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COLUMN

些細なことこそ大切に

-センサー配置と作業記録-

名古屋大学 航空宇宙工学専攻助教 渡部広吾輝

 デトネーションエンジンシステム(DES)の宇宙飛行実証試験において,加速度・姿勢センサーによる運動解析,映像・写真記録を担当しました名古屋大学工学研究科航空宇宙工学専攻助教の渡部広吾輝と申します.2020年4月より約2年間本プロジェクトに携わらせて頂きました.私がプロジェクトを通じて,特にお伝えしたいことは以下の2点です.

●加速度・姿勢センサーの配置の重要性

 今回の飛行実験では,回転デトネーションエンジン(RDE)およびパルスデトネーションエンジン(PDE)の作動時の加速度および角速度を,加速度・姿勢センサーを用いて計測しました.この際に,RDEの推進性能(推力と推力軸まわりトルク)を計測するためには,RDEの推力軸周りの重心位置における加速度および角速度,PDEの推進性能を計測するには機体軸周りの角速度が必要となります.しかし,加速度・姿勢センサーのセンサー軸と頭胴部の座標軸を完全に一致させることは困難であり,また,加速度・姿勢センサーによって得られた出力を必要となる座標系の値へと変換する必要があります.
 加速度・姿勢センサー軸と機体軸とを一致させ,他の座標も 90 度回転させれば一致する,シンプルなセンサー配置がとても大切でした(松山特任教授が設計).このお陰で加速度・姿勢センサーの出力結果の座標変換が非常に容易となりました.姿勢センサーから出力された加速度を重心位置における加速度へ変換する際に,頭胴部の重心位置から姿勢センサーの位置へのオフセット情報を用います.姿勢センサー軸と機体軸を一致させることで,オフセット情報への要求精度を格段に下げることができました.

●ビデオカメラと一眼レフカメラを作業記録として活用

 プロジェクトでは,読み取った計測値や配線などを,後から確認する機会が多数ありました.そこで活躍したのが固定したビデオカメラ3台と,一眼レフカメラ2台です.これらを用いて,作業工程を多くの視点から記録し,作業状態確認を行いました.この方法は大変有効でした.もちろん,ドキュメントの作業記録も大変重要であることは間違いありません.しかし,映像・写真記録も作業状況記録として信頼でき,フル活用することでプロジェクトの要所をしめることができるのです.
 最後に,数多くの方々のサポートを頂きながら,本プロジェクトの成功に貢献することができました.関係者の方々に心より御礼申し上げます.また,今後のJAXA宇宙科学研究所の観測ロケット実験の更なるご発展を切に願っております.

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