COLUMN
装置間,そして組織間の
インターフェース・インテグレーション
名古屋大学 特任助教 伊東山登
デトネーションエンジンシステム(DES)の宇宙動作実証を目的とした観測ロケットS-520-31号機ミッションに参加させていただきました,名古屋大学未来材料・システム研究所 特任助教 伊東山と申します。2020年4月着任後から,本ミッション全体を通して主にインターフェース・インテグレーション,打ち合わせオペ中はタスクコンダクター(TC)を担当致しました.今回は,この2年間の連続したイベントの中で,私なりに経験し感じたことをご紹介させていただきます.
・DES実験に関する内容をベースに実際に観測ロケットを使用した事で感じたことや困ったこと
大学レベルの試験と本ミッションの大きな違いは,ミッション機器をロケットに載せて実験をするため、装置を作り込んでいく所謂インテグレーション工程やそもそもの実験実施において様々な調整相手が存在することでした.例えば本ミッションでは,我々はRDE動作時の様子をリアルタイムに観察するため,アナログカメラ信号のテレメータダウンリンクを希望しました.レーダ班の皆様との綿密な調整,そしてインターフェースの十分な理解の末,装置のインテグレーションに至った経緯があります.噛み合わせ試験や射場での打ち上げオペでも同様です.作業者は我々だけでなく,他の方々もいらっしゃいます.その時その場所でどのようなことが行われるか,当方と相手方のインターフェース部がどこなのか,情報をきちんと理解・整理した上で,こちらの作業計画が十分であるかを判断しないといけませんでした.作業ウインドウが明確に決まっている状況において現場判断でこれらをこなすのはほぼ不可能であり,事前の計画や調整が欠かせませんでした.射場オペでは作業計画管理として,事前に作業手順書を作成し,これらを用いた作業従事の徹底および記入済みの作業手順書を集約することで作業進捗の管理を行いました.結果,ほぼ想定通りの作業計画でオペを終えることに至っています.
・今後観測ロケット実験を考えている研究者様と観測ロケット実験Grメンバーの課題となるような事
何よりも重要なことは組織におけるカウンターパートを明確化し,組織内だけでなく組織間の情報伝達に垣根をなくすことだと思います.これは言うなれば「組織のインテグレーション」活動の一つです.我々はこのレベルに達するまでに随分と回り道をしてしまったと,本プロジェクトを終えてのLessons Learnedの一つとして猛省しています.同時に,観測ロケットという容易ではない道のりを駆け抜けるためには,各組織の目線・足並みを揃える努力を欠かさないだろうと感じています.そのためには積極的であることはもちろん,こちらの考えを理解してもらえる交流が必要なはずです.これらを達成した暁には,屈強な「組織間のインターフェース」が構築できるのではないでしょうか.
最後になりますが,本プロジェクト成果は多岐にわたる方々のご支援により達成されたものであります。本コラムの締めとして,この場を借りて感謝申し上げます.また,今後のJAXA宇宙科学研究所の観測ロケット実験の更なるご発展を切に願っております.