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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第30号

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ISASメールマガジン   第030号        【 発行日− 05.03.29】
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★ こんにちは、山本です。
 東京の桜の開花予想日は日曜日でした。ISASの研究棟前の桜はお彼岸の連休でグンと膨らみましたが、その後の寒さで開花までもう一歩でしょうか。週末の土曜日にISASの生協がお花見を企画しています。せめて三分咲きくらいでないと、ただの飲み会になってしまう……
 今週は、宇宙プラズマ研究系の小山孝一郎(おやま・こういちろう)さんです。

―― INDEX――――――――――――――――――――――――――――――
★01:地震の電離圏への影響 ―新しい研究分野―
☆02: 寒さを吹き飛ばす、熱い「銀河連邦宇宙セミナー」開催される!
☆03:BepiColombo/MMO 第1回サイエンスワーキンググループ会合及びフェーズB移行前審査終了
☆04:宇宙科学講演と映画の会のお知らせ
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★01:地震の電離圏への影響 ―新しい研究分野―

 4月16日早朝のわずか3時間ほどでしたが、電気通信大学の早川教授がオーガナイズされた“国際地震電磁気ワークショップ(IWSE2005)”(http://www.iwse.ee.uec.ac.jp/)を覗いてきました。思いがけなくもインドにおける宇宙科学の大物研究者、ミトラ博士(A.P.Mitra)にお会いすることもできました。このワークショップは地震に伴う電磁気現象、大気・電離圏への影響などに関して報告するユニークなものです。ユニークという意味は私の専門分野である電離圏研究を例にとると、地震との関連は世界広しといえども片手で数えられるくらいの数の研究者しか研究しておらず、またここに集まった研究者はいわゆる地震そのものを長年研究してきた集団ではありません。従って多くの電離圏研究者はまだその影響の存在を極めて懐疑的に見ていますし、他の分野でも同じような状況だと聞いております。

10年ほど前になるでしょうか、私自身がロシアのプリネツ博士(S.Pulinets)から、地震発生前から電離圏に震源地上空の電離圏の変化が見えるらしいという話を聞いた時は、極めて懐疑的でありました。しかし、1981年2月に打ち上げられた日本の太陽観測衛星「ひのとり」のデータを詳しく見てみると、どうも地震の影響があるらしいと思うようになりました。震源と電離圏の異常現象とは1対1で結びつかない場合がほとんどで、電離圏への影響を理解するまでにはまだまだ時間と手間がかかりそうですが、いつか多くの人が納得できる日がくるのではと期待すらしています。

 今回のワークショップでは、地震に伴う電磁波を観測するために、米国のベンチャー企業が2003年に打ち上げた超小型衛星Quakesatが地震に伴う電磁波を検出した報告、昨年フランスが打ち上げた地震電磁気観測衛星Demeterの初期結果などが出てきました。現在イタリア、メキシコ、トルコでも地震に伴う現象を観測する衛星計画が議論されています。ロシアは2001年に世界に先駆けて小型衛星Kompassを打ち上げましたが、残念にもデータが取得できませんでした。日本でも約10年ほど前からでしょうか、旧宇宙開発事業団の児玉氏が一生懸命、日本こそ地震に伴う現象を研究するための衛星を上げるべきだと主張してきました。彼の先取性とは違い、私が保守的であったいうことでしょうか?外国に遅れたとはいえ、今、日本で小型衛星を計画し、勤勉で優秀と定評のある日本の研究者を組織すれば、きっと成果を出してくれるでしょう。

 話はもとに戻り、70歳を超えてもいまだ宇宙科学研究に情熱を抱き世界を飛び回っているミトラ博士(この人に会うには空港へ行けばいいといわれるほどで、Airport Mitraと綽名がついています)は、この関連のワークショップを来年インドで開きたいそうです。超第一級の研究者の昔と変わらない情熱は言わずもがな、ごく新しい分野に真摯に耳を傾けておられる博士の開拓精神に元気付けられて、相模原に舞い戻ってきました。博士は4月中旬にまた日本にこられるそうです。次回は旧知の平尾名誉教授にも会いたいということです。それにしてもなぜこの人はこんなに元気なのかな?

新しいウィンドウが開きます http://www.iwse.ee.uec.ac.jp/
新しいウィンドウが開きます http://mimas.web.infoseek.co.jp/sentan/papers/jisin/jisinyot.htm

(小山孝一郎、おやま・こういちろう)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※