No.202
1998.1

ISASニュース 1998.1 No.202

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中国への旅

西村 純

 私が初めて中国を訪れたのは1977年,今から約20年前のことであった。丁度4人組が退散した直後で,これからは研究に力を注ごうと,若い研究者たちの熱気があふれていた。問われるままに,今後の研究の進め方について,意見を述べ,そのうちの幾つかが後に大きく実を結んだことは嬉しいことである。

 当時の30代の若者たちも今や50代となり,各方面の指導者として第一線で活躍している。これらの旧友から,また中国にこられませんかというお誘いがかねてよりあった。今年(1997年),神奈川大学を4月に停年になり,少し時間の余裕が出来たのを機会に,9月に一月間ばかりお伺いすることにした。この前,最後に訪問したのは,10年前のことである。その頃北京の道路は,人の波と自転車にあふれていた。

 北京に着いて驚いたことは,高速道路が整備され,あふれるばかりの車である。中心街は高層ビルが立ち並び,東京と同じく車の渋滞に悩んでいる。

 研究所の整備も10年前に比べると一新している。

 早速旧友があつまってパ−ティ−が開かれる。まずビールで乾杯。ついで老酒。普段日本で呑むのより上等なものらしく,楽しく騒いで会は盛りあがった。余程お酒好きと思われたらしく,会が終わると,お土産に甕に入った老酒をくださった。そのうち,宿で晩酌と思っていたが,毎晩旧友の集まりがあり,そのチャンスをつい失ってしまった。

 翌週,高エネルギ−研究所にお伺いした時,講義が終って,昼飯の時,『先生はこれでしたね』とまた老酒がでてきた。威勢よくのんでいるうちに酔いが回ったのか,『こちらでお休みください』とゲストハウスの一室に案内された。ちょっとまずいかなと思ったが,中国では昼飯の後は1時間くらい休息をとる習慣があるので,必ずしも呑み過ぎたせいばかりではない。  2,3日高エネルギ−研究所にお伺いしてお別れの挨拶をしていると,これをどうぞと頂いたのがまた『甕入りの老酒』であった。これで,かなり大きい重たい甕が二つ,宿の居室に並ぶことになった。

 それから,西安,南京,青島とまわって,甕を開く機会に恵まれず,とうとう帰国の日を迎えた。いまさら呑み干すことも不可能,持って帰るには重すぎる,荷物で預けて割れたらえらいことだなどと考えあぐね,結局最後に会った友達にお渡しすることにした。

 もっとも中国では,お酒を飲んでいただけではない。出かける前に,中国側から幾つかのテーマについて講演してくれという連絡があった。『ニュートリノ』から・・・,『Geotail』,『はるか』のアンテナの話までである。その内幾つかについては私の専門外なので断ったのだが,むこうも都合があるらしく,結局は全部引き受けることになってしまった。

 こんなわけで,出発前,何人かの先生に教えていただき,現在の宇宙研の成果と規模が数年前と比べて一段と大きく飛躍したことを改めて深く認識させられたことであった。それだけに,中にいる人達の忙しさはただ事ではあるまいと実感させられたことでもある。

 勉強するにあたって,一番役にたったのはISASニユ−スであった。一番大切なことを簡潔に分りやすく書いてあるからである。ISASニユ−スの効能はいろいろあるけれども,宇宙科学の解説書としても第一級である。英語であれば世界のベストセラ−になったかもしれない。(?)

 来年(1998年)も編集部の方々の益々のご活躍を期待してやまない。本来なら編集部の方々にお渡しすべきお酒はすべて中国においてきてしまったのだが。

(山形工科アカデミ−短期大学校長,元宇宙研所長 にしむら・じゅん)


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