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COLUMN

一度きりの打上げまでの長い道のり

総合研究大学院大学 先端学術院 宇宙科学コース 博士後期課程1年
相羽 祇亮

 観測ロケットS-520-34号機の噛合せ試験およびフライトオペレーションに参加するというとても貴重な体験をさせていただきました。実験グループの皆様には作業のようすを間近で見学させていただいただけではなく、いろいろな説明をしてくださったり、作業の合間などに質問に答えてくださったりして、多くのことを学ぶことができました。

 最も印象的だったのは、タイマテストなどの確認作業の多さです。これは、組付け作業や各種試験などの前後に、実際の打上げと同じタイムシーケンスで機器を動作させるものです。仮に組付けの不具合があった場合や試験に耐久できずに故障してしまった機器があった場合でも、打上げまでの各段階でタイマテストを行うことによって、不具合や故障にいち早く気付いてその原因を特定することが可能になります。

 私は、それに加えて、タイマテストを繰り返すことは打上げの予行演習という意味でもとても重要だと観じました。打上げに携わる各班がフライトの直前やその最中に管制班とどのようなやり取りをして、どのテレメトリ項目に注目すればいいのかなどを繰り返し確認することで、打上げでのミスが起こる可能性を最小化することができると思いました。これまではロケットの打上げに対して一発勝負のようなイメージを持っていましたが、何度も練習を繰り返した先にある本番というイメージに変わりました。もちろん、推進薬に点火して宇宙空間を飛翔するのは打上げの一度きりですので、今回のプログラムでは見ることが叶わなかった打上げの瞬間もいつか見てみたいと思います。

 今回の実験で搭載される機器はデトネーションエンジンシステムの宇宙実証を行うものです。デトネーションエンジンは観測ロケットのような化学推進と私の研究分野である電気推進の中間に位置するような先進的な推進システムです。この分野で研究を続けていれば、自分が新しい推進システムの技術実証を提案する立場になることがあるかも知れません。その場合に観測ロケットという選択肢があることをリアルな体験とともに知ることができてよかったと思います。

 観測ロケット実験がもっと活発化していくためには、打上げの頻度を高めていくという手段が考えられると思います。もし、1機の打上げに必要な準備期間の短縮やそれに携わる人数の削減によってコストが下がって、その替わりにより多くの実験を実施できるようになるのであれば、その可能性を検討する余地はあるのではないかと感じました。

 今回のプログラムでお世話になったすべての方々に深く感謝して参加報告とします。

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