No.267
2003.6

就任にあたり

ISASニュース 2003.6 No.267 


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所長 鶴 田 浩一郎 


 松尾前所長の後任として所長に就任して3週間が経過した。5月8日に辞令を頂戴しそのまま鹿児島に飛び,翌9日にはMUSES-Cの打上げ成功に立ち会うという非常に幸運なスタートを切らせて頂き,感謝している。

 相模原での最初の仕事は,4ヶ月後に迫った機関統合に向けた準備作業を「学ぶ」ことであった。この学習過程は,これまで長い時間をかけた議論の積み重ねを何も知らない「新」所長を議論に加えることによって行われ,少なからぬ混乱を引き起こすことになった。ある程度は「教育のため」と寛大に見て貰えたものと思うが,教育係を勤めていただいた企画調整主幹の松本先生や管理部長の中島さんは大変だったろうと,できの悪い生徒なりに反省している。

 新しい宇宙航空研究開発機構の発足は10月1日と決められており,それまでに非常に多くのことを考え,決めていかなければならない。私たちは大きな組織の設計については素人であるが,宇宙科学の進め方については自信を持って組織設計に寄与できると考えている。さまざまなデータが示すように宇宙科学研究所がこれまであげてきた研究面での成果は日本の学術,技術の珠玉の一点として世界に誇れるものだと考えている。世界からもまたそのように評価されている。新機構はこの成果を継承し発展させ科学技術立国の一翼を担うべき責務を負っている。このために,私たちに出来,かつ,しなければならないことは,宇宙科学の今後の発展のために不可欠な要素をきちんと新しい組織に取り込むことである。これまで非常に有効に機能してきた大学共同利用機関として大学との共同作業は十分担保されているであろうか,同業研究者による相互批判のシステム,委員会での激烈な議論の末にミッションを選択するシステムは維持できるであろうか,自由な雰囲気,本音の議論と合理的な理念による組織運営は十分保障されているであろうか,大きな組織の一員となることの利点は宇宙科学の進展に十分生かされる形になっているだろうか等々…。宇宙科学研究所は日本の宇宙科学研究の中核を担ってきた組織として,気概と責任感を持って新機関への統合に臨みたいものである。

(つるだ・こういちろう) 


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