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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第73号

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ISASメールマガジン   第073号       【 発行日− 06.01.31 】
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★ こんにちは、山本です。
 先日、本館の廊下である人から声を掛けられました。
「あのぅ さっき玄関ホールで見学の方に聞かれたんですけど、ココに宇宙人の標本ってあるんですか?」
「エッ ありませんよ。ココ(ISAS)でしているのは、宇宙人ではなくて宇宙の研究ですけど…」
 確か、ウルトラマンタロウこと東光太郎が所属していたのは、【うちゅうかがくけいびたい(宇宙科学警備隊:ZAT)】で、【うちゅうかがくけんきゅうほんぶ(宇宙科学研究本部:ISAS)】とチョット似てる?
宇宙怪獣や宇宙人と戦っているように思われているのだろうか???

 今週は、高エネルギー天文学研究系の高橋忠幸(たかはし・ただゆき)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:宇宙に夢を
☆02:すざく搭載X線微小熱量計XRS不具合原因究明報告
☆03:池下章裕 リアル・スペース・アート展
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★01:宇宙に夢を

 「すざく」が打ち上がってから、すでに半年がたちました。一日にざっと1ギガバイトのデータが、鹿児島は内之浦にある受信局におりてきます。その全てが今まで誰も見た事がない、はじめてとられたデータなので、毎日世界中に散らばったチームのメンバーが、夢中で解析に取り組んでいます。

 「すざく」はX(エックス)線やガンマ線という、光に比べて波長のとても短い電磁波で宇宙をみることのできる「宇宙の天文台」です。私たちが普段見慣れている空は目で見える波長で見た空なので、X線で見た星空がどんなものなのかを、口で伝えるというのはなかなか難しい事です。逆に言うと、私たちが実際に目で見てもわからないような宇宙の姿を「すざく」は伝えてくれていることになります。数千万度もの高温のガスが渦巻いているような世界が宇宙では日常茶飯事だというわくわくする状況や、夜空に散らばる沢山の銀河が、その中心に太陽の100万倍から1億倍もの質量を持つ巨大なブラックホールを隠しているという証拠を私たちがにぎっているという興奮 を、伝えたくてしょうがないというのが「すざく」を動かしている研究者の強い願いです。

 地上の望遠鏡、そして宇宙の望遠鏡。人類がこれまで築き上げてきた知識の上にたち、最先端のテクノロジーを駆使したこれらの装置で宇宙を見る事で、私たちは、宇宙がいつ、どうして生まれ、どのようにして今見ているような宇宙ができあがってきたのか、そして、そんな事を考える事のできる人類の源となる生命は、どこから来たのか。私たちが子供の頃には考えることすらできなかったこうした問いかけについて、今は具体的に考え、研究することができるようになっています。

 X線やガンマ線は大気で吸収されてしまうので、宇宙に出ないと観測することができません。しかし、宇宙に最先端の検出器を持ち出して観測を行うのはとても大変です。誰も修理に行けない宇宙で、自動的に動き続けるような装置を作ることも大変ですし、そもそも、自分が作った機械を地球の重力圏を超え、軌道上に打ち上げること自体が大変なことです。それでも、たとえどんなに大変な仕事であっても、やはり宇宙は究極の知の対象であるとともに未踏の地、挑戦の場です。

 JAXAになり、日本も、その持てる力を集中して宇宙開発にとりくむ体制ができてきました。気がついてみると、まわりには、太陽系の端まで自分が作った探査機を送り込みたいとか、われわれが宇宙で唯一の生命体ではないことを示したいとか、自分が宇宙に出てみたいというような人たちが沢山いる事がわかってきました。こうした夢を実現するのには高い技術が必要なのですが、とても刺激的でやりがいがあります。そうこうしているうちに、今度は、子供たちが宇宙でやりたいと思いついた事が、実現するような仕組みができあがってくるかもしれません。


(高橋忠幸、たかはし・ただゆき)

高エネルギー天体物理学グループ/高橋研究室
http://www.astro.isas.jaxa.jp/~takahasi/

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※