No.201
1997.12


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SS-520-1号機噛合せ試験

 SS-520型ロケットは,S-520型ロケットのブースターに新規開発の第2段モータを追加したもので,高度1,000km以上まで観測機器を打ち上げる事を目的として開発された。SS-520-1号機はその初号機であり,工学実験としてロケットシステムの飛翔性能を計測すると同時に,将来の小型衛星打上げの基礎技術としての姿勢制御実験をS-520-18号機で実績のあるラムライン制御則に則って実施する。又,科学実験としては,新規開発中のリモートセンシング技術を用いてジオコロナ(水素原子),プラズマ圏(ヘリウムイオン)及び放射線帯の観測を行う。
 本機の噛合せ試験は,1997年11月25日から4週間弱の予定で実施された。2段目モータは直接KSCへ搬入されるため,噛合せの内容はラムライン制御部の噛合せ(10月23日〜10月30日の間前もって実施)を除けば通常のS-520型ロケットの噛合せと変わらない。但し今期はS-310-27,S-520-22と合せて3機の噛合せ試験がシリーズに計画されていたため,不具合/調整事項の発生が,それぞれ他機の試験スケジュールに影響を及ぼす事になり,ロケット班を始め関係各位にスケジュール調整の点で多大な御苦労をいただいた。
 本機の打上げを成功裏に実施し,北極域で計画されている2号機の打上げに是非繋げたいと考えている。

(中島 俊)

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S-310-27号機の噛み合わせ終了

 1998年1月下旬に打上げを予定しているオゾンキャンペーンロケット,S-310-27号機は11月25日〜12月4日に搭載機器の机上でのチェック,頭胴部の組み込み,及び打上げの振動,衝撃を模擬するG,Vテストを行った後,ロケットスピン時のセンサー展開を確認するスピンタイマー試験を12月5日に終えた。これで相模原でのロケット実験前の一連の試験を終了した。
 S-310-27号機は相模原での試験後,機器を取り外すこと無く,そのまま鹿児島観測所へ送る,いわゆる‘封印式ロケット’にすることになっていたので,各観測機器は事前に細心のチェックを行って,本番の噛合せに臨んだ。しかし,いざすべての機器を組み込んでシステム全体としての試験を始めると,個々のチェックでは生じなかった問題点が浮かび上がる。今回は可視分光計をオンすると赤外分光計の出力チャンネルに約10Hzの雑音( noise )が現われた。この機器間の干渉( interference )は,赤外分光計を計器取付け板より浮かしてテレメータのアースと計測器のアースを切り離すことで解決した。事前にこの分光計に振動緩和用のゴム板を敷いてあったのが幸いして比較的容易に対策ができたが,それでも原因究明に多くの時間を割いたので,今後ノーズフェアリング( nose fairing )を noise ( Inter- )feringとでも呼びたいくらいである。

(小山孝一郎)

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第17回IACG会議

 1997年のIACGは12月の9日から11日までの3日間モスクワで開催された。真冬のモスクワということで,やや緊張して冬支度を整えて出発したが,会場・宿舎に当てられた市内のルネッサンスホテルは設備の整った近代的なホテルで,おおぎょうな冬支度は荷物を重くするだけの役目を果たしたに過ぎなかった。
 会議にはIACG参加機関であるNASA,ESA,ISAS及び地元のIKIから約50名が参加した。日本からも所長を始め10名近くが参加した。今年のIACG会議で際立った印象を与えたのは,Pathfinder の成功や Origins 計画を軸とした将来構想の実現に自信を得,勢いを盛り返した米国の姿であった。日本も「はるか」の成功や進行中の計画で安定した成長の印象を参加者に与えたと考えられる。ヨーロッパはSOHOのすばらしい成果を示し,米国とは一味違った奥の深さを覗かせた。ただ,現在,長期計画の見直し中であり,本当の姿を見せるのは次回のIACGあたりからではないかと思われる。ロシアは依然として続いている不安定な政治・経済情勢に苦しんでいて長期展望を打ち出しにくい状況が続いているようであった。
 ハレー彗星探査の後,IACGの中心課題はしばらく磁気圏や太陽風といった太陽地球系科学に設定されていたが,次の中心課題を太陽系探査に移すことが昨年のIACGで決まっていた。今年はこの方針を受けてワーキンググループおよびパネルの見直しが行われた。その結果,

 WG-1   太陽系探査   Pilcher , Tsuruda (副) 
 (WG-1   火星探査企画サブグループ   Lynkin ) 
 WG-2   太陽地球系科学   Zeleny 
 WG-3   データ   Bredecamp 
 WG-4   地上系   Elwood 

 Panel1   高エネルギー天文   Bunner 
 Panel2   赤外・サブミリ波   Okuda , Thronson (副) 
 Panel3   宇宙電波VLBI   Smith , Slysh (副) 

が作られた。一部メンバーが未だ確定していないところがあり各機関からの推薦により後日定められることになっている。
 WG-1は太陽系探査であるが主な探査目標は火星,月,および小天体探査である。日本はPLANET-B,LUNAR-A,MUSES-C,及び Selene でこのいずれの対象にも大きなコミットメントをしようとしている。IACGの中での責任も更に重くなることが考えられる。WG-1の中に作られたサブグループは,特に火星について活発な調整,情報交換を必要とするとの判断から設けられたものである。従来から太陽物理のグループには独立のワーキンググループを持ちたいとの希望が強かったが今年もその希望は入れられずWG-2の活動の中に含まれることになった。WG-4の提案はやや唐突に出された感があったが,コマンド方式,データ形式等地上系のコンパティビリティを増すことを目的として提案され可決された。宇宙研の地上系の運営に何らかの影響が出ることがやや懸念される。昨年は難航して実現しなかった Panel3は今年はすんなりと認められた。「はるか」の実現が昨年とは別の力学を作り出したようである。
 先にも延べたように3日間の議論を通して一番印象に残るのはやはり世界のリーダーとしての「強いアメリカの復権」である。今回の米国勢の発表は自信に満ちていた。この背景には数年をかけて練り上げてきた Origins 計画に代表される長期戦略が実行段階にはいったことであろう。第1級の科学目標を掲げ,その実現に向けてNASAという大組織の体質改善に踏みきった自信,往時に比べて減少したとは言え日本の全宇宙予算の半分に相当する科学予算,軍事技術の転用,小型高機能を旗印にした新技術開発体制の整備がその背景にある。この自信はやがて世界の宇宙科学をその中に巻き込む大きな流れになるかもしれない。これまで相対的に独立した形で進められてきた日本の宇宙開発も大きな影響を受けることになるだろう。日本の戦略が問われる時期が近いと感じさせられた3日間であった。

(鶴田浩一郎)

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宇宙科学将来計画検討会

 モスクワでのIACGの翌週の12月17日と18日の2日間,月・惑星探査将来計画ワーキンググループと天文衛星小委員会の共催で上記検討会が行われた。ヨーロッパや米国の同種の会議に,私も含め何人かが招待されて参加してきた経緯もあり今回はIACG加盟機関から代表も招いて討議を「公開」でおこなった。当初一番問題となったのは言葉である。今回は同時通訳でこの問題を切り抜けた。これには事務部で選んでくれた優秀な通訳が有効に機能し,訪れた外国からのオブザーバーからも感謝された。会議の詳細は別の機会に譲りたいが,簡単に言うと,今後のミッションとしてどのような科学目的を設定するのか,その目標を実現するための技術開発をどうするかと言う事であった。当然,厳しい議論が行き交う場面もしばしばであった。外国のオブザーバーにとって日本人が厳しい意見の交換をするのを目の当たりにするのは初めてであったとおもえるが(通訳の効果が絶大であった)後で聞いたところ,「日本でもわれわれとまったく同じ問題設定で同じような議論をしてることがよく分かった」と言う事であった。

(鶴田浩一郎)

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技術発表会


 宇宙科学研究所技術職員による技術発表会が,1997年12月16日午前9時30分から17時まで本館入札会議室において所内外の聴講者を集め開催されました。今回が第4回目となる発表会で,口頭発表が8件,ビデオ上映が1件でした。発表者には質疑応答を含めそれぞれ30分の持ち時間が与えられました。それぞれの発表には5件以上の活発な質問が寄せられたこともあり多少時間超過の発表もありましたが,この経験が学会やシンポジウム発表時に生かされれば今回の発表会の開催目的に適います。発表会の内容を簡単に紹介すると,今までのロケット・衛星に搭載された観測機器などの開発・研究,これから打ち上げられる衛星技術の発表,ロケット打上げなどの現場の記録・保守点検活動や開発,いろいろな種類のカエルを使う宇宙生物実験の準備報告などでした。発表形態もコンピューターから直接投影する斬新な発表方法や講習会受講と実務を融合させた発表など大変有意義な発表会になりました。ビデオ上映は,今年打ち上げられたM-V型ロケット1号機の記録映像が上映されましたが,職員自らが撮影・編集しただけに現場の状況が直接感じられるものでした。この発表会を記録に残すため,3月には講演集も印刷されます。

(清水幸夫)


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