No.273
2003.12

ISASニュース 2003.12 No.273

- Home page
- No.273 目次
- 宇宙科学最前線
- お知らせ
- ISAS事情
- 能代多目的実験劇場
- 科学衛星秘話
- 内惑星探訪
+ 東奔西走
- いも焼酎
- 宇宙・夢・人
- 編集後記

- BackNumber

ヨーロッパ2往復の旅 

宇宙探査工学研究系助手 吉 光 徹 雄  


フランス昼食事情

 9月末から10月中旬にかけて,フランス,ドイツ,イタリアと3週間ほど出張した。

 フランスでは,パリのIAA (International Academy ofAstronautics)本部が用務先である。IAAの本部といっても,それほど大きな事務所ではない。Secretary generalsecretaryFabrice君の2名が働いているだけである。

 僕は現在,宇宙用語辞書というプロジェクトにかかわっている。このプロジェクトは,ネットワークサーバに辞書を構築し,宇宙用語の各国語の対応関係およびその定義をネットワーク経由で未来永久にメンテナンスし続けようというものである。僕がシステム作りを担当している。その作業を行うため,9月1週間ほどパリに滞在したわけである。

 宇宙用語辞書プロジェクトは,IAAの公式なプロジェクトである。ヨーロッパ諸国は,自分たちの言語を大切にしており,さまざまな言語がこのプロジェクトに参加している。現在は,日本語も含めて世界で16ヵ国語が参加しているが,12はヨーロッパの言語である。さらに,宇宙のことを自国語でやりとりする必要のなさそうなヨーロッパの少数言語まで,将来の参加を表明している。このプロジェクトには,EUから励ましのレターが来たこともある。ヨーロッパの人々にとっては,われわれが思っている以上に言語は重要なものであるらしい。

 ちなみに,IAAのホームページ(http://www.iaanet.org)に行くと,IAAの日本語訳は,「国際宇宙航行学アカデミー」になっていることが分かる。この訳語も,宇宙用語辞書のプロジェクトで決まった。

 ところで,パリでの昼ご飯は,毎日午後1時くらいになってから,Fabrice君と近くのレストランに出掛けた。フランス流に,ワインを飲んで,最後にカフェを飲むと,ともすれば午後3時くらいまで食事をしている。食後は,夕方の5時まで再び作業をして,Fabrice君の退社時間に合わせて,僕もホテルに戻る。昼ご飯を3時まで食べているため,当然ながら,夜になってもおなかが減ってこない。勇気を出してレストランに行くときもあるが,出無精のため,1人で外出する気にもなかなかならない。こういうときは,近くのマルシェやスーパーマーケットに行って,チーズやら惣菜やらを買い込み,ホテルで食べる。今回は近くのマルシェで売っていたパエリアがおいしかった。飲み物は,アルコール度数の高いCidre(リンゴの発泡酒)と,アルザスのビールを探すことにしている。


パリから成田経由でブレーメンへ

 パリでの作業が一通り終わり,翌週からはドイツのブレーメンで国際会議(IAC:International Astronautical Congress)に出席する。しかし,予算の都合上,成田空港経由でブレーメンに行くことになった。JAXA設立のため,9月10月にまたいで予算を使うことができなかったためである。日本滞在時間は17時間。相模原滞在時間は10時間ほどであった。結局,日本では一睡もせず,再びヨーロッパに旅立った。カバンの中の衣服,下着類は洗濯することなく,すべてそのまま持って行った。このため,ブレーメンでまずやることは洗濯であった。

 ブレーメンの国際会議では,2件の発表をした。1件は,宇宙用語辞書の発表であり,もう1件は,本職の小惑星探査ローバMINERVAの発表である。IACは,宇宙のことは何でもある大きな国際学会で,宇宙用語のセッションもあれば,宇宙の法律のセッションもある。宇宙がもっと身近になれば,法律や契約などで,われわれのやっている宇宙用語辞書のプロジェクトも重要性を増すのだろう。


イタリアの気候と二日酔い

 学会が終わると,イタリアのローマに旅立った。ローマでは,ローマ大学でセミナーに参加して,研究発表をした。

 イタリアには不思議なことに,イタリアンレストランしかない。フランスには,フレンチスタイルのほか,イタリアンも中華もあった。ドイツには,さらにタイ料理もあった。このあたり,食の序列を感じてしまうが,僕は,イタリアンもドイツ料理もビールも大好きである。

 イタリアンは,どこで食べてもおいしい。今回は,ローマっ子が「ここが一番」というピザ屋に連れて行ってもらった。イタリア人は夜8時くらいから食事をする。われわれがレストランに入った時は,あまり混んでなかったが,すぐに満員になった。そのまま12時くらいまで,食べて飲んでしゃべり続けた。もっとも,元気なイタリア人はそのまま朝まで騒ぐらしいが,われわれはそれでお開きにした。イタリア人はこんな生活を毎日送っているのか 翌朝の仕事に差し支えないのだろうか と思ったが,どうも平気らしい。僕の場合も,ワインを1人1本は空けたが,翌朝二日酔いもなく,発表も完ぺきだった。日本だと二日酔いになるくらい飲んだはずだが,これは気候のせいだろうか。とすると,イタリアの気候はうらやましい。

 JAXA誕生の瞬間を回避してヨーロッパに行ったため,幸いにしてその混乱ぶりは知らない。しかしその分,仕事を精力的にこなし,現地の生活も楽しむことができた。お世話になった皆さまに感謝したい。

(よしみつ・てつお) 

バチカン,サンピエトロ広場でのミサの様子
(10月5日。この日は,ローマ法王もお目見えした)


#
目次
#
いも焼酎
#
Home page

ISASニュース No.273 (無断転載不可)