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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第10号

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ISASメールマガジン   第010号        【 発行日− 04.11.09】
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★ こんにちは、山本です。
 今週は、宇宙探査工学研究系の曽根理嗣(そね・よしつぐ)さんです。ISASニュース10月号の「宇宙科学最前線」でも“宇宙の電池”について書かれています。Web版も早急にUPしますので、お待ちください。

新しいウィンドウが開きます http://www.isas.jaxa.jp/ISASnews/

―― INDEX――――――――――――――――――――――――――――――
★01:宇宙の電池屋
☆02:今年の一般公開で配布した「宇宙わ(うちゅわ)」
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★01:宇宙の電池屋

 私は宇宙探査工学研究系で人工衛星の電源研究をしている曽根と申します。通称、「宇宙の電池屋」です。「宇宙」という非日常的なキーワードと、「電池」という日常身の回りにあるありきたりの物体とはなかなか関連付かないかもしれません。でも、(担当者が言うのもなんですが)実はとても大事な部品です。

 ロケットは地上から飛び立つ前にはアンビリカルケーブルという電源ラインから電力を供給されます。類似語としてはアンビリカルチューブという言葉がありますが、これは医学用語で「へその緒」のことです。打上げ時には正にへその緒を切って、ロケットは飛び立ちます。その後は、ロケット本体に内蔵された電池により姿勢制御や搭載機器の運用をしています。(アンビリカルケーブルが千切れると、後は電池が尽きるところまでしか活動できない。エバンゲリオンというSFアニメーションで似たような話しがありましたよね。)

 また、ロケットにより軌道に載せられた人工衛星は、太陽光を浴びて太陽電池により電力を生み出し、このときの余剰電力をバッテリに蓄えます。地球や惑星の影に入った時や、衛星事態が不具合のために太陽光を受けられない時には、このバッテリの電力を消費して衛星は運用されます。予測せずにバッテリが空になったときには衛星の生死に係わるため、どのような容量の電池を選び、どのように運用するかの判断は難しいのです。また衛星はバッテリだけでは1時間程度しか活動できないため、軌道上の衛星運用において運用関係者から突然電話をもらったときは、「バッテリにトラブルか?あと何分もつかな。」と、かなり緊張しますし胃が痛くもなりますが、それだけに技術者としてやりがいがいを強く感じております。

 モバイルコンピュータや携帯電話に積まれているリチウムイオン二次電池や、シェーバーに積まれているニッカド電池は一般になじみがあると思いますが、人工衛星で使う電池も容量こそ大きいですが基本的には同じものです。ただ、これらの電池は一日に一回程度充電をして一年くらい使えれば良いとされるのに対して、衛星用の電池は軌道上に衛星が居続ける間の数年間にわたり絶えず充放電や充電維持状態にさらされるので、大変にタフであることが求められます。このようなタフな要求に耐える設計の検討や、運用条件の工夫をすることが私の大事な研究課題です。

 今はリチウムイオン二次電池や燃料電池を中心に研究を展開しております。周りからは、「コンピュータや携帯電話の電池の上手な使い方を教えてくれ。」と聞かれることが多々ありますが、「あまり働かせすぎないで、どうか可愛がってやってください。」とお願いすることにしています。

新しいウィンドウが開きます http://www.isas.jaxa.jp/ISASnews/No.279/interview.html

(曽根理嗣、そね・よしつぐ)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※