チャンスが一度きりの試験から
学んだこと感じたこと

東京理科大学　修士課程1年　篭島智実

 私は、観測ロケットS-520-33号機に搭載されたRATS-Lの打ち上げ前の確認試験、準備、実際の打ち上げに参加させて頂きました。

 RATS-Lは、観測ロケットを用いた次世代型の大気圏投入システムの実証機で、大気圏突入前に柔軟構造のエアロシェルに空気を入れ、軽量かつ大面積の膜面を形成することで、高高度からの減速が可能となり、大気圏突入時に経験する空力加熱を和らげることが出来ます。大気圏突入後はそのまま減速し、海へ着水します。エアロシェルが浮き輪の役目を果たすため、着水したRATS-Lは海上に浮かび、それを船で回収するまでが今回の試験の一連の流れとなっておりました。

 私がRATS-Lに関わらせて頂いて、初めてあった大きな試験が嚙合せ事前試験でした。観測ロケットの打ち上げに関わる皆様とそこで初めてお会いし、その皆様が真剣に試験に臨んでいる姿を目の当たりし、皆様が1回切りの試験に沢山の熱意と労力と思いを込めて参加しているのだと感じ、それからの作業に更に熱が入りました。

 準備や確認試験を進めていく中で、少しでも懸念点があれば、一度組み立てた試験機を分解し、問題点を解消してから、組み立て直し、また試験を行い、丁寧に準備を進めていました。また、試験は想像以上に沢山の確認事項があり、沢山の時間をかけて行ってきました。その中で、普段行っている実験とは違い、1回切りのチャンスの中で試験を行う難しさと大変さを学ぶことが出来ました。

 打ち上げ本番は、試験機への電源を入れる係を任せて頂いていたため、成功を祈り、「行ってらっしゃい、無事に帰って来てね」と心の中で良いながら、電源を入れました。打ち上げ後、RATS-Lからの情報が届き、無事に展開して大気圏を突入し、地球に向かって下りてきていることを知ったときは一安心しました。海上での回収は次の日の明け方に行われ、それまで緊張は続いていましたが、RATS-Lが無事に私たちのところに戻って来てくれたことを知ったときはとても嬉しかったです。これ程までの感動を覚えたのは、普段行っている実験とは違い、一回しかチャンスが無い試験だからこそ、その1回に沢山の時間と思いをかけてきたためだと思います。

 この試験を通して、一度きりのチャンスしかない試験の難しさと、だからこそ得られる達成感があることを学びました。RATS-Lのメンバーの皆様を初めとして、観測ロケットS-520-33号機に関わられた皆様には、沢山のことを教えて頂き、そして沢山の場面で支え、助けて頂きました。皆様のご助力があったからこそ経験できた素敵な体験でした。ありがとうございました。