組み立てや整備には長くて地道な作業が必要です。今回は、打上げまでの大きな作業について、段階を追ってお話してみたいと思います。


【ステップ1:噛み合わせ試験(相模原)】

 M-Vロケットでは、各メーカで製造したコンポーネント(制御装置や通信装置などの搭載機器)を相模原キャンパスに集めて、コンポーネントを組み合わせたシステムとしての試験を行います。これを噛み合わせ試験と呼んでいますが、製造メーカの人たちとJAXA職員が渾然一体となって作業を進めます。試験は大きく分けると、機械性能の試験と電気性能の試験です。
ロケットが飛んでいくときには轟々とすごい音を立てて飛んでいきますね。機械性能試験では、飛んでいくときの振動や衝撃などにシステムとして耐えるかどうかを確認します。一方、電気性能試験では、コンポーネント同士が電気的に影響しあって悪さをしないことを確認します。こうして、約1ヶ月に及ぶ相模原での噛み合わせ試験が終わると、いよいよ内之浦での組み立て作業に入ります。


【ステップ2:組み立てオペレーション(内之浦)】

 組み立てオペレーションでは、衛星を除くロケット全体を組み立てて、ロケットに衛星をのせるための準備を整えます。一口でロケットを組み立てると言ってもその作業は膨大です。例えば、第1段ロケットのモータは2分轄して工場で製造し、内之浦の発射整備塔(発射台)で結合しますが、間にO(オー)リングというゴムのパッキンをはめ、充填材を塗りこみ、最後に合計180本のボルトを一本々一本締めていきます。燃焼ガスが継ぎ目から漏れたりすると大変ですから、慎重に進めなければなりません。これはいわば職人芸で、ロケットの組み立ては一品生産の芸術作品と言えるでしょう。こういう作業が、ひとつひとつ地道に行われてロケットは組み立てられていくのです。組み立てオペレーションは、第1オペと第2オペに分けて実施しますが、合計して2ヶ月近くの長丁場になります。


【ステップ3:フライトオペレーション(内之浦)】

 フライトオペレーションでは、ロケットと衛星を結合してロケットの最終形態を作り上げます。この最終形態で制御・電気系のEnd-to-End試験を行います。これは、地上のレーダやアンテナからロケットの搭載機器まで、本番のフライトと同じ形で機能の確認を行うものです。これらの試験が終わると一安心で、ようやくロケットの完成です。
 さて、フライトオペレーションでは、ロケットの組み立てばかりでなくさまざまな作業が行われます。そのひとつが、風補正です。ロケットの第1段ステージは大気の中を飛んでいくので、大きな空気の力を受けます。飛行中にロケットが折れたりしないように、毎日気球を上げて上空の風の様子を観測するとともに、打上げの直前にロケットの軌道を最適なものに調整します。この作業は限られた時間の中で細かい計算を行うわけで、息を飲むような作業と言えます。こうした作業のひとつひとつが、ロケットの打上げの成功を支えているわけです。


【終わりに】

 このように、ロケットの組み立ては一つ一つの小さな作業の積み重ねです。その作業には、内之浦の実験班だけでも数百人と言う人がかかわっています。メーカの工場で製造に携わった人や東京で後方支援をする人たちを含めると優に千人を超す人がM-Vロケットの打上げを支えていることになります。どの作業にミスがあってもきれいな打上げの成功はありません。ロケットの打上げは、実験成功と言うただひとつの目的に向けて多くの人がこころをひとつに合わせた努力の集大成と言えるでしょう。
 現在、内之浦では、M-Vロケット8号機のフライトオペレーションを実施中です。

(森田泰弘、もりた・やすひろ)

ASTRO-F/M-V-8 カウントダウンページ
http://www.isas.jaxa.jp/j/countdown/index.shtml

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※