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黒体輻射の例

黒体輻射は宇宙のいたるところで観測されるが、最も普遍的なのが 宇宙背景輻射 (Cosmic Microwave Background Radiation; CMBR)である。 これは、ビッグバンから数十万年後、宇宙が約3000 Kの黒体輻射に満ちていたときの光が、 宇宙が1000倍膨張した結果、温度(エネルギー)が1/1000に下がった(赤方偏移)ものである。 NASAのCOBE衛星はその温度を正確に$2.725\pm0.002 $ Kと測定した。COBE衛星の業績により、 MatherとSmootの2人は2006年のノーベル物理学賞を受賞している[*]。 さらに、CMBRの微少な空間的ゆらぎを測定することにより、宇宙膨張のパラメーターに制限が つき、宇宙の年齢を知ることができる。 WMAP衛星の測定によって、それは137億年と求められている。

Figure: COBE衛星が測定したCMBRのスペクトル。四角が測定点、実線は2.735 Kの黒体輻射。 Matehr et al. 1990, Astrophysical Journal, 354, L37より。後に検出装置の較正が進み、 最終的にCOBEチームが1999年に発表したCMBRの温度は$2.725\pm0.002 $ Kである。横軸の単位が 波数(=波長の逆数=振動数/光速)であること、横軸、縦軸ともに線型表示であることに注意。 同じ2.725 Kの黒体輻射のスペクトルを対数表示したのが下の図である。黒体輻射に限ったことではないが、 スペクトルの表示の仕方によって、見た目の印象は大部違ってくる。
\begin{figure}\centerline{
\epsfig{file=CMBR.eps,width=10cm,angle=0}
}
\end{figure}

\begin{figure}\centerline{
\epsfig{file=planck2.725.ps,width=6cm,angle=270}
}
\end{figure}



Ken EBISAWA 2011-05-30