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ASTRO-E衛星の総合試験が2000年1月末の打ち上げをめざして,宇宙科学研究所C棟クリーンルームにて,3月1日からスタートした。この原稿を書いている4月20日現在,電気試験が順調に行われているが,高さ約7m,重量約1.6トンの巨大な(?)衛星の姿をクリーンルーム内に見ることはできない。電子機器が全て衛星の側面に内向きに取り付けられているため,各機器の詳細な試験は衛星の側面パネルを机上に展開した形で行われているからである。一方,3種類のX線検出器やX線望遠鏡の骨格をなす伸展型光学ベンチ(EOB)が取り付けられる衛星ベースプレートの機械的な組み立ても順調にすすんでいる。7月初めには,側面パネルが組み付けられ衛星としての姿を現す予定である。この衛星の総合試験にはこれまでの衛星にくらべていくつかの重要な違いがある。扱う信号のチャンネル数や装置の動作モードが飛躍的に増大している。このため信号や動作モードのすべての組み合わせについて衛星上で試験を行うのが困難になっている。またノイズに対する要求も大変厳しくなっている。このため各装置,特に観測装置は,衛星搭載前のサブシステムでの試験をこれまで以上に十分に行うことが要求されている。また,X線天文衛星としては世界で初めて搭載される固体ネオン(17K)と液体ヘリウム(1.3K)の寒剤を総合試験の間,維持管理する。これには,大変な神経と労力を要するであろう。
試験開始からまだ2ヶ月であるが,すでに,朝早くから夜遅くまで作業をされている方々,特に関係メーカー各位には,"これから9ヶ月よろしくお願いします",とこの場を借りてお礼を申し上げたい。
(満田和久)
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標記懇談会が,それぞれさる3月5日(金),12日(金)に,霞が関ビルの東海大学校友会館において開催された。出席者は,前者が40名,後者が44名(所内外合計)だった。プログラムは同一で,
・宇宙研の現況(所長)
・「のぞみ」(鶴田)
・「はるか」(平林)
・「あけぼの」と「GEOTAIL」(西田)
・月探査(LUNAR-A, SELENE)(水谷,佐々木)
であった。
「のぞみ」は,すでに昨年くわしく説明済みとあって,今回は地球スウィングバイにおける燃料の使い過ぎと火星到着延期についての解説を主とし,延着しても観測には支障のないことが強調された。
「はるか」は,先程成果報告会を行ったばかりであり,クエーサーから噴き出るジェットの根元の歪みや史上最高温度の天体について,重点的に述べられた。 「あけぼの」「GEOTAIL」は所長自らの出馬で,要 点をおさえた分かりやすい説明が好評だった。
「LUNAR-A」「SELENE」は現在の計画の進捗状況が 話された。
単なるニュース的な事項の解説にとどまらないで,原理的な解説と関連づけながら説明してもらうと有り難い,という意見が多く出された。
行政改革進行中とあって,最後に所長から行政改革についての宇宙研の基本的態度について話があり,いずれの懇談会においても行革についての議論が活発に行われた。
(的川泰宣)
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宇宙研,明治大学,中央大学で構成されるローバ研究グループは,共同で小型軽量な月・惑星探査ローバを開発しました。このローバの特長は,5個の車輪で構成される新走行システムによって,重量約5kgと小型軽量でありながら米国NASAのソジャーナと同等の走破能力を実現できた点です。これによって本ローバは月や惑星などの凸凹した表面でも柔軟に移動可能です。また,小型軽量化が実現されたことにより,本ローバをベースにして大型化は勿論,複数システム化なども可能となり,さまざまなミッションの可能性を広げることが期待できます。本ローバをさらに改良し,将来の月・惑星探査に役立てたいと考えています。なお今夏の宇宙研一般公開にてマイクロローバの走行実験を披露する予定です。
(久保田 孝)
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4月13日,国立天文台において,標記会議が開催された。この会議は,宇宙科学・天文学に関わる2つの大学共同利用機関の連携を深めることを目的とし,両者が交互に協議の場を提供する形で年1回の頻度で開催されているものである。今年度の協議には,天文台側から小平台長ほか10名,宇宙研から西田所長ほか11名が出席した。
今回の協議では,SOLAR-B,VSOP,SELENEの3つの進行中のプロジェクトについて,連携強化の具体策を議論した。SOLAR-Bに関しては,天文台側から,プロジェクト室設置による体制の確立,衛星搭載機器の試験設備の準備状況と概算要求による本格的な整備予定が説明された。また,宇宙研との間で共同研究推進についての覚書を交換して,両者の役割分担を明確化したい旨の希望が表明された。VSOP,SELENEに関しては,やはり国立天文台側から,VLBI三鷹相関局の運用実績,関連研究者の取り組みが紹介され,更に各々の後継衛星の実現に向けての意欲が表明された。つづいて,近い将来の重大な課題として,「すばる」とASTRO-Fにより多量のデータが産みだされる時代に対応する天文学のデータ・センターを確立すべく,協力・共同の進め方が議論された。
これらの課題はいずれも一度の会合で結論が得られるようなものではないが,日常的な研究者の交流のなかで今後具体化を図っていくことが肝要であるという点で,両者の認識は一致した。なお,両者が直面する行政改革(独立行政法人化)について,今後とも情報交換を密にして協調して取り組んでいくことが確認された。有意義な会合を準備していただいた国立天文台の関係者に感謝する。
(小杉健郎)
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前日から降り続いている雨の中,4月24日(土)に千駄ヶ谷にある津田ホールで講演と映画の会が開催された。的川教授の「雨にも負けず風にも負けず,この難しい講演に聞きに来るという人達に日本の宇宙の未来がかかっているのです」という司会の言葉に会場からの笑いで始まりました。所長の挨拶で今日の講師と司会者の仕事を例にとって宇宙研の紹介をし,「第1に飛び道具としてロケット及びそれにつながる様々な輸送推進システム(たとえば的川)。第2に衛星,探査機を働かせる為の技術の開発(中谷)。第3にその衛星や探査機上から宇宙を観測する仕事(小杉)。この3つがあってそれぞれの専門家が宇宙研をつくっているのです。」この所長の説明の判り易いこと。(広報も見学者の案内時用にいただき!)
そしていよいよ講演が始まり,小杉健郎教授「太陽コロナ・フレア爆発の謎に迫る」。次に中谷一郎教授「火星の探査をめざして」。続いて質疑応答では今回はするどい質問が多かったようである。最後の質問者で小学校高学年の子が「のぞみは低価格と聞いたのだが,コストはどれくらいか」との問いにどっと客席からの笑い声。(とうとう子供も予算のことを聞く時代なのか。カッカッカッ)回答者も「外国の探査機はこれくらいの金額です」と比較するなど一般者の首を上下小さく動かすことになったところで質問を打ち切った。
映画は今までは教育用に作ったものを上映するのだが,今回は「M−V宇宙(そら)へ」であった。これがすごい反響で「売ってほしい」「何年かぶりに良い映画を見せてもらった」等,ある程度は予想していたがこれほどにとは思っていなかった。映像の杉山さんはカメラを手に休むことなくホール内を動き回ってシャッターをきっていた。そして相原さんは宇宙研グッズを1つでも多く売ってあげようと「新製品です。いかがですか」とお客さんに声をかけている。お二人には頭が下がる思いである。こんな雰囲気の中,宇宙に寄せる関心がより一層に大きく感じ,357名という参加者で行われ幕をとじた。
月曜日に出勤したら,さっそく宇宙研を見学したいとの問い合わせに追われてしまった。
(渡邊遊喜枝)
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第22号科学衛星SOLAR-Bは1999年度に開発研究の予算が認められ,いよいよ衛星プロジェクトとして正式にスタートした。同衛星は「ようこう」の成果を踏まえ,コロナ観測と光球面磁場観測を結合して太陽電磁流体現象を総合的に解明することを目指しており,可視光・磁場望遠鏡,X線望遠鏡,極紫外撮像分光装置の3つの観測機器を搭載する。これらの観測機器はいずれも国際協力により実現するもので,米国ではNASA,英国ではPPARC(素粒子天体物理学研究評議会)が昨年末までに予算措置を講じるとともに参加研究者チームの選抜を終えている。
プロジェクトの正式スタートを目前にして,搭載観測機器の設計・開発方針を討議する『SOLAR-B観測機器キックオフ国際会議』が3月8日より1週間の日程で宇宙研で開催された。この会議には米国より27名,英国より9名が参加,国内からの研究者・技術者と熱心な議論を交わした。会議では全体会においてSOLAR-B衛星の科学目的及び共同設計・分担製作の方針が確認された後に,3つの機器毎の分科会において各機器の設計指針,インタフェース条件,開発・試験スケジュール等が具体的かつ詳細に議論された。ときには激しい議論となることもあったが,いずれの国からの参加者も「ようこう」の経験を良く学んでおり,全般的にはスムーズに相互理解が進み,まずは幸先の良いスタートだったと言えよう。今後は2〜3ヶ月毎に各機器毎に小規模なミーティングを繰り返し,プロトモデルの製作と試験,フライトモデルの製作と噛み合わせ試験・総合試験を経て,2004年度の打ち上げを目指すことになる。
(小杉健郎)
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かくして3月13日から能代実験場で再使用ロケット実験機・離着陸実験は始まりました。22日までに地上でのエンジン燃焼試験を終え,24日,第1回離着陸実験を実施。高度0.7m,水平移動0.5mの後,計画通り着陸。機体の点検と飛行データの解析を行い,翌25日に第2回離着陸実験を実施。離陸後高度4mまで上昇,水平移動3.5mの後,降下着陸を行いました。離陸,上昇,水平移動,降下および着陸,エンジン停止までのモード遷移は正常に行われ,機体の航法誘導制御システムの機能およびエンジンの性能,着陸時の挙動など殆ど計画通りにうまく行きました。着陸までの時間は約11.5秒でした。「ヨッシャー!」宇宙に行くにはほど遠い高さでしたが,実験班の緊張と着陸後の安堵と歓声はロケットの大きさや高度とは無関係であることがよく分かりました。
この実験は将来の宇宙輸送システム研究の一環として,小型の実験機による再使用型ロケットの離着陸と繰り返し運用を行うことを目的として行われました。次の時代の宇宙輸送システムの形態はその推進システムの選択,離陸や着陸などの飛行方式についてどの方法が有利であるかの結論を得るまでには多くの工学的課題に見通しをつける必要があるとされています。ただし輸送コストを大幅に下げ宇宙の利用を質的にも量的にも変えていくためには,現在のロケットのように一回打ったら使い捨ててしまうのではなく,再使用型の輸送機を繰り返し用いることが必要で,この再使用性と言うことを次の時代のゴールにすべきだと言うところまでは合意がなされています。
現在工学委員会の元にワーキンググループを作って,ロケットエンジンを使った完全再使用型飛翔体の工学技術実証のために,観測ロケットの規模で繰り返し飛行ができるシステムの提案を行っています。科学観測や微小重力環境などの利用に供する事で繰り返し飛行を行う図式を作り,将来の輸送システムに向けた研究を加速することが目的です。しかしながら提案はあくまで紙の上の話であって,これを補強すべく先進的な要素技術の勉強はしていても,再使用を標榜するならやはり本当に何回も飛ばすロケットを作ってみないか,あるいは本当に着陸したり繰り返し使ったりと言うことを実際に経験してみないと提案にも迫力がないではないか,と始めたのがこの実験機です。
この意味で今回の実験で我々がやりたかったことは離着陸の機能確認もさることながら「同じロケットを何回も飛ばす」ことで,「再使用とは単に飛ばしたものが帰ってくるだけでなく繰り返して初めて意味がある」ことを示すことでした。用意した機体の機能や,最低限の仕立てで作った地上の支援系や,着陸後もう一回飛ばす準備をする,などと言った運用は大体うまく行きました。天候の都合もあって最後の4日程は,実験,機体点検,データ検討,次のパラメータ決定,翌日スケジュール入りの連続で,実験班が先にへばるか機体やエンジンがへばるかの競争のようになりました。普段のロケット実験では実験期間の最後に一発打ち上げてうまく行ったら終わり,という運用でペース配分も心得ていますが「再使用」とはまさに繰り返しです。実験の最後の方ではこのサイクルから解放されるには次の実験で離陸後上下角75度に固定,推力最大,そのまま海へ捨てるように誘導系をセット,という魅力的な作戦も出たくらいです。
実際にロケットの繰り返し運用をして,ロケットの「着陸」とか「再使用」とか「クイックターンアラウンド」などというこれまでにない場面を頭の中だけでなく「からだ」で経験してみるという目的は達せられたと思います。実験とは正に「実際に体験してみること」と知りました。目論見どおりに行ったこと,行かなかったこと,新たに気づいたこと等々ここには書ききれない数多くの貴重な経験を積むことができました。ともあれ,無事に実験を終え機体は再び相模原に帰ってきました。実験班の皆さんご苦労様でした。
(いなたに・よしふみ)
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