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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第8号

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ISASメールマガジン   第008号        【 発行日− 04.10.26】
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★ こんにちは、山本です。
今週は、技術開発部の清水幸夫(しみず・ゆきお)さんです。
10月31日開催の『宇宙学校・おびひろ』では、タウンミーティングが企画されています。「宇宙の夢」について、自由に語り合いましょう。 お近くの方は奮って参加ください。 ISASに来ないと入手できないグッズも購入できます。

―― INDEX――――――――――――――――――――――――――――――
★01:宇宙を駆ける小さなエンジン
☆02:「宇宙学校・おびひろ」 10月31日開催
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★01:宇宙を駆ける小さなエンジン

 ISASメールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。今回は「電気推進ロケット」について紹介したいと思います。

 皆さんは「電気推進ロケット」あるいは「非化学推進ロケット」などという言葉をご存知ですか? ISASメールマガジンの読者の多くは宇宙に興味がある方と想像できますので、たぶん、かなりの方がご存知なのだと思います。しかし、一般の方々を対象とした講演会などでアンケートを取ってみるとこれらの言葉をご存知の方はせいぜい多くても全体の一割程度です。日本ではあまりなじみの無いエンジンですから無理ならざる事かもしれませんね。一方、世界の人工衛星や探査機を見てみるとこの電気推進ロケット(エンジン)が思いのほか数多く搭載されていることが分かります。例えば、同じ設計でいくつもの衛星が作られどんどん打ち上げられているある通信衛星シリーズでは、姿勢制御に欠かせない基本機器の一つになっています。また他の多くの静止衛星にも同じように標準装備されています。

 電気推進ロケットの特徴を一言で言えば、大きな推力は出せないけれど燃費が非常によいエンジンと言えるでしょう。言い方を変えれば、燃料が少なくて済むので人工衛星や探査機全体の重量が大変軽くなります。また、時間さえかければ探査機の最終的な速度を大変大きく増すことができるので深宇宙探査を行う探査機などにうってつけのエンジンと言えます。実際NASAが5年前に打ち上げて小惑星「Braille」などの撮影に成功した探査機「DeepSpace-1」や昨年5月に宇宙研がM-Vロケットで打ち上げた小惑星探査機「はやぶさ」、同じく昨年10月に欧州宇宙機構が打ち上げて来月11月に「月」に到着(表現は正しくありませんが)する「Smart-1」を始めとして、欧米やロシアの探査機や人工衛星には沢山の電気推進ロケットが搭載されています。

 さて、宇宙研の「はやぶさ」には電気推進ロケットの一種であるイオンエンジンが4基搭載されています。1基のエンジンの出口直径は10cmです。最大3基のエンジンを同時に運転することができますが、その時に発生する推力はおよそ20数mN(ミリ・ニュートン/1円玉一個)程度のとても小さなエンジンです。こんな小さなエンジンですが時間をかけてコツコツと探査機を推し進めると今までのロケットエンジンではとても実現出来ないような速度を生み出すことができます。何事も積み重ねが大切ですね。

 私たちは毎日「はやぶさ」の健康状態を監視したり、指令を与えたり、宇宙空間で得られたデーターを地上に送信するよう命令したり、それらのデーターを受信したり、小惑星「いとかわ」までの極めて細い一本道を踏み外していないかなどを監視したりしていますが、「いとかわ」に到着するために連日連夜健気に働いているイオンエンジンの様子を運用室で見ていると、エンジン担当研究室の者という理由だけではなく、このエンジンに何かいとおしさすら感じます。10月中旬現在、「はやぶさ」は地球から既に1億キロメートル以上離れた宇宙空間を非常に順調に航行しており、来年夏の「いとかわ」到着を目指してたゆまなくエンジンの運転が続きます。思わず心の中で、「ガンバレ!イオンエンジン」と叫んでしまいます。

新しいウィンドウが開きます http://www.ep.isas.jaxa.jp/muses-c/
http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2003/07_02.shtml
http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/index.shtml

(清水幸夫、しみず・ゆきお)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※