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NAL735地上燃焼試験について

 航空宇宙技術研究所(NAL)は超音速輸送機プロジェクトを推進しており,2001年度末にはオーストラリア・ウーメラにて無推力小型実験機を用いたロケット実験を計画している。その際に使用されるロケットは開発期間および価格の両面から,既存のロケットから選択することになり宇宙研のSB-735に白羽の矢が立てられた。しかし,推力パターン,推進薬,ノズルなどに変更点があるために燃焼試験の実施が不可欠となり,今回宇宙研の能代ロケット実験場で行われる運びとなった。本実験は NALと宇宙研の共同研究と位置付けられ,両機関の職員が協力してオペレーションを行った。共同でロケット燃焼試験を行うのは1977年NALの角田宇宙推進技術研究センターで行われたKM-B以来24年振りのことだったが,宇宙研の実験班員の中でその時の実験を経験した人間が2人しかおらず,ここ数年で大量の技官の方が退官されたことを思い起こさせられた。

 燃焼試験は諸般の事情により,2月23日〜3月8日という厳しい寒さの中で行われたが,幸い屋外作業が少ないということもあり準備作業は「日程的には」順調に進んだ。燃焼は3月7日に行われ,成功裏に終了し,多くの貴重なデータを取得することができた。

 この共同研究計画は,次の無推力試験機飛翔実験終了まで継続する。今回の成功は,今後のNALの超音速機の開発のみならず両機関連携プロジェクトの萌芽にも好影響を与えるものであると確信する。

(堀 恵一) 


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金星探査計画,理学委員会で承認される

 470℃90気圧の高温,高圧。高速で回転する(超回転)大気。厚い硫酸の雲。地球とほとんど同じ大きさ,質量を持ちながらその環境は地球と大きく異なる金星。神秘のベールを纏って美しく輝くヴィーナス。5月10日に開かれた理学委員会で金星探査計画は宇宙科学研究所の計画として承認されました。本探査計画の主目的は金星大気超回転の謎に迫ることであり,このために雲の動きを数種類のカメラで写真撮影します。いわゆる気象衛星‘ひまわり’の金星版です。この他に探査機から送信する電波を使って,灼熱の炭酸ガス大気の気温も測ります。副産物として活火山および雷の有無を確認できるでしょう。カメラ以外の観測器も搭載して,大気が金星から逃げてゆく様子も詳しく調べたいと思います。重量約650kg(うち燃料約320kg)の探査機は2007年2月に打上げられた後,2008年6月に地球をスウィングバイして金星に向かいます。2009年9月の金星到着後は,お茶の間に地球のひまわりの画像と共に金星の雲動画をお届けできると思います。現在,世界中でつ以上の探査計画が議論されておりますが,これらが実現すると,日本の探査機とお互いに補い合いながら研究をすることになっています。日本の優れた大気力学理論も武器にして私達がこの分野でリーダーシップをとれると期待しています。

 さて今後の予定ですが,まず来年度からこの計画をフルにスタートできるように,政 府へ予算をお願いしなければなりませんし,金星探査計画を軸にして,宇宙科学への 国民の協力と理解を得るための広報活動も積極的に行う必要を感じています。2001年10月 には国内外の金星研究者を集めて宇宙科学研究所で,文部科学省の国際シンポジウム開催費用による国際金星ワークショップを開くことになっています。

(小山孝一郎) 



 分厚い金星大気を赤外線で立体的に透視する探査機の想像図。
 この絵では,明け方の上空から渦巻く雲や雷や地表面を観察してい ます。
雲は毎秒100メートルという暴風に押し流されています。雲海の彼方の白い
噴水のようなものは雷雲と電離層をつなぐ放電現象です。金星の縁で水平に
たなびいているのはオーロラや大気光(大気が化学反応で発光する現象)です。

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KM-V2-1真空燃焼試験

 2001年5月21日MUSES-CのキックモータKM-V2とほぼ同一仕様のフルサイズ試作1号機KM-V2-1の真空燃焼試験が,能代ロケット実験場において実施された。

 開口比30の位置でノズルを切断されたKM-V2-1は,145hPa(ヘクトパスカル)に減圧された真空槽内に設置され,水冷式大気開放型拡散筒から燃焼噴流を噴射しながら予定通り約90秒間燃焼した。点火時刻は10時30分で天候・風向共に申し分なく,着火・燃焼は正常で,計測・光学ともに良好なデータ・記録が取得された。詳細評価は今後の分析結果によるが,新たに採用された3D-C/C製のノズルスロートインサートの焼失度合いは期待通り小さく,高い熱構造安定性を窺わせるものだった。投棄型後方着火点火器の着火特性も予想どおりだった。写真は点火直後の光景で,写っている前方への飛散物は投棄型点火器によるものである。燃焼終了後,防火・安全性を高めた新作業着を着用して消火作業にあたるノズル消火班の姿が印象的だった。

(嶋田 徹) 

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三陸30周年記念式典  5月17日に三陸大気球観測所の開設30周年を記念する式典が行われました。三陸大気球観測所は,わが国における大気球観測のための恒久的な基地として,1970年度に建設され,1971年に開所しました。1971年から昨年2000年までの30年間340機をこえる大気球を放球してきています。

 式典は雲一つない晴天のもと,新緑に囲まれた観測所で行われ,地元関係の招待者を中心に,およそ40名の方々が出席されました。第一次大気球観測実験の実験班員約20名も式典に参列しました。松尾所長から,大気球観測事業への長年の協力を謝する挨拶があり,次いで,佐々木菊夫三陸町長から,30年の成果を祝し,今後への期待をこめた祝辞を頂きました。研究所からは三陸町,ならびに大気球観測事業に協力を頂いた企業各社へ,感謝状を贈呈しました。

 さらに式典では,西村 純先生に記念の講演をして頂きました。三陸大気球観測所が出来るまでの経緯に始まり,1954年の鳥取県米子市でのポリエチレン気球の放球まで遡るわが国の大気球の歴史,そして三陸での大気球観測の成果など,歴史的な写真を数多く示されながらのお話は,列席の方々に深い感銘を与えるものでした。

(廣澤春任) 

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連携・協力の推進に関する「運営本部」について

 去る4月6日,宇宙科学研究所,航空宇宙技術研究所,宇宙開発事業団は,宇宙科学技術活動の研究活動を,効率的かつ確実に実施することを目指した連携・協力の円滑な推進を図ることを目的とした協定を締結し,その実務を遂行させるために「運営本部」を共同で設置した。あろう事か私が本部長の重責を仰せつかり,永安正彦航空宇宙技術研究所理事と吉川一雄宇宙開発事業団理事が副本部長に就任された。また,4月25日には運営本部事務所が宇宙科学研究所相模原キャンパスに開設された。

 運営本部の行う最重要事業は「融合プロジェクト」と呼ばれる共同研究であり,本年度は「信頼性向上共同プロジェクト」と「エンジン中核研究開発プロジェクト」のプロジェクトを実施することとしている。レベルの高い共同研究が効率的に実施されるよう,各融合プロジェクトには当該分野に関する高い学識又は深い経験を有する方々からなる「プロジェクト推進会議」を置き,これを主宰する「マネージャ」が中心となり研究実施計画の立案,研究チームの編成を含めて共同研究を統括することとしている。信頼性向上共同プロジェクトには宇宙科学研究所上杉邦憲研究主幹,エンジン中核研究開発プロジェクトには航空宇宙技術研究所の冠昭夫角田宇宙推進技術研究所長がそれぞれマネージャとして選任された。更に,現時点では「機関連携情報インフラの整備」,「人的交流に関する制度整備」,「衛星追跡地上ネットワークの連携」の実務を行うワーキンググループと,「将来輸送系システム」に関する融合プロジェクトの検討を行うワーキンググループが設置されている。

 新しい試みであるので,戸惑いや手探りも少なくないが,4月25日の第回運営本部会議で本年度の実行計画が策定され,機関のみならず,全国の大学,研究所,関係メーカの第一線の研究者,技術者を中心とした共同研究等がスタートしている。

(小野田淳次郎) 

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前所長・西田篤弘先生に学士院賞

1. 第41回東レ科学技術賞「磁気圏の構造とダイナミックスの研究」
2. ヨーロッパ地球物理学会「Hannes Alfven Medal
3. 学士院賞「地球磁気圏の構造とプラズマ対流に関する研究」

 前所長の西田篤弘名誉教授(現,日本学術振興会監事)は表記の賞を立て続けにご受賞されました。更に(旧聞になりましたが)昨年春のアメリカ地球物理学会にも招待され,“ The Earth's Magnetotail : Its Formation, Internal Dynamics, and Kinetic Properties ”と題する 記念講演( Van Allen Lecture )をなさいました。この講演の由来のVan Allen は有名な放射線帯の発見者で,現在もアイオワ大学にいます。また,ヨーロッパ地球物理学会賞に付けられた Hannes Alfven は電磁流体力学/プラズマ物理学の基礎を築いてノーベル物理学賞を受賞した学者で,1997年に設けられた賞です。西田先生が5人目の受賞者になり,日本人としてはもちろん初めてです。東レ科学技術賞はこれまで本研究所の先達の先生方,(故)小田稔先生,(故)大林辰蔵先生,高柳和夫先生,田中靖郎先生も受賞されておられる大変名誉ある賞です。さて殿軍に控えた学士院賞は,いわずと知れた大変名誉ある賞で,1911年(明治44年)から毎年,学術上特にすぐれた研究業績に対し贈られているものです。1990年からは天皇・皇后両陛下の行幸啓を仰いで挙行されています。今年度は6月11日に行われました。

 学士院賞も本研究所関係ではこれまで小田先生と田中先生が受賞されています。いずれも,先生ご自身の長年にわたる磁気圏物理学における研究成果と指導性,特に,先生が強力なリーダーシップを発揮されて実現した日米共同プロジェクトの「GEOTAIL」衛星による成果が国際的にも高く評価され,日本が宇宙空間プラズマ物理学の分野で高い水準にあることが認められたものです。この分野の衛星プロジェクトを推進してきた本研究所にとっても大変よろこばしい事です。

(向井利典) 

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