No.241
2001.4


ISASニュース 2001.4 No.241 

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中型衛星による太陽系外惑星の探査


 1995年にペガサス座51番星で最初の太陽系外惑星が見つかって以来,すでに近傍の恒星に,55個におよぶ惑星が発見されている。今後その数が急増することは確実であり,この話題は21世紀はじめの宇宙科学におけるトップスターの座に就きそうな勢いである。一般社会にも強い説得力をもつので,理学・工学を含む広汎な協力で,ぜひとも取り組みたいテーマである。

 世界各地で多くの天文学者たちが,近傍の約1000個の恒星のスペクトルを,根気づよく測り続けている。惑星があると,その公転のため中心星がわずかに振られ,スペクトル線にドップラー効果が生じる。55個の惑星はこうして発見されてきたもので,太陽系外惑星が数多く存在することが,確実となったのである。

 さて発見された55個の系外惑星の素顔は,驚くべきものである。木星なみの質量の大形惑星が,太陽系でいうと水星よりさらに内側の軌道を回っている例が数多くあるし,彗星のように長円軌道をもつものが大半である。前者は,惑星が重くて公転軌道の半径が小さいほど,及ぼすドップラー効果が強いので,観測のバイアスのためかもしれない。しかし後者はまったく説明できない。太陽系のような真円に近い軌道をもつ惑星系は,稀な存在である可能性が少なくない。

 こうした謎に挑戦するには,誰しも,何とか直接に系外惑星の撮像をしたいと考えるであろう。ところがこれが難しい。なぜなら,星の光を反射して微かに光る惑星のすぐ隣には,中心星そのものが10億倍もの明るさで輝いており,惑星の姿を完全に呑み込んでしまうからである。遠赤外線の領域になると,惑星自身も放射を行うようになるが,それでも中心星はまだその百万倍も明るい。

 こうした困難を乗り越えて惑星の撮像を行う技術としては,つの案がある。一つは,望遠鏡の焦点面において,邪魔な中心星の像を遮蔽してしまう「コロナグラフ」の技術で,すでにハワイの「すばる」望遠鏡にはCIAOと呼ばれるコロナグラフが装着され,稼動を始めている。他方は複数の望遠鏡の光を,打ち消す向きで干渉させ,中心星の光を消す技法である。

 可視光と遠赤外線のどちらを用いるにせよ,またコロナグラフと干渉系のどちらを採用するにせよ,大気の揺らぎを避けるため,本格的な系外惑星の探査には衛星が必須である。アメリカでは「オリジン計画」の中心的な柱としてTPF(Terrestrial Planet Finder:地球型惑星発見衛星)と呼ばれる超大形ミッションが計画されている。日本はどうすべきか。この絶好のテーマに参画せずに終わってしまっては,宇宙科学の名折れであろう。日本独自の中型衛星計画を早急に策定したいものである。

(牧島一夫,寺田幸功,須藤 靖,坪野公夫,小谷隆行(東大理),
山田 亨,大石奈緒子(国立天文台),
Edwin L. Turner,David N. Spergel(プリンストン大)) 


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