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No.251 |
第4章 粒子加速と宇宙ジェット
ISASニュース 2002.2 No.251 |
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■宇宙の巨大な加速器「ジェット」とブレーザー天体ブレーザーと呼ばれる天体は「ぎんが」衛星の時代から謎につつまれていました。X線で明るいものが多く,また,非常に速い時間変動を起こすことが特徴です。たとえば3億光年離れたMrk 421という天体では,「あすか」で観測した時に,わずか半日の間に倍以上の強度変動を示しました。こうした天体の多くが,10億電子ボルトとか1兆電子ボルトというような,X線光子の100万倍から10億倍のエネルギーを持つガンマ線の領域でも明るく輝いていることが,「あすか」と同時期に軌道上にあったガンマ線観測衛星「コンプトン(CGRO)」や,地上のチェレンコフ望遠鏡によって発見されました。こうした高いエネルギーの光子は,いったいどこでどのように作られるのでしょうか。宇宙にちらばる銀河の中には,その中心部が異常に明るく,せいぜい太陽系程度の大きさの中心から,銀河全体の数百倍から数千倍ものエネルギーを放出しているものが数多く存在します。これらは活動銀河核とよばれています(『活動銀河核』参照)。活動銀河核からは数十万光年におよぶようなジェットが吹き出ていることがあります(図42)。ジェットは,銀河の中心に潜む巨大ブラックホールと密接な関係があると考えられていますが,こうしたジェットがどのようにしてでき,その中で一体何がおこっているのかはまだ明らかになってはいません。天文学の大きな課題の一つです。
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図42:はくちょう座Aからのジェット。(電波による観測,NRAO提供)
![]() 図43:1998年に,「あすか」を中心にして,国際的なキャンペーンを行ったときに観測した,ブレーザー天体Mrk 421の一週間にわたる光度曲線。毎日のように激しく変動している様子がわかります。 ブレーザーを「あすか」で観測することで,これまで知られていなかった「宇宙の巨大な加速器=ジェット」のことがたくさん明らかになりました。それは,「あすか」がそれまでの衛星に比べて,大きな面積をもち,とても感度がよかったからです。同時に,X線とガンマ線など他の波長と共同で観測を行うことではじめてわかったことも多くあります。これは,激しく躍動する宇宙で何が起こっているかを探り,それを物理的に説明するためには,できるだけ幅の広い観測を行うことの大切さを示しています。 (高橋忠幸) |
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