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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第47号

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ISASメールマガジン   第047号       【 発行日− 05.07.26 】
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★ こんにちは、山本です。
 23日の一般公開には1万3千人を超える入場者が詰めかけました。雲行きは怪しげだったのですが雨にはならず、日中は涼しくて、スタンプラリーの終点にいた私には快適な一日でした。ところが、建物の中は来場者の熱気でエアコンの能力が追いついていないようでした。終了間際に関東で大きな地震がありましたが、遠方からいらした方たちは滞りなく家に帰ることが出来たのでしょうか? 電車が不通になり、東京ディズニーランドから帰れなくなった…等の新聞記事を読んで、ISASからはどうだったんだろうと心配になりました。
 今週は、一般公開実行委員長の平林先生にお願いしました。

── INDEX──────────────────────────────
★01:2005年夏の公開日のこと
☆02:「すざく」予定の円軌道に調整終了(7月22日)
☆03:INDEX衛星、バイコヌール基地に到着(7月19日)
☆04:HAYABUSA 小惑星「イトカワ」に向かって順調に飛行中!
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★01:2005年夏の公開日のこと

 7月23日(土)にJAXA宇宙科学研究本部(以下、宇宙研と略記します)の 一般公開がおこなわれました。

 公開日前日の夜、公開の雰囲気はできあがってきましたが、各所でまだまだ飾りつけが行われていました。研究者や大学院生が「明日までにうまく動くかなぁ」などと言ってセットや回路を組み込んでいます。まだパネルが貼られてないコーナーもあります。徹夜のグループも出ます。でも、毎年、こうや って、宇宙研の公開準備は完了するのです。
 当日、朝早く出てくると、展示はほとんどできあがっています。よくみると、まだがんばっているグループもあります。
 当日になって活気づくのが、受付、売店、食堂などなど・・・みなさんどんなに朝早くから始めたのでしょう。

 「展示の内容は年々よくなってきてますね」と言われます。そうなのだろうと思います。以前は、プロジェクトなどを大上段に構えて展示するようなことが多かったかと思うのですが、参加できる柔らかな工夫や実験が増えてきたようです。クイズ、スタンプラリー、いろいろありますね。
 わたしの関係する電波天文学コーナーでは、小さな子のための色塗りコーナーが設けてありました。宇宙に浮かぶ地球に星にアンテナ、それに色を塗るという単純明快なものなのですが、ちっちゃな子たちが三つの椅子にちょこんと座って一心にクレヨンで塗っているのです。相手をしていた女子学生が、「こんなものがこんなに人気があるとは思わなかった。また色使いの発想の豊かさに教えられた!」というのです。「 なるほどなぁ」と思いました。
 実験はおもしろいのですが、聴いてみると、すっきりわかる場合と、要領を得ない場合があります。それは、スタッフや学生さんの深い理解力と、いろいろな人へのコミュニケーション能力によると思うのです。自分の言葉、自分のテンポ、自分の狭い理解のなかで、相手の風采を観察せずにコミュニケーションをしてしまうのでしょう。こんなときは、ひるがえって自分を反省します。また、学生さんたちもこういう場を使ってコミュニケーション能力を学ぶの がいいことだと思うのです。

 この春からJAXAに宇宙教育センターが発足し、オフィスが宇宙研内にあることもあり、今年は宇宙教育センターも展示に参加してもらいました。宇宙研でのいままでの一般広報教育活動にくらべれば2桁も大きな予算を擁しておこなわれるセンター活動ですから、まなじりを決してよきプログラムを走らせて頂きたいと思います。宇宙研から貢献できることは、ほとんど予算のない中でも知恵と体力で公開日をつくって、また学ぶ活動的で創造的なハングリー精神だと思うのです。よき活動が真剣に志向され、理解されれば、多くの関係者が積極的に参加すると思うのです。

 以前から、このような機会に、よきテーマがあったら特別講演会をしたらいいのではないかと考えていました。ペンシルロケット五十周年の今年、日本が経験した貴重な流れを話してもらうことはとてもいいことだと思いました。的川さんが、この春の東京新宿での「講演と映画の会」の際に、このような素晴らしい話をされましたが、今度は、「50年前に起こったこと」 という題でしてもらうことになりました。司会をしながら講演を聴きましたが、話の流れは新宿でのものと似ていましたが、驚きました。二度聴いても、実にいいのです。的川さんの魅力が込められた内容です。筋をよく知っている能やオペラでも何度でも楽しめる、という芸術の世界に近いと思いました。宇宙研にある一番大きな会議室を椅子だけにしてたくさんの人に座っていただきましたが、それでも100人近くが立ったままで、外からはもはや入れない状態でした。今後、宇宙研にはもっと大きな講演会場、それも階段教室風のものが欲しいものです。

 狭い宇宙研では水ロケットがあげられなくなったので、今年も近くの共和小学校のグラウンドをお借りしました。予定した以上の400発の水ロケットが、無事に打ち上げられたそうです。
 たくさんのお客さんを迎えて、暑い混雑の中で、お客さんが心地よく疲れずにいらっしゃれるかが問題でした。今年は芝生に大テントを張り、構内あちこちにベンチが配置されました。普段の宇宙研では外に椅子や机がないのが、気になっています。昼休みなどに、外のベンチに腰掛けてお弁当を食べたり、アカデミックな話ができるような場所が、自然にあちこちにあるといいなと思っています。

 4時半に公開は終わりです。お客様が消えた構内では一斉に後片付けが始まります。それが、一時間以内にはさっぱりと元に戻ってしまう速さには、ある種、「宴のあと」という寂寥感さえ感じます。あるいは、展示がさっと消える潔さも爽快です。「桜の花のようだねえ」と、同僚と話しました。
 よくは覚えていないのですが、この頃に地震がありました。ものを運んでいたのか、車を移動中なのかわかりませんが、自身では感じてはおりません。このあと、お帰りのお客さんたちは、帰路の電車でずいぶん難渋されたようです。

 13,680人のお客様がいらっしゃいました。この数を実感しようと考えました。皆さんに地球一周で並んでもらおう。すると、3km間隔かな?ふーん。多いんだか少ないんだか、地球が大きいんだか小さいんだか、なんともわかりませんでした。

 今年は、この一般公開の実行委員長をおおせつかりました。実際を仕切ったのは庶務課広報係の係長の和光さんです。バックには小山専門員、そして黒柳さん。宇宙研の広報に関わることは、たったこの3人ですることになっています。そして、一般公開直前近くまで延びてきたASTRO-EII打上げ。もちろん、この広報担当も同じメンバー。ですから、ASTRO-EIIが無事に打ち上がって、小山、和光さんが内之浦から戻った12日から、準備は急速に立ち上がったのです。そして、もちろん、宇宙研の公開日はたくさんの力が一緒になってつくられました。

 必死の想いのなかでの10日の「すざく(朱雀)」の見事な打上げ成功、その裏で、打上げ最優先で耐えて立ち上がって無事に終了した公開日。「すざく」がうまくいったので、ほんとうにすっきりと嬉しい気持ちで公開日を迎えられました。梅雨、打上げ延期、シャトルの延期、いろいろな不確定要素を含んだ中でのタイミングが取りにくい準備でした。宇宙研の陣容の少なさの中での頑張りの 象徴のような7月でした。

(平林 久、ひらばやし・ひさし)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※