No.217
1999.4

ISASニュース 1999.4 No.217 


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先駆者を送る

宇宙科学研究所長  西田篤弘  



 ペンシル・ロケット打上げの報道に接したのは大学2年生の時である。日本でもようやくロケットの開発が始められたことをうれしく思い,糸川英夫先生のお名前を心に刻んだ。ペンシル・ロケットは誰の目にも予備的な地上試験と見えるものだっただけに,わずか2年後に迫っていた国際地球観測年で電離層のロケット観測をめざす計画が発表された時には,その大胆さに驚いたものである。当初の予定よりは少し遅れたものの,K-8ロケットは見事に高度100kmを超え,電離層に達して宇宙空間の直接探査を拓いた。それから40年余を経た今,優れたシステムを着想し幾多の障碍を克服して先駆者となられた糸川先生の先見性と不屈の意志にあらためて深い尊敬の念を覚える。

 ロケット開発が国際地球観測年の直前に開始され,以来宇宙理学との密接な連携のもとに推進されたことは日本の宇宙科学にとってまことに幸運であった。国産の飛翔体を研究手段とすることによって日本の宇宙理学は主体的に発展し,独自の個性を育てることができた。一方,宇宙理学は宇宙工学に実証の場を与え,純粋に平和利用のための宇宙開発の原動力となった。ロケット開発,衛星開発と宇宙理学が三位一体となって構成する宇宙科学研究所は糸川先生とその協力者が築いた伝統を体現している。国際的に高い評価を受ける 「のぞみ」,「はるか」,「SFU」,「あすか」,「ジオテイル」,「ようこう」,「あけぼの」 などのミッションはこの伝統のもとに花を咲かせた。ペンシル・ロケットに始まる固体燃料ロケットはM-Vにおいて完成の域に達し,液体燃料ロケットの開発もH-IIを生むに至った。月並みな表現だが,糸川先生の御逝去は一つの時代の終わりを象徴するものであると感ずる。

 糸川先生にならって新たな天地を拓くことがわれわれに与えられた課題である。




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