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2002年度第1次大気球実験

 2002年度第1次大気球実験は,2002年5月14日から6月4日まで三陸大気球観測所において実施されました。放球した気球はBU5型1機BU60型1機B15型1機B30型1機B80型1機の計5機でした。なお,当初実験を予定していたBT5-21号機は,上層の風が実験に適さなくなったため,2002年度第2次大気球実験に延期しました。

 BU5-1号機は,気球工学部門が気球および観測器を確実に回収するシステムの一環として開発した軽量小型GPSアルゴスシステムの性能試験を目的として行われました。NOAA衛星を介した試験は良好で所期の目的を果たすことができました。

 BU60-1号機は,気球工学部門が重量10kg程度の観測器を高度50km以上まで飛翔させるために開発した容積60,000m3の超薄膜型高高度気球の初めての飛翔性能試験を目的に行われました。気球は平均速度265m/分で正常に上昇し,最高高度53.0kmに達し,飛翔実験は成功しました。今回到達した高度53.0kmは,これまでの世界最高高度51.8km30年ぶりに更新するものとなりました。

世界記録達成を喜ぶスタッフ 

 B80-7号機は,国立天文台が新たに開発したCdTe検出器16台により,太陽フレアから放射される硬X線スペクトルを精密に観測することを目的として行われました。飛翔中,観測器は正常に動作し,15時30分頃にはM1.2クラスの太陽フレアの観測に成功しました。この結果,粒子加速のメカニズムを解明することができると期待されています。

 B30-70号機は,神戸大学および高エネルギー加速器研究機構が中心になって計画している南極周回気球実験に用いられる大型太陽光発電システムの性能試験と,上昇時・下降時のエアロダイナミクスの検証を目的として実施されました。飛翔中の太陽電池システムの発電量と各部の温度の測定を行い,搭載システムが期待通りの性能を有することを実証すると同時に,打上げからパラシュートでの降下中に至る間の太陽電池構造体の挙動をビデオカメラにより詳細に観察することができました。

 B15-83号機は,国立極地研究所および宇宙科学研究所が計画中である,2002年12月末から2003年1月にかけて昭和基地より放球する南極周回気球の予備実験を兼ね,日本周辺の低周波帯電磁環境データを測定することを目的に実施されました。大型気球を一周する直径40mの巨大なループアンテナの感度や,上空で巻き下げ装置により100m離された観測器の上下間無線データリンク等に関する貴重なデータが取得できました。

(山上隆正) 


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M-V-5号機の噛合わせ試験始まる

 M-V-5号機の噛合わせ試験が構造棟で始まった。6月14日から機材の搬入が始まり,18日までに大物の搬入を終了,19日には全員打合会が開かれた。2年10ヵ月ぶりのM-Vロケット噛合わせ試験であり,この間退職された方もいる。新しいメンバーに加え,久しぶりの噛合わせ試験に若返ったように喜々として働く若いとは言い難い面々に頼もしさを感じた。慎重な試験の実施を経て,4号機の不具合を確実に乗り越えたいと思う。今後,机上配線チェックの後,7月1日には計器,計装の組込みを終了し,振動試験や各種動作チェックを7月18日まで行い,22日に撤収を含めて噛合わせ試験を終了する計画である。11月末から12月にかけての打上げに向けて,8月には第一組立オペレーション,9月には第二組立オペレーションが始まる計画である。

(小野田淳次郎) 

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M-V-5号機M-34伸展ノズル機能試験

 5号機用のM-34伸展ノズルの機能確認試験が5月27日〜5月31日の期間で構造機能試験棟において行われました。本試験は,実機の機能確認を目的として行ったもので,手順は試験条件の制約からノズルの伸展試験と伸展後のDHS(ダブル ヘリカル スプリング)の投棄試験とを分けて行いました。ノズル伸展試験は,摺動部やロック部の抗力及びノズル伸展部を拘束しているマルマンバンドの作動状況,伸展時の速度や歪みデ−タの取得,摺動レ−ルの投棄状況の調査を行いました。DHSの投棄試験では,DHSを拘束しているマルマンバンドの作動状況及び投棄時のノズルとの干渉状況の調査と投棄速度デ−タを取得しました。

 試験の結果は,第一回の伸展試験において地上系設備の調整不足による火工品の不点火という問題がありましたが,幸い実機には何ら問題がなかったため,その後の試験は順調に進みました。得られたデ−タについても,開発試験から飛翔実績のある3機分の機能確認試験までの取得デ−タと良く一致していることから,本試験の結果は良好なものであったと判断しています。この結果によりM-34伸展ノズルは,次行程の噛合わせ試験,第一,二組立オぺレ−ションへと進み,11月に予定されている飛翔試験を迎えることになります。

(安田誠一) 


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S-310-31,32号機噛合せ

 主として夏期の夕方から夜半にかけて高度約100km付近に出現するSporadic E層は重イオンが薄い層に集積する事によって発生すると考えられています。日本の上空において観測されるSporadic E層において地上からのレーダー観測により準周期的なレーダー反射波の強度変動を起こす事が90年代初頭に京都大学のグループの観測により明らかになりました。しかしながら発生メカニズムについては未だ解明されていません。この発生メカニズムを解明するためにはロケットによる直接観測,地上からの光学観測・レーダー観測等多角的な観測を行う必要があります。  多角的な観測によりSporadic E層の発生メカニズムの解明を目指すS-310-3132号機(SEEK-2)の噛合わせ試験が5月21日より6月13日の間に構造機能試験棟で行われました。このロケット実験は1996年に同様の目的で行われたS-310-2526号機(SEEK)ロケット実験によりSporadic E層に関して全く想像をされていなかった事が明らかになった事を受けて再度実験を行うものです。2機同時の噛合わせで,M-V-5号機や衛星の試験との関連で環境試験などが固定されており,なかなかタイトな日程でしたが,何とか無事終了しました。今後は6月25〜27日の再本組みを経て7月27日からの打上げに備える事になります。

(早川 基) 


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SOLAR-B 構造モデル現る

 SOLAR-Bは可視光,X線,極端紫外光を用い,各波長帯で,これまでにない角度分解能で,太陽を同時・連続観測します。日米英の国際協力の下,各国で,設計・製作が進んでいます。これまでに,各望遠鏡,バス部の構造モデルが製作され,構造モデル試験のため,5月のはじめに試験スタッフ共々,宇宙研に結集しました。組み上がり,勇姿を現した衛星(写真)は,想像以上に大きく,迫力があります。バス箱の上に可視光磁場望遠鏡とその焦点面パッケージ(中央)が鎮座し,これをX線望遠鏡(右)・極端紫外望遠鏡(左)が,さながら太刀持ち・露払いという格好で取り囲んでいます。

 振動・衝撃,音響試験は,各装置がM-Vロケットの打上げに構造的にも,光学性能的にも耐えることを確認することが目的です。打上げ環境を模擬する振動・衝撃を宇宙研飛翔体環境試験棟の加振機にて,音響環境を三菱電機鎌倉製作所の試験設備にて加えました。これらの前後で各望遠鏡間の指向方向に変化がないか,アライメントキューブを用いて測定します。また,要となる可視光磁場望遠鏡では,ガラス製の鏡が実装されており,干渉計を用いた測定により光学特性の検証が行われます。秒角をしのぐ姿勢安定度を達成する上では,モーメンタムホイールなどの機器が生み出す微小な擾乱を把握する必要があります。そこで,微弱な振動を検出する加速度センサを用い,微小な振動が構体を伝達するのを測定します。構造モデル試験は7月まで続きます。

(松崎恵一) 


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ESA-ISAS 2機関会議

 標記会議が6月15日に宇宙研で開かれた。ESAからは,科学局のD.Southwood局長,科学調整室のG.Cavallo室長を始め6名,宇宙研からは松尾所長,松本企画調整主幹を始め12名,文科省調査国際室から岡本室長補佐が参加した。

 ヨーロッパの方々の参加するこの種の会議として極めて異例なのは(宇宙研ではちっとも珍しくないが),土曜日を終日潰して行われたことで,ESA6人の参加者のうち4名は,木曜,金曜に移動,土曜に会議,日曜に移動,月曜日から通常勤務ということであった。この会議の計画段階で,松尾所長が,予め日程の調整の難航を予想して「こちらは週末でもよいが」と一言添え書きをしたら,たちまち土曜日に決まった経緯があった。ワーカホリックは日本の専売ではなさそうだ。

 科学衛星のESAとの協力関係は広範かつ深く,議題はBepiColombo(水星探査),ASTRO-F(赤外線天文),Mars Express,のぞみ(火星探査),Venus ExpressPLANET-C(金星探査),SOLAR-B(太陽観測),VSOP(電波天文),XEUS(X線天文),SELENE-B(月探査)など極めて広い範囲に及んだ。今後も一層,密な協力関係を進めることが確認された。

 会議が終わった後,短時間の施設見学を行ったが,MUSES-CASTRO-Fのフライトモデル,SOLAR-Bの機械モデルという豪華な役者が勢揃いし,これまた極めて異例の状態で,ESAの参加者を喜ばせることができた。日本側は国際調整課の裏方の方々による,日本流のきめの細かな支援を得て,水ももらさぬ会議運びにESA側より“Extremely well-organized meeting!”というお褒めの言葉を頂戴したが,単なる外交辞令ではなかったようだ。

(中谷一郎) 


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3機関統合の現状

 2002年3月に結審した青山副大臣のもとの宇宙機関統合準備会議の報告を受け,新宇宙機関発足に向けての具体的な作業が進んでいます。宇宙機関側では毎週定例で幹事会を開くとともに各種ワーキンググループを立ち上げ,宇宙新機関の組織の検討を精力的に行なっています。また,文部科学省の統合準備室と適宜連絡会議を持ち,お互いの検討状況のすり合わせを行なっています。

 具体的な検討課題としては,個別法の具体的内容,統合後の社会保険制度の在り方,新機関の職制,想定されている四本部の機能の振り分け,中心となるヘッドクォーターの組織設計等々さまざまです。議論は着実に進んでいるものの決着にいたるまでには様々な課題が山積しているのが現状です。

 宇宙科学研究所は,統合後は四本部の一つの宇宙科学本部(仮称)にその大部分が移ります。宇宙科学本部は宇宙開発事業団及び航空宇宙技術研究所から異動する一部の方達をもその構成員として加え,大学共同利用機関の性格を維持しつつ引き続き宇宙科学研究(理学・工学)及び大学院教育を担当することになります。一方,類似機能の統合による効率化の観点からM-VH-2Aとともに,基幹システム本部(仮称)でロケット打上げが一元的に行われることになります。その他にも機関の間で施設,人の異動がいろいろ検討されています。宇宙科学研究所としても今回の統合を機に組織の在り方を見直し,宇宙科学の更なる発展を目指す体制を作るべく,鋭意議論を進めているところです。

 ところで,統合時期ですが,今のところ今秋の臨時国会に法案提出,2003年10月1日新機関発足と想定されています。あと,一年ちょっとしかありません。大変厳しいスケジュールですが,日本の宇宙開発の将来をになう素晴らしい新宇宙機関が立ち上がるよう,一層の努力をつくしたいと思います。

(松本敏雄) 


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