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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第7号

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ISASメールマガジン   第007号        【 発行日− 04.10.19】
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★ こんにちは、山本です。
今週は、宇宙環境利用科学研究系の黒谷明美(くろたに・あけみ)さんです。
黒谷さんの研究室には 何故かカエルGOODSが???
背負っているデイパックやTシャツにもカエルが、ナンデダロウ……

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★01:ISASでウニを飼っています
☆02:総合研究大学院大学国際シンポジウム 一般講演会「地球に近づく小惑星と人類」
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★01:ISASでウニを飼っています

 今回は、ISASの中の少数派、ロケットでも衛星でも星でもなく、生物の研究をしている1人からお届けします。研究材料の話をしましょう。

 私の研究は、生物の形と重力との関係を探ることです。よく見慣れている生物の形は、1Gという地球の重力環境の影響を受けた結果なのだと考えます。重力の影響がどれほどのものなのかを知りたいのです。形そのものというよりは、形ができていくプロセスに興味があります。その生物材料として使っているのが、バフンウニの幼生の中の小さな骨、骨片です。幼生は卵と精子を混ぜて受精卵を作り、その卵が育っていったものです。

 実験室には、人工海水の水槽がたくさん並んでいます。人工海水は、いろいろな魚や無脊椎動物の卵が、ある段階にまで正常に育つことを保証されている、由緒正しい「人工海水の素」を脱イオン水に溶かして作ります。その水槽に棲むのはバフンウニの成体。これらは冬の大潮の海で自ら採集したものと、採集したウニを人工的に温度制御したもので、産卵期の成体が一年中使えるように調節しています(自然の産卵期は冬)。

 幼生の骨片は、炭酸カルシウムの結晶と骨の基質タンパク質からできていますが、形を保つ骨組みのような役目をもち、同じ種の中では、ほとんど同じ形で、小さくて精巧な工芸品のようです。幼生の身体の中には、この美しい骨をつくる専門の職人のような細胞が存在します。この細胞の細かな仕事に重力がどれほど影響を与えているのかを調べる実験を行っています。宇宙での微小重力環境で実験する機会はなかなかないので、主に、遠心機で1Gより大きな重力を作り出し、その中で骨片を作らせる実験を行っています。結果がまとまっておもしろいことがわかったら、次の機会に紹介したいと思います。

 ところで、ウニを飼っていると言うと、たくさんの人が「食べられるの?」とか、「食べさせて」とか言います。残念でした。使っているのは卵や精子なので食べる部分と一致しています。だから食べられません。食べさせられません。食べることを考えて実験するなら、ホタテ貝の平滑筋(貝柱のほとんどは横紋筋で、平滑筋はほんの少し)や伊勢エビの神経(お料理では背わたとして捨てるところ)などを使った研究がいちばんでしょう。そんな研究計画ができたら、きっとお知らせします。

http://www.isas.jaxa.jp/j/about/professor/k/kurotani_akemi.shtml
新しいウィンドウが開きます http://www.isas.ac.jp/ISASnews/No.238/dream-11.html


(黒谷明美、くろたに・あけみ)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※