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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第57号

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ISASメールマガジン   第057号       【 発行日− 05.10.04 】
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★ こんにちは、山本です。
 ISASメールマガジンは1年を超え、JAXAは3年目に突入しました。
10月1日にはISASの本部長が交代しました。
 今週は、新本部長の井上 一(いのうえ・はじめ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:「宇宙科学」の特徴と役割
☆02:「はやぶさ」の相対位置の制御履歴
☆03:『宇宙・夢・人』『内惑星探訪』更新しました。第10回
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★01:「宇宙科学」の特徴と役割

 この10月1日より、宇宙科学研究本部本部長となりました、井上です。

 この宇宙科学研究本部は、それまで大学共同利用機関であった宇宙科学研究所が、2003年10月1日の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の設立により、その一員となったものです。統合以来2年が過ぎ、歴史も文化も違っていた旧三機関の互いの理解も進みました。今や、新生JAXAとして新しい日本の宇宙開発を作り出して行く動きが加速されています。その中において、「宇宙科学」が果たすべき役割には大きいものがあります。

 ここで、「宇宙科学」とは、飛翔体を用いて宇宙空間に出て行う科学観測や科学・工学実験と、それらを可能にする技術開発の総称です。そして、次にあげるような基本的な考え方・特徴のもとに、研究開発を行ってきました。これらの考え方・特徴は、今後JAXAが研究開発機関として発展していくためにも、たいへんに重要な役割を果たしていくものと考えられます。

 第一は、大学共同利用システムとしての特徴です。宇宙科学研究本部は、その理念としては、国内大学・研究機関の研究者やそのグループが、それぞれが思いついた、宇宙空間を利用したすばらしい科学観測や科学・工学実験を、実際に実施することを可能にする場所です。事実、宇宙科学研究本部では、日本の関係研究者コミュニティーの代表からなるいくつかの委員会が窓口となって、それらの提案を受け付け、予算的・技術的な支援をしています。これからのJAXAとしては、宇宙を利用した新しい技術開発実験等の機会提供の場を、大学・研究機関だけではなく、広く民間にも広げていく必要があるでしょう。
個人の奇抜な発想・工夫が、科学・技術発展の原点ですが、一方では、「宇宙科学」の衛星・探査機計画には大きな予算が必要となるため、長期的な目標を掲げ、戦略的に確かなアウトプットを出していくことがたいへん大事なことです。個人の新しい発想・工夫によるボトムアップの考え方と、長期的な戦略を示していくことを要請される国家的プロジェクトと言える側面とを、いかに両立させていくかは、重要な課題です。

 第二は、世界を向いた視点です。上に述べたようなシステムの中で提案される衛星・探査機計画は、価値が十分高いものでなければなりません。そして、それらは、つねに世界最先端をめざし、国際的なコミュニティーによるきびしい目にさらされなければなりません。事実、宇宙科学研究所・宇宙科学研究本部がこれまで打ち上げてきた科学衛星は、衛星の規模でいえば中小型のものですが、目的をよく絞り込んで、国際的にも特徴のある計画としてきました。そして、常に世界最先端の計画を進めることが、JAXAの国際的地位を上げ、日本の知的存在感を高めることにつながります。

 第三は、科学と技術が一体となった「宇宙科学」研究の推進です。世界最先端の「宇宙科学」計画を立ち上げるには、これまでにない新しい観測装置、衛星・探査機を開発する必要があります。向こう見ずともいえる科学的目標の実現をめざすことが、これまでにない新しい技術を生み出すことにつながります。一方、新しい工夫による新しい技術が、新しい発想による「宇宙科学」計画を生み出します。「科学」と「技術」は車の両輪となって、人類の知のフロンティアを切り開くものです。

 そして第四は、そのような世界最先端の衛星・探査機開発に直接触れ、みずから参加することで、若手研究者・若手技術者が大きく育つことです。宇宙科学研究本部で行われてきている活動は、みずからの発想と、みずから開発した装置によって科学・技術の最前線を切り開くもので、その士気には、非常に高いものがあります。そして、何事も自分の頭で考え、自分の手を動かす姿勢は、研究開発の原点で、JAXAが世界に誇る研究開発機構になっていく基本となるべきものでしょう。

(井上 一、いのうえ・はじめ)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※