1983年に打ち上げられた世界初の赤外線天文衛星IRASは全天観測を行い,25万個の赤外線天体を見つけました。ASTRO-Fは,IRAS以来となる赤外線による全天観測を行います。天体カタログを作ることが,その最大の目的の一つです。昔のIRASの空間分解能は数分角。視力1.0の人は1分角が見えるので,IRASの視力は私の裸眼と同じ0.2くらい。一方,ASTRO-Fの分解能は1分角より細かく,視力2.0はいけます。ASTRO-Fで1000万個近くの赤外線天体を観測できるはずです。
ASTRO-Fでは,星が生まれるときに周りを取り囲むちりやガスの雲「原始惑星系円盤」を詳しく観測します。そこでやがて惑星が生まれます。今までの赤外線観測によって原始惑星系円盤が十数個見つかっていますが,ASTRO-Fでは数百のオーダーで見つけられるはずです。
また,赤外線で強く輝く銀河も観測します。宇宙の初期に最初にできた銀河は,この赤外線銀河と同じようなタイプだと考えられています。赤外線銀河はまだ近くの宇宙でしか観測されていません。ASTRO-Fで遠くの宇宙,初期の宇宙にある赤外線銀河を観測して,銀河がどのようにして誕生し進化したのかを探りたいと思います。
このように,赤外線で星や惑星,銀河を観測して,宇宙の進化の歴史を見てみたいのです。