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COLUMN

これまでにない大きな規模での
フライト試験の経験

名古屋大学 修士課程1年 飯田怜央

 観測ロケットS-520-33号機実験でRATS-L班として打ち上げに参加させていただきました、名古屋大学の飯田怜央と申します。RATS-Lは観測ロケット実験におけるデータ回収システムであり、2021年にS-520-31号機で打ち上げられた展開型柔軟エアロシェルを有した大気圏突入技術を用いた初の実用機であるRATS(Reentry and recovery module with deployable Aeroshell technology for Sounding rocket experiment)をベースに大型化した機体です。このRATS-Lプロジェクトを通して感じたことを2つ書きます。

 1つ目は学生ロケットとの違いです。私は大学のサークル活動で全長2m弱程度のハイブリッドロケットの開発・打ち上げを行っていました。学生ロケットではロケットの打ち上げで達成したいサクセスクライテリアを定めて、ロケットの製作・運用を複数の班に分類し、その達成に向けてロケットの開発を行っていきます。観測ロケット実験でも大まかには同様の進め方でしたが、違う部分もあると感じました。それは運営側とPI側の境界線の位置です。学生ロケットでは射場が運営側の担当で、それ以外のロケット本体やGSE、ペイロードまでは全てPI側の担当というイメージですが、観測ロケット実験では射場とロケット本体、GSEまで運営側の担当で、ペイロードがPI側の担当であるという印象でした。これは、学生ロケットはロケットを打ち上げること自体が大きな意味を持つのに対し、観測ロケット実験ではロケットを打ち上げることまでは準備段階で、打ち上げた後のミッションが重要であるためだと考えています。この特徴から、観測ロケット実験は言わずもがな非常にハイレベルであり、宇宙空間での実験を安心して行うのに適している反面、組織の規模も影響して、学生ロケットよりロケット班とPI班の繋がりが薄いように感じました。組織が大きくなるほどコミュニケーションは難しくなると思うので、その解消のための努力とシステムづくりが大切であると思いました。

 2つ目はRATS-2の開発・運用に向けたよい経験ができたということです。RATS-2はS-520-31号機で打ち上げられたRATSをベースに改良を加えた同サイズの機体であり、S-520-34号機に搭載される予定です。私の所属する名古屋大学推進エネルギーシステム工学研究グループでは来年度S-520-34号機を用いた打ち上げ実験を計画しており、その実験データの回収のためにRATS-2が搭載されます。RATS-Lプロジェクトには途中からの参加ということもあり不慣れな部分が多かったですが、RATS-2にはキックオフから参加しています。S-520-33号機の打ち上げ実験を通して、開発から運用までの流れを経験することができたので、この経験をRATS-2に存分に生かしていきたいと考えています。

 最後になりましたが、本実験での大変貴重な機会を与えていただきました先生方、 RATS-L班の皆様、観測ロケットグループの皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

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