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COLUMN

観測ロケットの運用現場を肌で感じて

東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 修士1年
浜野 英憲

 JAXA 宇宙科学研究所の宇宙科学人材育成プログラムにおいて、観測ロケットS-520-34号機の運用研修に参加させていただいた、東京大学の浜野英憲と申します。直前に発生した地震の影響で打ち上げを経験することは叶いませんでしたが、噛み合わせ試験からフライトオペレーションまでの3週間、現場での貴重な経験をしてきました。今回はその中で得た学びや感じたことを紹介したいと思います。

 ロケットのフライトオペレーションと聞くと、多くの人は機体本体に目を向けると思います。しかし今回の研修では関係する様々な班を回ることで、裏で多くの班がミッション成功のために動いていることを肌で感じることができました。例えば射場から4kmほど離れた宮原地区では、レーダー班、テレメトリ班が打ち上げを支えています。これらの班はデータのダウンリンクに必要不可欠なものである、レーダーを用いたロケットの補足を行う班です。特にロケットの初期捕捉はデータ受信の可否にも関わる最重要事項なのですが、この捕捉はベテランの方が手動で行っていると聞きました。当日の緊張感やその中でも確実に成功しているという話を伺う中で、現場の方々のプロ意識の高さを強く感じました。

 また、今回のフライトオペレーション中には、打上予定日の3日前に日向灘を震源とするM7.1の地震が発生しました。そして直後に、打上のGO/NOGOを含む今後の対応を決定する全体会議が行われました。その中で、班内の重要共有事項のみを簡潔に伝えていた各チーフの方々、そして各班状況や地元自治体との調整、余震状況などの全体状況を見て的確な判断を下した羽生先生の姿を見て、チームリーダーには客観的に状況を俯瞰する視点が重要だと改めて感じました。そして不測な事態が起こっても適切な対応を取れるよう、日頃からチームのマネジメントをしっかり行うことの大切さを強く実感しました。

 打上当日の緊張感や達成感を味わうことができなかったことが残念ではありますが、今回のような不測の事態に対する対処法を目の当たりにしたことは、今後自分が携わるプロジェクトの組織体系を見直す際の糧となったと思います。最後になりますが、お世話になりました観測ロケット実験グループの皆様に、この場をお借りして感謝申し上げます。今後の観測ロケット実験Grの更なるご発展を心から願っております。

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