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黒体輻射のスペクトルと波長、振動数、エネルギーの関係

黒体輻射のスペクトル、(256)を振動数の関数としてプロットしたのが下図である (横軸、縦軸ともに対数表示であることに注意)。 光の波長$\lambda$と振動数$\nu$のあいだには光速$c$を通じて、
\begin{displaymath}
c = \lambda \nu
\end{displaymath} (257)

という関係があることを思いだそう。また、光子のエネルギー$E$はプランク定数$h$を使って、
\begin{displaymath}
E = h \nu = h \lambda/c
\end{displaymath} (258)

である。電磁波の波長の長いほうから短いほうに向って、電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線である。 それらの境界は必ずしもはっきりと定義されているわけではない[*]

天体のエネルギースペクトルを表わすとき、横軸を波長 (単位はÅ, $\mu$mなど)、振動数 (Hz)、エネルギー (eV)のそれぞれで表す場合があるから 注意しよう。プランク定数 $h = 6.626 \times 10^{-27} $ erg/s, 光速 $c=2.9978 \times 10^{10}$ cm/s、 エネルギーの換算式 1 eV = $ 1.602 \times 10^{-12}$ ergを使って、

\begin{displaymath}
1 \; [{\rm Hz}]
\leftrightarrow 4.1357 \times 10^{-15} \; [...
...V}]
\leftrightarrow 3.3356 \times 10^{-11} \; [{\rm cm^{-1}}]
\end{displaymath}

である。「理科年表」にこれ以外の単位も含めた詳細なエネルギー換算表があるから、それを手元に置いておくと便利。

また、ボルツマン定数 $k = 1.38 \times 10^{-16}$ erg/Kを用いて、1 eV $\approx$ 11600 Kであるから、 物質(天体)の温度を表すのに、[K]で表すかわりに [eV]また[keV]で表してもよい。 そうすると、温度 $kT$ [eV]を持つ天体からの黒体輻射のピークはほぼ $h\nu \approx kT$ [eV]にくることがわかる[*]。 実際、黒体輻射では物質と輻射(光子)が平衡状態にあるので、物質の温度に対応したエネルギーの 光子が最も多く放出されるのは自明である。たとえば、$\sim$ keV (数千万度) の温度を持つ中性子星表面やブラックホール 周辺の降着円盤からの黒体輻射は、$\sim$ keVのX線でもっとも明るく観測される。



Ken EBISAWA 2011-05-30