No.288
2005.3

宇宙科学を支えるテクノロジー

ISASニュース 2005.3 No.288 


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- No.288 目次
特集 第5回宇宙科学シンポジウム
- 宇宙科学ミッションの新しい出発
- 特集によせて
- 将来計画
- 宇宙科学を支えるテクノロジー
- JAXA長期ビジョンと宇宙科学
- 編集後記

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衛星異常監視・診断システムISACS-DOC


 現在,科学衛星は高度な観測要求を満足させるために,機能の複雑化および高度化が進んでいます。そのため衛星の正確かつ安全な運用を実現するために,衛星運用のための異常監視・診断システムが必要とされています。ISAS/JAXAでは1992年より,人工知能技術を用いた衛星の異常監視と状態診断を行う地上システムISACS-DOC(Intelligent SAtellite Control Software-DOCtor)の研究・開発を行ってきました。これまで磁気圏観測衛星GEOTAIL,火星探査機「のぞみ」および小惑星探査機「はやぶさ」用システムの開発・運用を経て現在に至っています。

 当初ISACS-DOCは,エキスパートシステムを用いた故障診断システムとして開発されました。これは異常が発生したときに異常発生の原因を診断し,その結果,可能性のある複数の故障原因を示すものでした。しかしながら実際の運用では,可能性のある複数の故障原因の提示では逆に運用者の混乱を招くことが分かり,故障診断ではなく,信頼度の高い異常察知と関連する情報の提示が有効であることが分かりました。運用時には「何が異常であるか」確実な情報を示すことが重要であり,そのためにシステムの性格を「異常診断」から「異常監視」へと変更しました。

 次期ISACS-DOCは,ASTRO-F向けに開発を行っています。ASTRO-Fは低高度地球周回衛星であり,これまでISACS-DOCを開発してきた深宇宙機とはさまざまな点で異なっています。最も大きな違いは高速なデータ処理能力が必要という点であり,そのため処理能力の高性能化や監視項目の厳選化と優先順位の設定などが必要と考えています。同時に本システムのキーポイントである知識収集に関しては,これまでの経験を活用し,従来専門家や経験者の手作業で集めてきた知識をテンプレート化することで,ある程度機械的に収集することを考えています。次期システムでは地球周回衛星への適用を予定しており,より良いシステムを目指して研究・開発を行っていきます。

(高木亮治,橋本正之,本田秀之,長木明成[ISAS/JAXA], 
野村和哉[富士通],水谷光恵[FASOL]) 


  JAXA:宇宙航空研究開発機構
  ISAS:宇宙科学研究本部


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