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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第12号

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ISASメールマガジン   第012号        【 発行日− 04.11.23】
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★ こんにちは、山本です。
 今日は11月23日【勤労感謝の日】。国民の祝日でお休みのはずなのに『めるまが』を発行してます。(別に、祝日に“勤労に感謝して”働いているわけではなく、予約配信システムを利用しているだけです。)
 今週は、宇宙輸送工学研究系の羽生宏人(はぶ・ひろと)さんです。

―― INDEX――――――――――――――――――――――――――――――
★01:国産主力ロケットの復帰に向けて
☆02:第1回「はやぶさ」シンポジウム&一般講演会、盛況に開催
☆03:ガンマ線天文衛星Swift打上げに成功!
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★01:国産主力ロケットの復帰に向けて

‐信頼性向上‐

 これこそが実用化に至った現代のロケットに残された重要な課題の一つであり、今最も強く求められているものです。JAXAでは、主力ロケットH-IIAの早期フライト再開に向け全力で改良に取り組んでいます。また、科学衛星打上げロケットのM-Vについてもシステム全般の信頼性に関わる点検作業が急ピッチで進められています。

 宇宙輸送システム信頼性向上を旗印に、JAXA本部横断のプロジェクトが昨年末新たに発足し、ロケットの設計について議論されています。私はこれまで固体ロケットに充填される推進薬の燃焼や物性に関する研究とM-Vロケットの推進系に関わる仕事を中心に担当しておりましたが、ISAS側のプロジェクトメンバーとして、大型補助固体ロケットSRB-Aに関わる業務に携わるようになりました。M-VもSRB-Aも同じ日本の固体ロケットであることに変わりはありませんから。

 現在、種子島宇宙センターではSRB-A改良型の設計変更妥当性検証のため、フルサイズの燃焼試験が頻繁に実施されています。タイムリーな話題ですので、現場の様子を少しご紹介しましょう。

 SRB-Aの規模になると、燃焼試験は準備から実施まで約1ヶ月を要します。なにせあの巨体ですから、火薬庫から運搬してテストスタンドに搬入するのも一苦労。しかも60トンを超す巨大な火薬の固まりが目の前にあるわけですから、事故など万が一にも許されません。慎重な作業のなか、ロケットモータは推力を計測するためにテストスタンドの決まった位置に寸分違わず固定されます。その後、燃焼圧力、モータケースの歪みや温度を計測するためのセンサが設置されます。

 燃焼試験当日は点火時刻目標を11時00分に設定し、これに合わせて準備は早朝6時30分から始まります。準備が完了し、点火10分前になると計測室のぶ厚い防爆扉が鈍い音と共に全て閉ざされ、外気が遮断されます。そこから計測室内は一気に緊張感が高まります。私も自らの鼓動を全身で感じるほどです。何しろ一発勝負ですから。

 カウントが進み、「・・・3・2・1・ゼロ!点火!」轟音と共に床から振動が伝わってきます。息の詰まる2分間が過ぎ、管制担当者の「燃焼終了!」という大きな声が計測室内に響くと、握手をする人たち、ガッツポーズをとる人など喜びと歓声に包まれます。それもそのはず、この2分のために1ヶ月間慎重に準備を進めてきたわけですから。

 近頃、日本の大型ロケットの評判は残念ながら芳しくなく、世間の目は厳しくなる一方です。しかし、報道の裏側では、ロケットの技術は開発現場でのこのような苦労と地道な努力によって支えられているのです。11月9日に実施された燃焼試験の成功によって、H-IIAはフライト復帰に向け着実に前進しています。H-IIAロケット&M-Vロケットの連続打上げ成功に向け、JAXAの努力は続きます。

(羽生宏人、はぶ・ひろと)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※