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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第5号

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ISASメールマガジン   第005号        【 発行日− 04.10.05】
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★ こんにちは、山本です。
今週は、固体惑星科学研究系の岡田達明(おかだ・たつあき)さんです。
プロフィールは、ISASの加藤學研究室のHPで紹介されています。
新しいウィンドウが開きます http://planetb.sci.isas.ac.jp/xrs/index.html

―― INDEX――――――――――――――――――――――――――――――
★01:はやぶさの威容(異様?)
☆02:火星大気は太陽風によって流出する!
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★01:はやぶさの威容(異様?)

 ワシントンのスミソニアン航空宇宙博物館には見劣りするかもしれませんが、JAXA宇宙科学研究本部のロビーはちょっとした展示エリアです。私が初めて宇宙科学研究所(当時)を訪問した10数年前に比べると、人工衛星やロケットなどの展示が、質・量ともに年々充実し、今や見る者を飽きさせない陣容を誇るようになりました。なかでも、ひときわ威容(異様?)を放つのが小惑星探査機「はやぶさ」の実物大模型です。

 「はやぶさ」は、小惑星サンプルリターンに必須な技術の修得を目的とする工学実験衛星です。電気推進、自律航法誘導、微小重力下での岩石試料採取、惑星間軌道からのリエントリなどを実証します。全て成功すれば、「はやぶさ」は世界初の小惑星サンプルリターン!を達成します。もちろん、オール成功を目指し、連日、苦闘の運用を行っています。

 今年の5月19日に地球スイングバイを行いました。きっと覚えている方も多いでしょう。当日の運用当番は私だったのです。地球近傍を通過前後で、通信電波の往復時間がどんどん変化する様子を体感し、また「はやぶさ」から送られてくる地球の写真を見ながら感動したことを昨日の事のように覚えています。

 国立天文台のとあるアンケート調査で、「天動説」が正しいと回答した小学生が4割の昇ることがニュースになりましたが、惑星や大小無数の岩石塊は太陽のまわりを回っています。小惑星とはこの岩石塊のことで、軌道が分かっているものだけで数万個あります。地球軌道のすぐ近くに接近するものもあり、近地球型小惑星などと呼ばれます。時々、地球に衝突する!と世間を騒がします。

 小惑星サンプルリターンは、宇宙の「ゴミ拾い」ではありません。石拾いには違いありませんが、惑星科学者にとっては貴重なタイムカプセル探しなのです。今から45.6億年前に太陽系形成が始まり、ちりが合体して大きくなり、惑星ができました。その途中、太陽系の進化のメインストリームから外れてしまった破片は、その時代の情報をとどめたまま、小惑星として現在に至ったのです。逆に、小惑星を詳しく調べれば、太陽系の初期史の知見が得られるのです。

 「はやぶさ」が目指す小惑星は「ITOKAWA(いとかわ=ロケット博士の糸川先生にちなんで命名)」という近地球型小惑星です。直径数100メートルのS型と呼ばれる岩石質です。探査機が到着したら、先ずリモートセンシングで表面の地形の観察、元素や鉱物の調査を行い、小惑星の全体的な特徴を調べ、ここぞと思う場所を決めます。そこを狙って隼のように降下、試料を採取し、地球に持ち帰ってくるのです。その日を待ち遠しく思います。

http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/hayabusa/index.shtml

(岡田達明、おかだ・たつあき)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※