No.234
2000.9

ISASニュース 2000.9 No.234

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生きている間何かする事は在るものです

平 尾 邦 雄  

 編集委員会から何か書くようにと言われて暫く考えていたが,思いつく事も余り無く書き出す事にした。

 私は定年退職してからもう15年以上になる。齢78才を越したからまあ日本人の男子の平均年齢は生きた事になる。無理が出来ないとか力仕事は3日程経ってからこたえるとか一応年寄りの特性は出てきているがまだ普段の暮らしには事欠かない。何を生き甲斐にして居るかと言われると返事に窮する所もあるが,何が面白くて生きているかと問われると色々はある。研究所の皆さんのご好意で出入り自由,科学衛星の打ち上げの時は内之浦に呼んで頂ける等の事や,ISASニュースのお陰で研究所の活躍の状況が良く判り,未だぼけていない積もりの頭の中に入って来るのが一つの大きな楽しみである。そうして色々な内外の雑誌から宇宙の事,地球の事等が判るのも楽しみである。

 最近5月号ESAの報告の中に灰塵から立ち上がるというCluster衛星群の復活に就いての報告を興味深く読んだ。Ariane 5の初号機で打ち上げられたが発射直後の事故で近くに落ちたClusterを何とかして復活させようとしたESAの話である。Clusterの復活機は2回に分けて打ち上げられ,まずサルサとサンバが7月16日に,次いでタンゴとルンバが8月9日に,いずれも「ソユーズ・ロケット」でバイコヌールから成功裏に軌道に送り込まれた。宇宙研のM-Vで打ち上げられたASTRO-Eが無念の失敗をした事と思い合わせている。昔あったCORSAの失敗後の再打ち上げでわが国のX線天文学が見事に生き返った事と共に,衛星打ち上げに時として起き得るこの様な事故に決して負ける事無く再挑戦する科学者の姿は何時見ても素晴らしいものである。ASTRO-Eも必ず復活してわが国の力を見せる事と信じている。

 最近の環境問題にしても,EOSにミシシッピー河沿岸大農業地帯の肥料が流れ出してメキシコ湾に大規模な赤潮の被害が出ている事が載っていた。農業は大事な仕事ではあるが,余分な肥料が漁業に対して被害を与える事にも注意しなければ我々の良好な環境は守れない。こんな雑知識を楽しんで居る最近である。趣味としては下手の横好きで園芸,特に今年は野菜の栽培をしている。家内が近所の口の悪いおばさんに家計の足しになるかと言われて怒っていたが,この採り立ての新鮮な野菜の味が判らないとは可哀相なものだと思ったと言っている。特に内之浦で覚えた苦瓜の味が忘れられなくて,何処でも売ってはいるが自分で成らせた味を一杯やりながら楽しんでいる。

 それといまだに車の運転が好きで,医者が本業の息子が昔からやっていた埼玉での学習塾の手伝いに行く事を口実にして運転を楽しんでいる。間もなく3才になる孫に会いに行くのが一番大きな理由かも知れない。そうして居る間に職業人を主体としているロータリークラブに入会させられ,地域社会に奉仕というボランタリー活動にも首をつっこむ事になった。学習塾では数学や理科が嫌いな生徒が多い事が目に着く。何とか面白がらせようとするが中々難しい。宇宙の話をすると面白がって聞くがそれで理科が好きになるわけではない。時に好きになり出す子を見つけると本当に嬉しく思うが,無理矢理暗記させられるとか,何処か初めに判らなくなるとそれで嫌いになるという傾向である。極く初めの所を時間を掛けて教えると言う事が如何に大事な事であるかを感じる。

 取り止めの無い事を書いたが,一応元気で過ごして居る嘗ての一宇宙研メンバーの近況を書きました。さて宇宙研は来年からどの様な組織になるのか知りませんが,今までの活力ある宇宙研で通して欲しいと思いますし,ISASニュースもずっと続けて欲しいと思っています。皆さん,頑張って下さい!!

 私も応援します。

(ひらお・くにお,宇宙科学研究所名誉教授,初代編集委員長) 


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