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「すざく」試験観測データの一部を一般公開
X線天文衛星「すざく」による2006年4月からの国際公募観測に向けた観測提案の受付を11月17日に開始しました。これに合わせて,観測提案を準備する研究者のため,12月2日に初期観測データの一部を一般に公開しました(http://www.astro.isas.jaxa.jp/suzaku/)。これまでに「すざく」は,近傍の恒星や超新星残骸から,巨大ブラックホールがあると考えられる活動銀河核,銀河団(数百の銀河の大集団)まで,50を超える天体を観測しています。これらの中から「すざく」の観測能力を示す典型的な7つの観測の全データを,解析に必要なソフトウェアなどとともにWeb上に公開しています。
図は,その中の一つである銀河団Abell2052のX線像と,銀河団の中心付近の明るい部分を除いた周辺領域のX線スペクトルです。これまでの衛星に比べて,低表面輝度のX線放射や1キロ電子ボルト以下のエネルギーの軟X線に対して優れた分光性能を持つことが,「すざく」の特徴の一つです。この能力により,電離した二つの酸素の輝線がはっきりと検出されています。これらの輝線放射の大部分は銀河団ではなく,我々の銀河系内の星間空間にある高温物質による放射であると考えられますが,一部は銀河団周辺からのものである可能性があります。これを詳細に解析することによって,宇宙のバリオン(普通の物質)の大多数がどこにあるのか,という宇宙物理学上の基本問題の一つに重要な示唆を与えるものと期待されます。
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「すざく」による銀河団Abell2052(距離約5億光年)のX線像
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銀河団周辺部分のX線スペクトル。
電離した酸素の輝線は数百万度の高温ガスから発せられる。
その一部は,これまで知られていなかった銀河団周辺に存在する高温ガス
からである可能性がある。
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(満田 和久)
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