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S-310-35号機打上げ

12月13日午前1時33分(現地時間),
アンドーヤロケット実験場から打ち上げられたS-310-35号機。(C)Andoya Rocket Range


 極域でのオーロラ活動に伴う下部熱圏の力学とエネルギー収支の研究(Dynamics and Energetics in the Lower Thermosphere with Aurora:DELTAキャンペーン)を目的としたS-310-35号機は,4年ぶりの海外での打上げ(ノルウェーのアンドーヤロケット実験場からの打上げとしては10年ぶり)です。2004年11月26日(工学関係者等12人)と28日(理学関係者7人)に現地入りして,作業を開始しました。

 先発組はノルウェーのボードーからアンデネスへの飛行機がキャンセルとなりかなり混乱しましたが,3つのグループに分かれ,最後の2人が26日の22時過ぎに10人分の荷物とともにアンデネス空港に無事に着き,事なきを得ました。後発組も成田の出発が5時間ほど遅れたためノルウェーのオスロにたどり着けず,デンマークのコペンハーゲンで一夜を過ごすことになりましたが,全員予定通りに28日の15時過ぎに到着しました。

 現地での作業は27日の開梱に始まり,12月1日には動作チェック,2日の全段結合と予定通り順調に進みました。

 この間の天候は相変わらずアンドーヤらしく,気温はメキシコ湾流の反流のおかげで高く,寒い日でも氷点下4〜5度,暖かい日は3〜4度と極域とは思えない温度ですが,雪の日,雨の日,強風の日ありと日替わりメニューで変化しています。そんな中,27日には夕方の4時半過ぎからカーテン状のオーロラが姿を見せ,デジカメによるオーロラ撮影会が行われました。残念ながらブレークアップは見られませんでしたが,しばしの間自然の驚異を楽しむことができました(ちなみに後発組は,飛行機の中からきれいなオーロラを見ることができたそうです)。

 12月5日から打上げ態勢に入りましたが,打上げ条件と観測条件の双方を満足する日がなかなかなく1週間以上延期をすることになり,12日を迎えました。当日は天候も穏やかで打上げ条件は満足していたのですが,肝心の観測条件の方がなかなか満足せず,打上げ10分前の状態で打上げ時間帯を現地時間の13日午前2時まで延長して待つことにしました。延長時間も大半を経過した午前1時20分過ぎにやっと観測条件が整い,1時33分に無事打上げを行いました。

 搭載観測機器はすべて正常に動作し,貴重なデータを得ることができました。詳細なデータ解析は帰国後に開始されますが,下部熱圏の力学とエネルギー収支に関して新たな知見を得られることが期待されます。

 打上げ時間帯の変更に柔軟に対応していただいたアンドーヤロケット実験場の方々をはじめ,今実験に協力をいただいた方に感謝致します。

(早川 基) 


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ガンマ線バースト探査衛星Swiftの打上げ成功

Swiftの打上げ(c)NASA


 2004年11月20日12時16分(現地時間),ケープカナベラル空軍基地からSwift衛星が打ち上げられました。Swift衛星は宇宙最大の爆発現象「ガンマ線バースト」の正体を探るために,NASAを中心として国際共同で開発された衛星です。現在,初期立ち上げの運用がほぼ終わり,12月19日から12月21日までの間にすでに5個のガンマ線バーストを検出して,国際的な速報システム,GCNサーキュラーに報告しています。このミッションには,2000年よりJAXA宇宙科学研究本部,埼玉大学,東京大学が参加し,検出器チームの一員として主検出器BAT(Burst Alert Telescope)の開発に携わってきました。

 「ガンマ線バースト」は,距離を推定すると70億光年から110億光年もの彼方で発生する大爆発であることが分かっています。1秒間に10万個ものガンマ線光子が,Swift衛星に搭載された約5000cm2のガンマ線検出器で検出されるような非常に強力な爆発が,宇宙のはるか彼方で起こっていることになります。太陽が100億年もかけて放射するエネルギーの,さらに100倍を,たった数秒のうちに放射するのに匹敵する膨大なエネルギーが,どこでどのように発生するのか,我々人類はまだ知りません。

 Swift衛星は,視野の広いガンマ線望遠鏡と,X線,可視光の精密望遠鏡を搭載しています。「ガンマ線バースト」の方向を瞬時に解読し,自動的に衛星を回転させてその方向を向き,X線と可視光での観測を始めることで,どんどん暗くなるバーストの残光を迅速にとらえ,はるか遠方のどの銀河でバーストが発生したのかを調べるのです。世界中の天文台がバースト発生後,可能な限り短い時間で観測を開始できるように情報を配信するのも,Swift衛星の大切な役割です。そのために,Swift衛星はバーストの時刻や位置情報などを,バースト発生後20秒以内にリモート通信衛星TDRSSを使って地上に伝送し,さらに,それらの情報が電子メールやそれに連動させた携帯電話を使って世界中に送られます。その後,刻々と地上に伝送される観測データを詳細に解析してWeb上に公開し,世界中の科学者と連携したキャンペーンを円滑に進めることも運用チームの仕事となります。

 衛星の運用には,アメリカをはじめ,日本を含む世界各地の大学院生やポスドクが主体となったチームが組織されます。Swift衛星は,日本としては小規模の参加ですが,実際に現地で一緒に汗を流し,研究者間で議論し,私たちの研究に基づいて提案した解析方式が採用されていくなど,貢献を積んできました。またSwift衛星のガンマ線検出器が軌道上で示す性能は,2005年度に打上げが予定されているASTRO-EII衛星の硬X線検出器の性能を存分に発揮させるために役に立つばかりでなく,今計画されているNeXT衛星の硬X線イメージャーや高感度ガンマ線検出器を開発するための基礎データとしても役に立ちます。今年の春から予定されるSwift衛星の本格運用が始まれば,「ガンマ線バースト」の正体探しが大きく前進すると期待されています。ISASのPLAINセンターでもデータアーカイブを行う予定になっており,日本をはじめアジア各国の研究者の役に立てればよいと思っています。こうした,小規模で効率の高い国際協力が,今後とも盛んに行われていくことを願っています。

ガンマ線バーストを探査するSwift衛星(想像図)(c)NASA

(高橋 忠幸) 


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はやぶさ近況 イオンエンジン2万時間運転達成


「はやぶさ」

 工学実験探査機「はやぶさ」は,今夏の小惑星ITOKAWA到着を目指して順調に飛翔中です。本欄では,これからの数ヶ月間,探査機の近況報告を致します。特にニュースがない月は,これまであまり紹介されてこなかった,4大実験項目(イオンエンジン,自律航法,サンプル採取技術,地球帰還カプセル)以外の特徴について解説していきたいと思います。

 今回のニュースは,これまで度々登場しているイオンエンジンです。2004年12月9日に,通算2万時間・台運転を達成しました(3台のエンジンを24時間運転すると72時間・台という計算)。現在,太陽からどんどん遠ざかっているため,太陽電池の発生電力が低下し,エンジンの運転台数を3台から2台,1台と減らしてきています。2005年2月には,地球周辺で2.6kWあった発生電力も1kWまで低下します。イオンエンジンに最大の電力を与えるため,ヒータや通信機の電力をぎりぎりまで抑えた厳しい運用が続きます。


イオンエンジン作動積算時間

 次回は電源系に採用された新規技術を紹介する予定です。

(橋本 樹明) 


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