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「はるか」プロジェクトの映画完成電波天文衛星「はるか」プロジェクトの映画ができました。題して,『3万kmの瞳』。副題が『宇宙電波望遠鏡で銀河ブラックホールに迫る』と付いています。これは,『M-V宇宙へ』の姉妹作『「はるか」宇宙から』に続く2本目の「はるか」映画です。 電波天文衛星「はるか」は1997年に,M-Vロケットの1号機で打ち上げられるという息詰まる体験をし,軌道上で10mの大きさのアンテナを展開するなどの工学実験を成功させ,世界初のスペースVLBI衛星として大規模な国際協力によって,文字どおり“3万kmの瞳”で宇宙を観測してきました。 映画のシナリオ作りから資料収集,国内外での撮影を行い,仮編集が終わってからも,シナリオは何度も何度も修正を重ねました。最後は,ナレーションを一語一語チェックしては変えるということもしました。画面編集,録音それぞれスタジオを使いましたが,修正のためにもう一度それぞれ行いました。少しでも良いものにしようと変更をお願いし,発注側のこちらも徹夜でお付き合いすることにもなりました。 「はるか」を中心に据えたVSOPプロジェクトは,国際性が際立って重要なプロジェクトでした。できるだけ早く英語版を作って世界のコミュニティにも観てもらえたら,と熱望しています。 (平林 久)
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第24回「宇宙科学講演と映画の会」開催4月16日(土)午後2時より新宿明治安田生命ホールにおいて,「宇宙科学講演と映画の会」が開催されました。この会は毎年,宇宙科学研究所の創立記念日である4月14日前後に行っているものですが,本年度は収容定員340名を超える345名の参加者を迎え,大変盛況な結果となりました。的川泰宣対外協力室長の司会進行によって,鶴田浩一郎本部長のあいさつに始まり,的川室長による工学分野からの講演,井上一教授による理学分野からの講演が行われ,質疑応答の後,映画『3万kmの瞳―宇宙電波望遠鏡で銀河ブラックホールに迫る―』(30分)が上映されました。 的川室長は,「ペンシルロケットから50年―宇宙科学を支えた半世紀―」と題し,日本の宇宙開発の原点であるペンシルロケットについて話されました。研究開発者である糸川英夫先生のご苦労やその人柄を,大学院生として糸川先生より直接指導を受けていた的川室長が当時の思い出を振り返りながら,予定時間をオーバーして語られました。 井上教授は,「X線観測が切り開く宇宙―ブラックホールから暗黒物質まで―」と題し,宇宙の進化・歴史を解明していくために重要となるX線観測について,観測衛星の機能や具体的観測方法およびブラックホールに関した説明を,難しい数式を用いながらも分かりやすく説明されました。私自身,引力により立っていられることを初めて自覚した次第です。 講演後に行われた質疑応答では,年配の方からの専門的な質問や小学生からの基本的な質問などが活発に出されていました。 また,映画は制作後初めての上映でしたが,映像,音楽,ナレーションにより彩られ,衛星「はるか」の素晴らしさと,その研究開発に関係した各国関係者の思いが画面より伝わってくる感動的なもので,誰もがスクリーンに見入っていました。 (小山 誠司)
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総研大宇宙科学専攻の5年一貫制への移行について総合研究大学院大学(総研大)は,大学共同利用機関(基盤機関)を教育研究の場として活用する博士後期課程のみの教育を行う大学として,17年前に設置された日本初の大学院大学です。JAXA宇宙科学研究本部では,2年前の2003年4月から総研大へ参画し,物理科学研究科の中に宇宙科学専攻を立ち上げました。 このたび,2005年度から生命科学研究科が,2006年度からは宇宙科学専攻が置かれる物理科学研究科を含む3研究科が,新たに5年一貫制博士課程に移行することになりました。この新課程では,修士取得者だけでなく,博士号取得を目指す学部卒業生も対象とすることになり,5年間を使った大学院教育ができるようになります。これにより,従来にも増して学生の専門性を高めることはもちろん,各基盤機関の持つ大学にはない機能を活用して,国際的に通用する優秀な研究者を育成することが求められています。 宇宙科学研究本部にとってはこれまでにない試みであるため,5年一貫制の入学定員は2名,従来の博士後期課程入学に当たる3年次編入学定員は3名と,少人数でスタートすることになりました。それでも,授業にはほかの大学院における修士の学生を対象としたような基礎的科目が加わり,入学試験に物理や数学のペーパーテストが取り入れられるなど,教育課程には大きな変化が起こります。 現在の総研大の最大の課題は,社会における認知度が低く,基盤機関の持っている潜在能力が十分に発揮されていないことにあります。5年一貫制の成功の鍵も,いかに入学資格保有者にこの課程を広く知ってもらい,優秀な学生を確保できるかにかかっているといえます。この点について,特に関係各位のご協力をお願いする次第です。 (八田 博志)
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はやぶさ近況 「はやぶさ」の賢いヒータ制御
HCE(ヒータ制御装置)に実装された工夫の一つに,100チャンネル以上のヒータで温度制御を行いながら,合計消費電力を指定値以下に抑えるという,電力調停機能が挙げられます。探査機の各部分の温度を適切に保つために,ヒータのオン・オフをする必要がありますが,単純に「温度が指定値以下に下がったらヒータをオンし,指定値以上まで上がったらオフする」方式では,多くのチャンネルが同時にオンになったときに電力が足りなくなってしまいます。そこでHCEでは,各温度制御点の優先順位と温度の下がり方を考慮して,与えられた電力を超えないようにオン・オフのタイミングを調整しています。この機能により,ヒータの消費電力は平均化され,太陽電池パネルの発電能力を無駄なくイオンエンジンに割り当てることが可能になりました。これも,小さいながらも「はやぶさ」の工学実験の成果の一つだと思っています。
(NEC東芝スペースシステム(株) 萩野 慎二)
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