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COLUMN

“現場を経験する“ことの大切さ

東京大学大学院 修士課程1年 髙岡泰成

 宇宙科学人材育成プログラムにおいて、観測ロケットS-520-33号機の運用に参加させていただいた、東京大学工学系研究科化学システム工学専攻修士1年の髙岡泰成と申します。普段は新規燃料を用いた液体ロケットエンジンに関する研究を行っています。33号機の運用を通じて、ロケット班および気象班を兼任しました。今回は本研修で得た経験や学んだこと、感じたことをご紹介させていただきます。

 ロケット班では機体の運搬から開梱、組み立て、火工品・内部配線の設置、ランチャへの取り付けといった、一連の工程を間近で目にするとともに、いくつかの工程で実際に作業を行いました。自身の研究がロケットエンジンに関わるものですが、実機に触れたのは今回が初めてのことでした。ネジ一本の締め付け方からシステム全体に関わることまで、実際に目にしないと分からないことに対して理解が深まり、今後の研究生活に直結する知識・経験を得ることができました。気象班では気象予報士の資格を生かして、気象レーダーの監視および天気図の解析などの予報業務を主に行いました。予報業務自体が初めてであった上に、現地でのピンポイント予報はUSCの特殊な地形も相俟って、非常に困難なものでした。また、打ち上げGo/NoGoを決める打ち上げ判断会議にも参加し、全体の意見や状況を俯瞰し、判断する難しさやマネジメントにおける迅速かつ正しい決断を下す重要性を学びました。

 本研修全体を通じて、研究室内では目にできない現場のスケールや雰囲気に触れたことは大きな刺激になり、現場で経験を積むことの大切さを改めて痛感しました。ただし、本研修の認知が十分でないことは観測ロケット実験Gr全体の課題であると思います。宇宙研のみならず、学生の多くが外部と接触の少ない研究室内の決まったコミュニティ内で研究生活を送り、現場経験が乏しいという現状があります。学生時代に様々な分野の研究者、職員やメーカーの方々と同じ現場で議論し、実際に“モノ”に触れ、一つのプロジェクト全体を俯瞰できる機会はそう多くありません。このような素晴らしい機会を提供している本研修の認知度が低いことは非常に勿体ないことであると感じています。今後、経験者である私たちからも積極的に宣伝し、ますます多くの人材育成の場にしていく必要があると考えています。

 最後になりますが、本研修は幼いころより宇宙を志してきた私にとって、宇宙開発現場の最前線に参加するという意味でも非常に大きな一歩になりました。研修を通じてさまざまな知識や経験を教授していただき、質問に真摯に対応していただいた関係者の皆様に、この場をお借りして深く感謝申し上げます。今後のJAXA宇宙科学研究所観測ロケット実験Grの更なる発展を、切に願っております。

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