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COLUMN

日本の宇宙先端プロジェクトの片鱗に触れて

総合研究大学院大学 博士前期課程1年
福王 悠星

 S-520-34号機ミッションにて宇宙科学人材育成プログラムの研修生として活動いたしました、総合研究大学院大学の福王悠星と申します。本稿において、研修期間中に得た刺激や知見、そして研修生として感じた課題について述べさせていただきます。

 まず私のバックグラウンドは電気電子工学で、ロケット関連の技術はほとんど知りませんでした。ただ、総合研究大学院大学の2024年前期に開講された「宇宙構造・材料工学特論」の受講をしていたことで、様々なロケットの構成要素を学ぶと同時に、その実物を直接見て学べたため、非常に実りのある研修となりました。特にマルマンバンドなどの特殊なコンポーネントや重心の偏りなどが無いようにするためのVG試験等、その必要性を座学だけでなく実体験できたことは非常に価値があると考えています。

 また、研修を通じて、観測ロケットのプロジェクトは長年にわたり、複数団体(JAXAをはじめとした企業、大学)が相互に同等の立場でフィードバックを繰り返すことで、シームレスにレッスンズ・ラーンドがより良く蓄積されてきたのだと強く感じました。特に私が参加した日程である噛み合わせ試験とフライトオペレーションは、観測ロケットのプロジェクトとしては最終版であり、これまでに既に何度も、多くの机上での調整や試験がされてきて、そのレッスンズ・ラーンドも反映されたうえであったことが、さまざまな実験時の作業工程の説明が少なくともミスなく息の合った流れに見えました。内之浦宇宙空間観測所においてもレーダー班のオペレーションやロケットの移動なども、まだまだ人力に頼る部分が多く、プロジェクトの参加者一人一人が各々の作業のプロフェッショナルであるということを間近で感じることができました。またそれと同時に、こういったプロジェクトに一定期間の参加をしなければ、このようなクローズドかつ重要な先端宇宙プロジェクトの持続性は厳しく、それが新規団体の参入する時の難しさとも感じました。

 最後になりますが、本研修では多くのことを学び、非常に貴重な経験をさせていただきました。お世話になりました観測ロケット実験グループの皆様、この場をお借りして感謝申し上げます。34号機の打ち上げに最後まで関われなかったことは非常に残念ですが、プロジェクトの成功を心から願っております。

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