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ISASメールマガジン 第60号
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ISASメールマガジン 第060号 【 発行日− 05.10.25 】
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★ こんにちは、山本です。
秋の長雨の時季はもう過ぎたのでしょうか? やっと晴れの日が続くようになりました。秋特有の巻雲(すじ雲)や巻積雲(いわし雲)が浮かんだ空も、蒼く高く見えます。
今週は、宇宙プラズマ研究系の浅村和史(あさむら・かずし)さんです。
── INDEX──────────────────────────────
★01:れいめい初期運用
☆02:「はやぶさ」航法カメラ画像を使った相対距離の推定について
☆03:『宇宙・夢・人』『内惑星探訪』更新しました。第12回
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★01:れいめい初期運用
れいめいはオーロラ観測と工学的な衛星技術の実証を目的とした小型科学衛星です。今年8月24日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。れいめいが投入された軌道は太陽同期軌道と呼ばれ、衛星がいつも同じ地方時上を周回しています。このため、日本にいると、衛星を地上から追尾できるのは半日ごとになってしまいます。れいめいの場合は0時50分〜12時50分の軌道なので、昼13時付近に2〜3回、夜1時付近に2〜3回、上空に衛星が現れます。
この状況で問題になるのは打上げ後5時間程度、衛星を追尾できないことです。れいめいが打ちあがったのはバイコヌールですから、衛星が軌道にのったときはバイコヌール付近が0時50分(サマータイムや基準子午線の位置などのため実際の現地時刻とは異なります)です。そのとき日本は朝7時頃。地球が自転して日本が12時頃にならないとれいめいは日本の上空に現れないわけです。しかも、現れても10分間の追尾が2回、次は半日後です。これでは異常が発見されても、手を打てないまま半日待つことになりかねません。
そのため、海外の受信局を使います。
れいめいのデータはノルウェー・スバルバード島でも受信しています。この島はスカンジナビア半島北端からさらに北に1000km、北緯79°に位置します。ここまでくると北極点にほど近く、れいめいのように北極と南極を結ぶ軌道を周っている衛星は、毎周回上空に現れます。実際、スバルバードでは1日あたり14〜15回れいめいを追尾できるのに対し、日本では4〜5回です。
スバルバード局を使うことで打上げ1時間後、その後約100分ごとに衛星の状態をチェックできるようになりました。結局、れいめいの電波を最初に受信したのは海外局になってしまったわけですが、スバルバード局の存在は日本での運用を行う上で重要なものでした。
ロケットからの分離直後、れいめいの+Z面(太陽方向を向く面)は反太陽方向を向いていました。分離後の姿勢変動を抑えたあと、姿勢を安定させるために磁気トルカ(地球磁場との相互作用によって衛星の姿勢を変化させる電磁石)を使って穏やかなスピンを衛星にかけます。ついで+Z面を太陽方向に向けてゆきました。そして太陽角がある値になったところで太陽電池パドル展開。さらに+Z面は太陽方向へ。ここまでがすべて自律的に、地上からの制御なしで行われました。太陽電池パドルが太陽方向を向いて展開すると、 当たり前ですが一定の電力が得られます。それまで電池で生きてきた衛星も一安心です。
一安心の後は地上からのコマンド送信によって姿勢制御や衛星の動作モード変更、搭載機器のチェックアウトが行われます。これまでのところ、チェックアウトした機器はすべて正常に動作しており、姿勢制御も順調です。先日はオーロラカメラ(MAC)が初めてオーロラを捉えました。宇宙科学研究本部のホームページにもニュースになって載っています。
観測は相模原局で衛星にコマンドプランを書き込み、オーロラ帯上空で観測、スバルバード局で受信という形になっています。スバルバード局のデータは追尾終了後5分程度で日本に伝送可能となります。スバルバード局の追尾が終わった頃、運用室で何が観測されているか調べるのは楽しいものです。
ただ、観測機器のうち、オーロラ粒子観測器(ESA/ISA)だけはまだチェックが終わっていません。高電圧を使うので、電源を入れる前に十分残留ガスを抜いておく必要があるためです。そして僕の担当機器はESA/ISAです。他のすべての機器が正常に動作し、衛星の状態も安定している中で唯一残っているESA/ISA。高圧を入れるのが怖くなってきました。
相模原局は宇宙科学研究本部新A棟の屋上にあるφ3mアンテナを使用した局です。昼時と深夜に動いています。特に夜の運用時はアンテナがライトアップされています。
(浅村和史、あさむら・かずし)
⇒ http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/index/index.shtml
INDEX衛星のサイト「INDEX WEB!」
⇒
http://www.index.isas.ac.jp/
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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※
ISASメールマガジン 第060号 【 発行日− 05.10.25 】
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★ こんにちは、山本です。
秋の長雨の時季はもう過ぎたのでしょうか? やっと晴れの日が続くようになりました。秋特有の巻雲(すじ雲)や巻積雲(いわし雲)が浮かんだ空も、蒼く高く見えます。
今週は、宇宙プラズマ研究系の浅村和史(あさむら・かずし)さんです。
── INDEX──────────────────────────────
★01:れいめい初期運用
☆02:「はやぶさ」航法カメラ画像を使った相対距離の推定について
☆03:『宇宙・夢・人』『内惑星探訪』更新しました。第12回
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★01:れいめい初期運用
れいめいはオーロラ観測と工学的な衛星技術の実証を目的とした小型科学衛星です。今年8月24日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。れいめいが投入された軌道は太陽同期軌道と呼ばれ、衛星がいつも同じ地方時上を周回しています。このため、日本にいると、衛星を地上から追尾できるのは半日ごとになってしまいます。れいめいの場合は0時50分〜12時50分の軌道なので、昼13時付近に2〜3回、夜1時付近に2〜3回、上空に衛星が現れます。
この状況で問題になるのは打上げ後5時間程度、衛星を追尾できないことです。れいめいが打ちあがったのはバイコヌールですから、衛星が軌道にのったときはバイコヌール付近が0時50分(サマータイムや基準子午線の位置などのため実際の現地時刻とは異なります)です。そのとき日本は朝7時頃。地球が自転して日本が12時頃にならないとれいめいは日本の上空に現れないわけです。しかも、現れても10分間の追尾が2回、次は半日後です。これでは異常が発見されても、手を打てないまま半日待つことになりかねません。
そのため、海外の受信局を使います。
れいめいのデータはノルウェー・スバルバード島でも受信しています。この島はスカンジナビア半島北端からさらに北に1000km、北緯79°に位置します。ここまでくると北極点にほど近く、れいめいのように北極と南極を結ぶ軌道を周っている衛星は、毎周回上空に現れます。実際、スバルバードでは1日あたり14〜15回れいめいを追尾できるのに対し、日本では4〜5回です。
スバルバード局を使うことで打上げ1時間後、その後約100分ごとに衛星の状態をチェックできるようになりました。結局、れいめいの電波を最初に受信したのは海外局になってしまったわけですが、スバルバード局の存在は日本での運用を行う上で重要なものでした。
ロケットからの分離直後、れいめいの+Z面(太陽方向を向く面)は反太陽方向を向いていました。分離後の姿勢変動を抑えたあと、姿勢を安定させるために磁気トルカ(地球磁場との相互作用によって衛星の姿勢を変化させる電磁石)を使って穏やかなスピンを衛星にかけます。ついで+Z面を太陽方向に向けてゆきました。そして太陽角がある値になったところで太陽電池パドル展開。さらに+Z面は太陽方向へ。ここまでがすべて自律的に、地上からの制御なしで行われました。太陽電池パドルが太陽方向を向いて展開すると、 当たり前ですが一定の電力が得られます。それまで電池で生きてきた衛星も一安心です。
一安心の後は地上からのコマンド送信によって姿勢制御や衛星の動作モード変更、搭載機器のチェックアウトが行われます。これまでのところ、チェックアウトした機器はすべて正常に動作しており、姿勢制御も順調です。先日はオーロラカメラ(MAC)が初めてオーロラを捉えました。宇宙科学研究本部のホームページにもニュースになって載っています。
観測は相模原局で衛星にコマンドプランを書き込み、オーロラ帯上空で観測、スバルバード局で受信という形になっています。スバルバード局のデータは追尾終了後5分程度で日本に伝送可能となります。スバルバード局の追尾が終わった頃、運用室で何が観測されているか調べるのは楽しいものです。
ただ、観測機器のうち、オーロラ粒子観測器(ESA/ISA)だけはまだチェックが終わっていません。高電圧を使うので、電源を入れる前に十分残留ガスを抜いておく必要があるためです。そして僕の担当機器はESA/ISAです。他のすべての機器が正常に動作し、衛星の状態も安定している中で唯一残っているESA/ISA。高圧を入れるのが怖くなってきました。
相模原局は宇宙科学研究本部新A棟の屋上にあるφ3mアンテナを使用した局です。昼時と深夜に動いています。特に夜の運用時はアンテナがライトアップされています。
(浅村和史、あさむら・かずし)
⇒ http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/index/index.shtml
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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※