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  • 観測ロケット実験

NEI

インピーダンスプローブ
(Number density measurement of Electron by Impedance probe; NEI)

目的
 電離圏プラズマ中に展開した1.2mのプローブに広帯域信号を印加して、電気容量が極小となる周波数を計測することで、電子数密度を数%の精度で導出する。スポラディックE層を通過するロケットの軌跡に沿って電子数密度を計測することによって、スポラディックE層の発生高度、密度構造を明らかにすることを目的とする。

特徴
 高度幅が薄いスポラディックE層を観測対象とすることから、従来の観測ロケットに搭載されてきたNEIの計測時間分解能を向上させて、高度分解能60mの密度計測を目指す。さらに、今回の実験では、プローブに周波数を順次変更しながら正弦波信号を印加する従来の方式に加えて、広帯域の白色雑音を一度に印加する新方式の計測機能を追加している。従来方式だと今回実験の分解能がほぼ限界だが、今回の実験で、新方式でも電離圏プラズマを支障なく観測できることが確かめられれば、将来の実験では新方式を本格導入して、さらに大幅な分解能向上を図っていくことも可能となる。

仕様
 センサー部(NEI-S)及び電子回路部(NEI-E)とそれらを接続するケーブルから構成される。NEI-Sの本体は、Be-Cu合金製のリボンで、ずらしながら巻いて長さ1.2m、半径1cm程度の円筒状にした上で熱処理を加えて形状を記憶させている。このリボンを巻きなおして奥行6cmの筐体内に収納する。筐体には蓋が取り付けられて、地上試験や打ち上げ時にはリボンは収納形態を保っているが、所定高度でロケットのノーズコーンが開いたあと、蓋が切り離され,筐体内のリボンが解放されて1.2mの円筒状の形状に戻り、電離圏プラズマ中に展開される。NEI-Sは接続ケーブルを経由してNEI-E内のコンデンサブリッジ回路に接続されており、プラズマ中に展開したNEI-Sの電気容量を精密に計測することができる。プラズマ中に展開したプローブは誘電体を挟んだコンデンサと見なすことができるが、プラズマの誘電率は周波数特性を持っており、誘電率極小となる周波数から電子数密度を導出することができる。コンデンサブリッジ回路には0.1~20MHzの範囲で、正弦波信号もしくは白色雑音を印加するので、導出される電子数密度の範囲は109~4×1012m-3程度である。信号印加の時間間隔は62.5ミリ秒なので、観測ロケットが約1km/sで飛翔するとして、高度分解能は約60mと見込まれる。

NEI

◆質量:約1.2kg (NEI-E), 0.2kg (NEI-S)
◆大きさ:W140mm D140mm H50mm (NEI-E),W50mm D96mm H28mm (NEI-S・収納時)



NEI班

 本測定器の開発・製造・較正は東北大学に所属する研究者・学生およびシステム計測株式会社により行われている。開発資金に関してはJSPS科研費JP23H01235(2023~2025年度)の助成を受けている。測定器開発にあたってはJAXA宇宙科学研究所のスペースチェンバー共同利用設備、宮城県産業技術総合センターの試験設備を利用している。