• jaxa
  • 観測ロケット実験

COLUMN

エンベロープを包含する

総合研究大学院大学 先端学術院 先端学術専攻 宇宙科学コース 博士課程1年
石戸 大智

 「エンベロープを包含する」。この言葉は、管制班の方からお聞きした言葉である。「エンベロープを包含する」とは、何に対しても「余白」を持たせるという意味である。例えば、この考え方は噛み合わせ試験に直に反映されている。最初私が噛み合わせ試験を見学している時、フライト品に対して様々な振動試験などで負荷を与えている様子を目の当たりにした。その時、ふと「こんなに負荷を与えていては、フライト品が劣化するのではないか」と疑問を持った。試験でのダメージによって本番で壊れることがあるのなら元も子もないのでは、と思ってしまった。

 そこで管制班の方に質問したところ、返ってきた返答は「こんな試験で本番に壊れるようになる設計ではそもそも論外である」ということである。つまり、フライト品は本番だけに耐える性能では不十分であり、試験も含めた余剰分の耐久性を持つ設計としなければいけないということである。これを「エンベロープを包含する」という設計思想であるということを教えて頂いた。更には、試験日程や打ち上げ日程自体にもバッファの日が含まれており、余分を持たせる発想がスケジュールにも反映されていることが分かった。

 このように、全ての工程に想定プラスアルファを持たせて行動する、つまり余白を持たせる「エンベロープを包含する」という考え方が根底にある。この考え方は、実機の開発や研究では特に必要であると考える。これからプロジェクトなどに関わる上で、「エンベロープを包含する」ことを念頭に入れ、取り組んでいきたい。

 今回の研修で、現場を見るまでイメージが180度異なっていたこと、想像の遥か上のレベルであったことなどに驚くばかりであった。特に内之浦宇宙観測所は初めて行く場所で、見るものすべてにワクワクしたことは忘れられない思い出にもなった。それと同時に所内を見学していて、設備の老朽化が目立つ場面があった。信頼のあるものを使い続けることは重要である。しかし、ハードウェアには限界が存在するため、どのようにシームレスに更新していくかが課題であると感じた。

 研修という立場だからこそ、見学させていただける、教えていただけることが多かった。この学びの環境に感謝しつつ、今後も学生という立場を最大限生かした学びをしていきたい。

 今回残念ながら日向灘沖地震の影響で打ち上げ延期、そして研修中止となってしまい、ロケットの打ち上げの緊張感、飛翔するロケットの迫力を見られなかったことは残念である。機会があれば、もう一度打ち上げに参加させて頂き、ロケットを最後まで見届ける経験を得たい。

PUBLIC