私はこの計画でMMO衛星全体の世話をする役割ですが,個人としては,火星探査機「のぞみ」の観測装置を改良した電場・波動・電波観測装置を金沢大,富山大,京大などの仲間と共同で載せます。私は,宇宙研に来る前に富山県大で助手をしていたときから「のぞみ」の観測装置を作っていました。「のぞみ」打上げの翌年に宇宙研に来てからは,2003年末に運用室でその最後を看取るまでずっと世話をしてきたメンバーの一人です。まさに「のぞみ」につぎ込んできた。しかし,それが全部消えてしまった。いくつかの観測は巡航中に実施できたのですが,我々の装置は火星に到達してから動かすものでしたから。
成功していたら,私たちの作った「のぞみ」は,火星の大気や水がどういうプロセスではぎ取られ,宇宙空間に逃げたのかを世界で初めて明らかにすることができたはずでした。「のぞみ」でやり切れなかったことの怨念を,私たちの世代は抱えているのです。それを水星でリベンジしたい。「のぞみ」を作ってきた宇宙研内外のさまざまな人たちとその技術は,今,地球・太陽系を目指すさまざまな次世代計画の中核にいます。BepiColomboもその一つ。必ず成功させたい。それがある限り,「のぞみ」は死んでいないと思っています。
もちろん,地球についてもやらなければならないことがたくさんあります。私がなぜ「れいめい」にかかわっているかというと,宇宙研初の小型衛星だからです。SCOPE計画では,立体的に,かつ時間分解能を上げて地球磁気圏を見るために,編隊を組んで観測します。1機1機は小さくしなければなりませんから,小型衛星を作る技術は必須です。それぞれが次につながっている。いえ,つなげていくのです。