COLUMN
ロケット開発の現場から学ぶ
プロジェクト運営の要
東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻 修士1年
王 方成
今回の観測ロケット研修では、まず、噛み合わせ試験の見学を通じて、ロケット開発のプロセスを深く学びました。現場で実際に作業をされている方々から話を伺い、特に試験における注意点や現場のリアルな感覚を体感する貴重な機会を得ることができました。たとえば、観測ロケットの組み立てにはクリーンルームを必要としないことなど、実際の現場での思い込みを修正する多くの発見がありました。加えて、噛み合わせ試験中に発生した不具合への対応を間近で見学できたことで、複雑なシステムにおける問題解決のアプローチを学び、今後のプロジェクトに活かせる大きな収穫を得ました。
内之浦での研修では、様々な施設を見学する機会もありました。レーダー室や管制室、射場など、ロケット打ち上げに必要な施設を訪れ、準備の全体像を把握できたことは非常に有意義でした。特に、イプシロンロケットの射場の見学は印象的で、ロケットの実際のサイズ感や打ち上げのオペレーションを想像することで、ワクワクする経験を得ることができました。また、日本の宇宙開発におけるアナログとデジタルの混在が見られ、技術の進化を実感することができました。
さらに、内之浦での研修を通じて、宇宙開発と地域社会との関わりも学びました。地元の肝付町がロケット打ち上げを支援している背景や、地元住民との調整がいかに重要かを実感しました。町のサポートがあってこそ、宇宙開発がスムーズに進行できるという現実に触れることができたのは、大きな学びとなりました。
今回の研修では、様々な分野の学生が一同に集まり、夕食を共にするなど、互いに交流を深める機会も多くありました。こうした合宿形式の研修は、JAXA内でもそれほど頻繁に行われるわけではないため、学生間でのコミュニティ形成に大いに役立ちました。加えて、アメリカの宇宙産業と日本の宇宙産業との違いについても多くの話を聞くことができ、特にアメリカのスピード感や市場の大きさには驚かされました。この経験を通じて、将来的にはアメリカの宇宙開発現場も見てみたいという気持ちが強くなりました。
今回のロケット研修は、ロケット開発における技術的な側面だけでなく、それを支えるインフラや組織、そして地域社会との関わりまで、幅広い知見を得られる非常に貴重な機会でした。ロケットの打ち上げは中止となりましたが、その過程で得た経験や知識は、今後の自分のキャリアに大きな影響を与えるものだと確信しています。また、宇宙開発の現場に立ち会うことで、自分自身もこの分野に貢献したいという思いがさらに強まりました。