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ASTRO-EII/M-V-6号機打上げ成功,衛星名は「すざく」に
M-V-6号機は平成17年(2005年)7月10日12時30分に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられ,X線天文衛星ASTRO-EIIを所定の地球周回軌道に投入することに成功しました。軌道に乗ったASTRO-EIIは「すざく」と名付けられ,順調に飛行を続けています。 今回のフライトオペの作業は順調で,飛行もほぼ計画通りという完ぺきさでした。しかし,梅雨の時期の打上げはやはり難しく,直前になって天候との戦いとなりました。4日間の雨天順延は,緊張の中で作業をする実験班にとってきついものでしたが,ASTRO-Eの打上げから5年,そしてH-IIA余波でさらに半年待たされた我々の集中力が途切れることはなく,逆に,絶対成功させてみせるという実験班各員の意気込みは,打上げの瞬間には頂点に達していたように思います。 さて,この打上げは,JAXAとして統合後初めてのM-Vロケット打上げです。もともとM-Vロケットは,衛星とロケットが一体となったチームワークの良さにその本領がありますが,今回は後方支援を含めてJAXA全体が,実験の成功というただ一つの目標のために,よく心を一つにできたと思います。JAXAの一翼を担うM-Vロケットの打上げ成功により,JAXAの将来にも弾みがついたことでしょう。 ところで,今年はペンシル50周年という記念すべき年に当たります。M-Vロケットは,ペンシルから綿々と続く我が国独自の固体ロケット研究の集大成ですから,今回の打上げ成功の感慨はひとしおです。実験場内に掲げられた「おおすみ」から「はやぶさ」までの寄せ書き。そこに名を連ねた多くの先輩たちの努力,そして若き日の自らの初心を深くかみしめることのできた良い実験となりました。このロケットコミュニティがますます発展していくことを期待したいと思います。 最後に,実験班各員,後方支援に当たった方々,この特別期の打上げに向け関係機関と調整された方々,そしてさまざまな形でこの実験に参加された方々に,心から感謝致します。 (森田 泰弘)
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INDEX衛星がバイコヌールに向けて出発INDEX衛星は,重量70kgの先進的な衛星技術を用いた小型科学衛星です。衛星開発コストは約4億円で,宇宙研や大学の若手研究者,学生が参加して開発してきた,野心的な3軸姿勢安定衛星です。理学ミッションとして,オーロラの微細構造の観測を行います。8月中旬,OICETS衛星と同時に,ロシアのドニエプルロケットによってカザフスタンのバイコヌール基地より打ち上げられることになりました。 写真は,モスクワ経由でカザフスタンへ輸送するためINDEX衛星をコンテナに入れる,日本での見納めの日,6月28日に撮影したINDEX開発チームの集合写真です。INDEXは,多くの学部生,大学院生,ベンチャー企業の技術者,宇宙研の若手からシニアまでを含んだ開発チームの,長年の汗と喜びの結晶です。集合写真には,衛星開発中に誕生した赤ちゃんも一緒に参加しています。学生や職員を育てることを強く意識したミッションであるINDEXならではの象徴的な風景でした。 これからは,暑い夏のカザフスタンでの射場オペ,そして内之浦で迎える第一可視が,INDEXの山場です。
(齋藤 宏文)
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「ペンシルロケットフェスティバル」開催のお知らせ8月19日(金),幕張メッセにて1955年4月12日,長さ23cmの小さなロケット「ペンシル」が,東京・国分寺で水平に発射されました。これが日本の宇宙開発の始まりです。今年はその水平発射から50年の節目に当たるため,来る8月19日(金)に幕張メッセにおいて,「ペンシルロケットフェスティバル」を開催します。当日は,JAXAの若手エンジニアたちが50年前の水平発射の実験を3度にわたって再現するほか,谷川俊太郎さん作詞・谷川賢作さん作曲の「鉛筆の歌」の披露,宇宙飛行士のトーク,和太鼓のグループ「鬼太鼓座」の出演など,多彩なイベントを展開します。なお現在,「未来(50年後)の宇宙ロケット」の絵を全国の小中学生から募集しています。応募されたすべての絵を,松本零士さんがデザインされるタイムカプセルに入れます。そのタイムカプセルも,会場で皆さんに披露します。 JAXAはこの日を,50年前に日本とアメリカを2時間で結ぼうと志した糸川英夫先生を中心とする日本の宇宙開発の創始者たちの大きく豊かな夢を,これからの50年を支える子供たちに生き生きと伝える,歴史的なバトンタッチの日にしたいと考えています。当日は,ペンシルロケットの開発と発射に携わった先輩たちも参加されます。日本中から多くの人々が,できれば家族ぐるみで駆け付けてくださるよう念願します。詳しくは,JAXAのホームページhttp://www.jaxa.jp/press/2005/06/20050622_pencil50_j.htmlをご覧ください。 (的川 泰宣)
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はやぶさ近況 「はやぶさ」のコマンド計画作成システム
工学実験探査機「はやぶさ」の4年間の運用期間のうち,小惑星ITOKAWA滞在中の3ヶ月間のミッション期間以外を巡航期間と呼んでいます。従来の探査機が慣性飛行していたのとは異なり,イオンエンジンを噴射して常に軌道を変更し続けなければなりません。これまでの人工衛星や探査機にとって軌道変更作業は関係者が全員集合するほどの一大イベントでしたが,「はやぶさ」においてはこれを日常的な作業として,小人数の運用チームで安全かつ正確に実施しなければなりません。 そこで,巡航運用を支援するための「コマンド計画作成システム」を開発しました。典型的運用パターンのリストから向こう2週間の運用パターンを選択するだけで,運用に必要なさまざまな情報が計算され,運用チームの「マニュアル」と探査機の「プログラム」を兼ねた「手順書」ファイルが短時間で作成できるようになっています。
本誌が発行されるころには,「はやぶさ」は合(地球から見てちょうど太陽の裏側)の位置に来るため,地上との通信が困難になります。そのため,7月中は変則的にひと月分の計画を作り,探査機に送っておく必要があります。 (西山 和孝)
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