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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第56号

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ISASメールマガジン   第056号       【 発行日− 05.09.27 】
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★ こんにちは、山本です。
 ISASメールマガジンの読者が2000名を突破しました。毎週お知らせすることがたくさんあって、メールマガジンにどの記事を載せるか頭を悩ましています。
 是非、ISASのページ(http://www.isas.jaxa.jp/j/index.shtml)も併せてご覧ください。
 今週は、宇宙探査工学研究系の曽根理嗣(そね・よしつぐ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:東奔西走
☆02:小型副衛星「れいめい」のオーロラ初画像
☆03:小惑星イトカワ上の代表的地形の名称の提案
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★01:東奔西走

 私は宇宙探査工学研究系で人工衛星の電源研究をしている曽根と申します。ISASメールマガジンへは、2度目の出場です。

 今年度の宇宙科学研究本部は、「すざく」打上げを皮切りに、「れいめい」の打上げ、「はやぶさ」の「イトカワ」へのランデブーと、気の抜けない作業が続いています。
 「幸い」にも電池を積まない宇宙機は皆無なので、忙しい日々が続きます。
 「すざく」打上げでは肝付町(旧、内之浦町)でバッテリの最終充電を行い、打上げの時には半地下の管制室から打上げに参加しました。

 その後すぐに、ロシアのバイコヌール宇宙基地に行き「れいめい」の最終充電作業を行いました。日本や米国、ヨーロッパの宇宙基地は南国ムードの漂う海岸線からロケットを打ち上げますが、バイコヌールはカザフスタンの砂漠にある宇宙基地です。町を流れる川にはラクダが水を飲みにきます。ホテルの庭にはハリネズミが出たりします。関係者の何人もが宿泊したコスモノート・ホテルには、ガガーリンをはじめロシアのコスモノート(宇宙飛行士)達の記念植樹があります。日本人として最初に宇宙に行った秋山さんの記念植樹もありました。
 宇宙基地の中では、(機密事項が多いらしく見ることはできませんが)すぐ近くでソユーズロケットの打上げ調整をしているなど、宇宙屋の私には血が騒ぐ思いのなかでの作業でした。飛び立ったら最後、二度と会うことの出来なくなるINDEX(「れいめい」の打上げ前の名前)のバッテリを満タンにするのが私の仕事です。世界で始めてラミネート式のマンガン系リチウムイオン二次電池をバッテリに組みました。ロシアのサイト内での空調は大丈夫か。もし、日本からの出荷前と比べておかしな電圧がでたらどうするか。色々なことを想定して万全を期しているつもりでも、「この作業でミスを犯すと衛星の生き死に関わる」と思うと緊張します。
 バッテリが満タンになり、「もう私には、これ以上には何もしてやれない」と思った瞬間、涙をこらえることはできません。帰国後は肝付町に向かい、打上げ後の初期データの解析、運用等に携わりました。

 非常に当たり前の話ですが、人工衛星は人間の生活にあわせては飛んでくれません。かくなる原稿を書いている今、私は深夜の研究室にいます。「れいめい」の運用です。この衛星はオーロラ観測を行う衛星なので、北極と南極の上空に居るときにどんな観測ができるかが重要です。日本から衛星を見ることができるのは、1日のうち、昼の12時くらいから2回程度と、深夜12時くらいから2回程度。衛星の運用に関わると、ちょうど子供が生まれたころを思い出します。赤ん坊は生まれてすぐのころは2時間から3時間おきに授乳の必要があるため、親は大変に不規則な睡眠を余儀なくされます。「れいめい」も生まれたばかりの人工衛星。順調とはいえ、教職員と学 生達の緊張の日々はもう少し続きます。

 まもなく「はやぶさ」の「イトカワ」近傍での作業に伴いバッテリの放電が必要になるでしょうから、そのための準備が必要です。それが終わればASTRO-F、SOLAR-Bと打上げが続きます。

 どこかでタイミングをみて、私の充電もしておかないと。

(曽根理嗣、そね・よしつぐ)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※